うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

いちねんかん

2020年10月24日 | 畠中恵
2020年7月発行

 大妖である皮衣を祖母に持つ事から、妖や付喪神が見えるが、滅法身体の弱い若旦那と、若旦那命の妖たちが織りなすファンタジー小説第19弾。

いちねんかん
ほうこうにん
おにきたる
ともをえる
帰宅 計5編の短編連作

いちねんかん
 父・長崎屋藤兵衛と母・おたえが、連れ立ち一年ほど、別府温泉に湯治に行くと言う。その間、長崎屋の身代を任されたのは一太郎。この間に、何か新たな商品を売り出そうと考えるのだった。
 だが、先走った番頭・久郎兵衛が、とんでもない失態にて五十両を盗み取られてしまった。一太郎は、これをどう裁くか…。

ほうこうにん
 長崎屋の主人・藤兵衛不在の間、一太郎が寝付かないように側に仕えることを目的に、屏風のぞきと貧乏神の金次がそれぞれ、薬種問屋と廻船問屋の手代として奉公することになった。そんな折、取引のある京の十ノ川屋の手代を名乗る熊助なる男が、高直な紅餅を仕入れにやって来たのだ。だが、金の匂いがしないと、金次が熊助の偽りを見抜き、事は片付いたかに思われたのだが、熊助の方が一枚上手で、長崎屋は翻弄されることとなる。
 
おにきたる
 西国から疫病が流行り出し、江戸の町も脅かされるようになった。その疫病を流行らせていると自称するのは、疫病神と疫鬼。疫病封じの「香蘇散」を売り出す長崎屋にて、疫病を流行らせたのは我なり。勝敗は、一太郎をどちらが殺めるかで決着を付けると言い出した。神を束ねる大黒主命と、災いの神・大禍津日神の力を借りて、疫病神と疫鬼を懲らしめようと。

ともをえる
 「香蘇散」の効果から、大坂の本家薬種屋・椿紀屋の娘婿選びに、江戸・椿紀屋の大元締・吉右衛門から指名されてしまった一太郎。仁吉・佐助抜きで、江戸椿紀屋の別邸に泊り込んでの人選選別となった。候補は、大坂両替・椿紀屋の次男・達蔵、京・紅椿紀屋の次男・次助、同じく京・薬種・椿紀屋の四男・幸四郎である。だが、それぞれに思いもあり、また、事情もあった。
 江戸・椿紀屋に奉公中の京・紅椿紀屋の三男・昌三は、婿がねではないものの、中々の人物であり…。

帰宅
 一年の湯治に出掛けていた藤兵衛とおたえの帰宅も間も無くとなった。店の収支が若干足りなくはあったが、妖たちが小銭で遊ぶこともあるので、気にも留めていなかった一太郎の元に、大店の旦那衆の集まりの話が、日限の親分からもたらされた。
 このところ、大店では小僧や手代が店の銭をくすめ、それを湯屋で知り合った者から伝授されたのだと言う。どうも彼らを手引きに仕立て大店を襲う強盗ではないかと、皆懸念しているのだ。
 その懸念が現実なり、長崎屋に現れた盗賊たち。妖たちはここぞとばかりに力を発揮する。

主要登場人物
 長崎屋一太郎...日本橋通町廻船問屋・薬種問屋長崎屋の若旦那
 仁吉(白沢)...妖、薬種問屋長崎屋の手代
 佐助(犬神)...妖、廻船問屋長崎屋の手代
 おたえ...一太郎の母親 
 長崎屋藤兵衛...一太郎の父親、長崎屋の主
 久郎兵衛…薬種問屋長崎屋の番頭
 忠七…廻船問屋長崎屋の番頭
 屏風のぞき...付喪神
 鳴家(小鬼)...妖
 鈴彦姫...付喪神
 金次...貧乏神
 おしろ...猫又
 守狐...長崎屋の稲荷に住まう化け狐
 日限の親分(清七)...岡っ引き
 寛朝...上野広徳寺の高僧
 秋英...上野広徳寺の僧侶、寛朝の弟子
 本島亭場久...貘の妖、噺家


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