先日、新宿ピットインの客席で、エリザベス・ミラー、クレイグ・ペデルセンというふたりの即興演奏家と知り合った。カナダから3か月ほど来ており、仕事をしたり演奏をしたり勉強をしたり、だという。後日、かれらの演奏する音源をくださった。
ふたりのユニット「Sound of the Mountain」による『Amplified Clarinet and Trumpet』では、それぞれが楽器のコアでない音までも増幅させ、確かにごつごつした岩山のようなサウンドを生みだしている。マチエール感も全体感もあり、まるでマックス・エルンストの絵を眺めているようだ。
その印象のまま、クレイグ・ペデルセンのみによる『Solo Trumpet (2016)』を聴いてそのギャップに驚いた。短いトランペット・ソロ2曲なのだが、最初はロングトーンで、次は切れ切れのフラグメンツで、ぎらぎらと光り、また沸き立つような音を放っている。
そして、クレイグ・ペデルセンのクインテットによる『Approching the Absence of Doing』もまた新鮮だった。ペデルセンのトランペットはソロと同様に乱反射している。ユニットとしても面白くて、リンゼイ・ウェルマンのアルトが断続的に昇竜のように絡みつくありさまは、セシル・テイラー『Dark to Themselves』におけるデイヴィッド・S・ウェアを彷彿とさせる。ベースは全体のサウンドとのバランスを考慮する前になにかをかなぐり捨てたように我を発散しているし、ツインドラムスはパンクロック的でもある。
かれらはまだ日本に滞在しているようなので、そのうち、このサウンドについて話をしてみたいところ。
■ Sound of the Mountain 『Amplified Clarinet & Trumpet』(Mystery & Wonder、2017年)
Elizabeth Millar (cl)
Craig Pedersen (tp)
■ クレイグ・ペデルセン『Solo Trumpet (2016)』(Mystery & Wonder、2016年)
Craig Pedersen (tp)
■ クレイグ・ペデルセン『Approching the Absence of Doing』(Mystery & Wonder、2017年)
Craig Pedersen (tp)
Linsey Wellman (as)
Joel Kerr (b)
Bennett Bedoukian (ds)
Eric Thibodeau (ds)