Sightsong

自縄自縛日記

クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン

2018-10-15 01:12:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

高円寺グッドマン(2018/10/14)。

Craig Pedersen (tp)
Elizabeth Miller (cl)
Yumiko Yoshimoto 吉本裕美子 (g, daxophone)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)

グッドマンがほぼ満員になった(7人)。

■ 照内央晴+クレイグ・ペデルセン

この日、クレイグさんはトランペットを鳴らした。というのは、息遣いやピストンの駆動音に絞って増幅するのでなく、また、楽器の解体ということでもないという意味である。その中でもトランペット音を包むように倍音を発した。一方の照内さんは、呼応してなのか、ダイナミックレンジをさほど広く取ることはせず、微妙な濃淡によって攻めた。途中で鍵盤を弾くのを止め、足のペダルのみでピアノを(静かな)パーカッションのように使う時間が印象的だった。

■ 吉本裕美子+エリザベス・ミラー

ハンス・ライヒェルと内橋和久を除けば、ダクソフォンの音を聴くのははじめてである。内橋さんのそれがアジアの歌声であったり激しいアタックであったりするのに対して、吉本さんのダクソフォンはハスキーな声のようであり、ときに唸りだったり老人の声であったり、またよくわからぬ霊の声であったりもした。エリザベスさんのクラリネットが、その声明の流れとはまた別の流れを作り出す。ふたつの流れが絡まり合う快感がある。

■ 全員

組み合わせを変えてデュオになったり、全員になったりすることによる音楽。各々リズムもグルーヴも異なるのだが、それらが重なって奇妙なうなりとなっている。その中でも別々の流れのリンクとして機能したのは照内さんのピアノであり、和音を提供し、リズムを主導して動かしもした。ピアノとトランペットのデュオになった時間では、そのように時間の流れを変えようとする照内さんに、クレイグさんも並走してゆく面白さがあった。

驚かされたのは、また先とは異なるダクソフォンの声である。いきなりアビー・リンカーンのごとき叫びでサウンドに裂け目を入れるかと思えば、別のときには胎児の呼吸となった。ここにはクラリネットが追従した。そして間をおいて、ダクソフォンはようやく昼間の言葉を話しはじめた。クラリネットは魅力的な倍音を発し、トランペットは風を表現する。

悪夢のようにトランペットとクラリネットが同じフレーズを繰り返し、照内さんは玩具によって別の声を出し始める(それまでピアノのみが人間の声でなかった)。やがて収束に向かうが終わらない。照内さんの新たな旋律に、吉本さんとクレイグさんが応じた。最後はピアノとギターとが大きな揺らぎを生じさせた。

ヒエラルキー皆無のコミュニティ音楽。終わったあとに照内さんとも話したことだが、この日の音楽もそうだったと言うことができる。

Fuji X-E2、7Artisans12mmF2.8、XF60mmF2.4

●クレイグ・ペデルセン、エリザベス・ミラー
クレイグ・ペデルセン+中村としまる、エリザベス・ミラー+広瀬淳二@Ftarri(2018年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+徳永将豪+増渕顕史+中村ゆい@Ftarri(2017年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる@Ftarri(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
クレイグ・ペデルセン、エリザベス・ミラーの3枚(2016-17年) 

●照内央晴
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)