Sightsong

自縄自縛日記

淺井愼平『キッドナップ・ブルース』

2008-12-21 00:17:42 | アート・映画

だらだらとテレビを見ていたら、山下洋輔が料理番組に出ていた。昔かなり集めたCDはあらかた手放してしまったが、ライヴも存在感も嫌いではないので、山下洋輔の登場する映画『キッドナップ・ブルース』(淺井愼平、1982年)を取り出してきて観た。やはり山下の登場する、若松孝二『天使の恍惚』(1972年)にしようかともおもったが、家族が寝ている隣ではどうも観にくいのでまだ録ったままだ。

主演はタモリ。鍵っ子の可哀想な女の子を連れて歩いているうちに、そのまま旅に出てしまい、誘拐犯ということになってしまう。旅の途中、山下洋輔、内藤陳(笑)、川谷拓三、渡辺文雄、小松方正など奇怪なひとびとと出会う。山下洋輔は、真夜中、広い空き地にピアノを置き、独りで弾きまくる役である。そこにタモリが現われ、焚き火をして夜を過ごす。翌朝、港で山下が腰をおろし、女の子がしゃがんでゴリラの縫いぐるみと遊び、タモリが自転車を乗り回すシーンは、なんとも「気分」だ。

これによらず、淺井愼平の写真そのものを想起させるような雰囲気のシーンはとても多い。実は淺井愼平本人にもその狙いがあったようだ。

「淺井が『キッドナップ・ブルース』でやろうとしたのは、彼がもともと持っていた「ストーリーではなくシーン」を重視する感覚を強調することで、むしろ映画を写真的に断片化して再構築しようという試みだったのではないだろうか。」(飯沢耕太郎『青の時代―淺井愼平が見たもの』、『アサヒカメラ』2006年3月)

山下洋輔と「時代」だけを覗くつもりで観た映画だが、少なからず好感を持った。いまこのような映画を撮ることのできるひとは少ないのではないか。


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