うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

まねき通り十二景

2012年10月25日 | 山本一力
 2009年12月発行

 天保年間の江戸深川冬木町は、まねき通りの人々の日常を、十二の月行事に乗せて綴った人情物語。

第一話 初天神
第二話 鬼退治
第三話 桃明かり
第四話 菜種梅雨
第五話 菖蒲湯
第六話 鬼灯
第七話 天の川
第八話 祭半纏
第九話 十三夜
第十話 もみじ時雨
第十一話 牡丹餅
第十二話 餅搗き
番外編 凧揚げ 計13編の連作

第一話 初天神
 うさぎやの店先の奴凧を予約した真三郎は、初天神までに戻ると告げた父と、その凧を上げるのを楽しみに待っていた。
 偏屈なうさぎや徳兵衛と、父を待つ真三郎の心温まる触れ合い。

第二話 鬼退治
 女郎や辰巳芸者が扮装して町内を練り歩く「お化け」で、近江屋弥五郎を蔑んだ仲見世岡田屋の花魁おいくがやって来て…。
 桃太郎に扮したおいくを、弥五郎の女房のおりょうが一矢報いる。

第三話 桃明かり
 うさぎや徳兵衛の娘・おしのは、迷子の女の子を引き取って面倒を見ていた。親が見付かるまでと、割り切ってはいたが…。

第四話 菜種梅雨
 うお活の時次は、野島屋の女中頭・あおいの中を邪推し、あらぬ噂をばら撒いた鴇兵に殴り掛かるも、敢えなく返り討ちにあい。
  
第五話 菖蒲湯
 塀吉が川にはまった。だが、作治は金槌のために川に入る事が出来ず…飛び込んだのは徳兵衛だったが、こちらも老齢のため目の前で溺れていく。

第六話 鬼灯
 父親が後添えを貰った事に反発し、小料理ひさごを構えたおまき、おさちの元に、在所から父親が病いで床に着いたと知らせと共に、義母からの文が届く。
  
第七話 天の川
 ゑり元では、2人の娘が七夕の短冊に、あれこれ願いを書き込んでいた。産み月を控えたこのみも同様。

第八話 祭半纏
 祭り好きが高じて深川にやって来たほどの松乃井清五郎。神輿担ぎに出掛けたのだが、出過ぎた言動が担ぎ手たちの怒りを買う事に…。

第九話 十三夜
 13年前、深川には堀田屋、佐塚屋2軒の籠屋があったのだが、客の足下を見た商い振りに業を煮やした分限者・木柾仁左衛門が…。駕籠屋つるやが暖簾を掲げるまでの物語。

第十話 もみじ時雨
 むかでや藤三郎とおみねは、人知れぬ悩みを抱えていた。嫁して18年、齢37になり、子宝に恵まれたのだ。

第十一話 牡丹餅
 偏屈で知られる村上屋佐次郎は、未だ温かいと通例よりもひと月遅れで炬燵を入れると決めた。だが、朝晩の冷えには閉口しながらも、痩せ我慢を続け、その日を迎えた。

第十二話 餅搗き
 野島屋とうお活による盛大な餅搗きが催された。徳兵衛の娘・おしのも朝太を連れて参加していた。
 新年に向け、誰もが心浮き立つ市井の暮らしぶり。

番外編 凧揚げ
 まねき通りのほのぼのとした新年模様。

 悪人もいなければ、事件もない。どこの町でもありうるささやかな暮らしを描いている。だが、平穏な中にも家族の葛藤や、人付き合いの難しさなど、誰もが、「そうそう、こんな人いるなぁ」。「こういう事もあったなぁ」と、思い当たる日常を、江戸の風物詩に併せて描く人間ドラマ。ほっとする穏やかな作品である。
 いきなり、「第一話 初天神」のラストには目頭が熱くなった。そんな鼻の奥がつんとする話である。

主要登場人物
冬木町まねき通りの人々
 駄菓子屋うさぎや
  徳兵衛...当主
  おきん...内儀
  おしの...長女、海辺大工町の通い大工・仙造の女房
  仙造...おしのの亭主、海辺大工町の通い大工
  朝太...おしの・仙造の長男
 一膳飯・煮売屋おかめ
  おさき...女将、煮物方
  おみつ...長女、揚げ物方
 駕籠屋つるや
  利助...当主
  ますみ...内儀
  辰丙...駕籠かき頭
  善太、矢ノ助...駕籠かき 
 搗き米屋野島屋
  昭助...五代目当主
  あおい...女中頭
  杖四郎...番頭
 瀬戸物屋せとや
  徳右衛門...隠居
 乾物屋小島屋
  昌三郎...当主
  鶴松...手代
  丁稚...完吉
 小料理屋ひさご
  おまき...姉、料理・燗番
  おさち...妹、下拵え
 鮮魚・青物屋うお活
  活太郎...当主
  時次...若い衆
  鴇兵、伝三郎、伸吉...若い衆
 豆腐屋近江屋
  弥五郎...当主
  おりょう...内儀
  泰吉...長男
 履き物屋むかでや
  藤三郎...当主 
  おみね...内儀 
 太物屋ゑり元
  大三郎...当主
  このみ...内儀
  しおり...長女
  かのこ...二女
 雨具屋村上屋
  佐次郎...当主
  かね...内儀
  ひより...長女、晴次郎の女房
  晴次郎...傘張り職人
  てるみ...晴次郎・ひよりの長女
  定吉...丁稚
 うなぎ屋松乃井
  清五郎...当主
  まつの...内儀
深川の人々
 材木商木柾
  仁左衛門...当主
  利兵衛...頭取番頭
  作治...奉公人
  新太...作治の長男
 湯屋冬木湯
  塀吉...釜焚き
 鳶・町火消し
  雅五郎...親方
  健太郎、達次、昇太郎、金太郎...若い衆 




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