児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

小林美恵さんと萩原麻未さん

2012年03月30日 | 徒然
昨日ヤマハホールでフランスの情景というコンサートがあり聞きに行ってきた。新しいヤマハホールは実は初めて。元々狭い場所なので旧のヤマハホールもロビー周りが狭いとかエレベーターが混むとか言うことはあったのだけれど、それを解消するまではいっていないようだ。帰りはエレベーターが混むので階段で下まで延々と下りてきたのだけれど、階段を下りながら昔もこうだったなあと懐かしく感じていた。とはいえ、コンサート用のホールとしてはきちんとした作りでヤマハの意地を感じる施設ではある。
このコンサートは小林美恵さんの企画なのだろうと思うのだけれど、昨年広島で共演してから小林さんは萩原麻未さんと共演する機会を探っていたと思われる。そのくらい昨年3月初めに共演したあとピアニストとしての萩原さんの音楽性に惚れ込んでいる感じだった。それが今回東京で実現したので、とても意欲的なプログラムを組んできたのだと思う。プーランクのソナタ、ミヨーの屋根の上の牡牛、休憩を挟んでメシアンの世の終わりのための四重奏曲というプログラム。小林さんはミヨーのような曲では大胆に崩す感じがあって個人的には好きなのだけれど、それをオーバードライブしそうな萩原さんの演奏もすばらしかった。でも白眉はメシアンでN響のクラリネットの松本健司さんとチェロの藤森亮一さんとの4人の演奏は久々に聴いた凄い演奏。この強烈なエネルギーはやはり小林さんから発しているのだろうなあ。それに応える方も凄いけれど・・・
こういうコンサートがためらわずに出来る東京という場所はやはり羨ましくもある。






仙酔島

2012年03月27日 | 各地にて

仙酔島はポニョのふるさとである福山市の鞆にある。鞆は潮待ちの港として古代から栄えた瀬戸内海の要衝の一つ。ただ、街としての規模(面積)はそれほど大きくなく、道路は狭い。橋を架けたくなるのもわかるし、それが景観を壊す恐れもその通りだと思うが、車のすれ違いのできないような細い道路に車が次々と来るのは確かに怖い。街の姿として古い町としての価値は高いと思うし、観光地としての魅力もなくはないのだけれど、何度も来たくなる魅力には今ひとつの印象。島は鞆から渡船で4分くらいで、宿泊施設は有るけれどそれ以外の住民はいない無人島と言っていいかもしれない。古い地層が出ていて多分地学の好きな人には魅力的な場所に違いないがよくわからない。
写真は仙粋島から鞆を臨む。

雪の北上

2012年03月25日 | 各地にて
いわきから郡山に1泊して北上でおんかつの連携モデル事業の報告会。報告会というのは大げさだけれど、振り返り,と言うことでいろいろと意見交換ができ、結局予定をずいぶん延長して話をしていました。
今回、北上の千葉さんがコーディネーターをやってくれたことは本当はとても意義のあることだと思うのですが、やはりちょっと負担が大きかったかなと思います。一応組織的には無理をさせてはいけない,と言う見解ですが、こういう仕事の先輩として個人的に言えば、ある時点でこういう経験を通過し、苦労することが成長の大きな機会になる、と思っていますし、それを周りで見ている他のスタッフにも良い刺激になるはずだ、と考えています。
それと、今回の3つの地区(北上、前沢、大船渡)の担当者の絆がとても深くなっているのが感じられて、連携の効果が大きかったことが覗えて良かったと思います。それに、私としても、震災から一年間という期間にこの地域のホールとの仕事があったことがとても意味のあるものでした。
ただ、今日はやや季節外れの本格的雪で、寒い一日。

いわき3/22 読売日本交響楽団

2012年03月23日 | いわき
昨日3/22に読売日本交響楽団の復興支援特別講演として「きぼうの音楽会」がアリオスで開かれた。全員招待で。コンサートの初めに市長と読響の理事長のことば、それから読響の特別顧問である高松宮妃のおことばがあってそのあと普通にコンサート、最後に指揮者の下野さんがマイクを持って出てきて、みんなでふるさとを歌って終わる。
読響はこういうことを被災地で今後も続けていくという話である。
読響にはソリストとしてつきあったことのある知り合いも何人か居て、終演後、藤原浜雄さんや鈴木理恵子さん、チェロの毛利さんや高木君、ヴィオラの柳瀬君などと久しぶりに会えて嬉しかった。弾きやすいホールだと言うことと、お客さんが暖かくて良かった、というのがみんなの感想。藤原さんは3月いっぱいで正式にはコンサートマスター職を降りるそうだ(とは言っても、年間20公演くらいはお願いすることになるのではないか、と事務局の人はいっていたけれども、まあ一世代が終わりつつあると言うことかな。チェロは嶺田さんも、毛利さんももう60過ぎているし・・・。読響の音はN響とはやはりずいぶん違う性格がある。ソリストの清水和音さんのピアノの音も懐かしい(懐かしがっていてはいけないのだが)きらきらした音。好き嫌いはともかく気持ちがよい。この公演のために組まれたプログラムは、ウインザーの陽気な女房たち、シューマンのピアノ協奏曲、ドヴォルザークの8番。プログラムノートにもう少しメッセージがあるとわかりやすかったかも。

いわき3/18 0さいからのコンサート

2012年03月18日 | いわき
311から1年強が過ぎて、今年も寒い日が続いている。
震災と原発事故の影響はいわきの中心部に来てそれほど感じることが無くなってきた、というのは来訪者の感覚で、実は見えないか見ないようにしているかに過ぎないとは思うのだけれど、でも日常はある意味形成されつつある。いわきアリオスの今年度の事業もあと渡辺亮さんの事業の仕上げが残るのみ。今年は有料のコンサートは大幅に減らしたけれど、復興支援企画への手伝いとか、特にコミュニティや学校への事業を大事にして例年以上に行ってきた。それ以外にも手伝ったアウトリーチなども多く、スタッフにとっては忙しい一年だったと思う。
今日明日と「0さいからのコンサート」としてアリオスのリハ室、小名浜と内郷の子育てセンターで小さなコンサートをする。本来はホールで有料のつもりだったけれども、アウトリーチのスタイルに近い公演。今日は大リハ室で群響のコンマス伊藤文乃さんとコンバス首席の山崎さんというデュオでの企画である。
なかなか面白いアイデアもあって興味深いのだけれども、もっと完成度を上げることは出来るだろう。今一回終わったところで、私抜きでディスカッションをしているので、明日に向けての改訂がどうなるか興味深い。
今日のお客さまの子どもはほとんどが3歳以下。やはり親と一緒に過ごす時間になる。今日も親と子どもの一緒に出かけて過ごす場所としての価値は、終了後に人がなかなか帰らなかったことでも感じられる。これと幼稚園や保育園に行くのと同じような(サントリーのカーネギーキッズもそうだけれど)小さい子どものためのプログラムづくりは同じコンセプトで作って良いものかどうかはやや悩ましい。別にしても良いような気もする。すると、会場とか入場料の考え方も変えていかねばならないかもしれない。
まあ、今回のこの企画は「自前できちんと考え、制作して創る」ことが目標でもあるので、いろいろと工夫をしつつ実験的に行っていけばよいと考えている。

尾道のガラコンサート

2012年03月13日 | 各地にて
尾道の3年目の最後のコンサートが昨日あって、今年アウトリーチをした大森智子さん、田村緑さん、クアチュール・ベーの4人、中川賢一というメンバーでのガラコンサートがあった。昨年2月の終わりに日程を決めたのでとくに理由はないのだけれど、3月11日にむけて予想以上に社会が大震災の1周年に向けてと言うムードになっていて、特別なコンサートのように思われたかもしれない。
とはいえ、3年間「音楽のまちづくり」をやってきて、尾道に一定の音楽に対する関心が出てきたところで、まあまあうまくその後に続くきっかけは作れたと思う。そのあとは地元がどのような考えを持って次のステップに行くか、というのが大きなテーマになるだろう。うまく音楽祭という方向に持って行けるとそれはそれで良い流れになるかもしれない。一方、コミュニティ事業への可能性もかなり感じられるので、そのあたりをどうドライブしハンドルを切るかというおもしろそうな課題なのだけれど。
今回のガラコンサートは二人の演奏家の健康状態という、かなり波乱含みのラスト一週間だったのだけれど、結局事態がはっきり見えてくる前日までこころの準備以上の手を打てなかった。前日夕方に主催者、演奏家を含め、みんなで話し合って方向性を決めたのだけれど、まあかなり綱渡りだったと思う。演奏家、客、主催者それぞれの想いとか、納得がどうとれるのかを見つつの選択だったが、こういうときにみんなの一致団結する力はおんかつならではではないかと思えた。
結局少し(3割以上長引いた)長くなったとはいえ、お客がほとんど帰らないで集中していたので、充実感のある良いコンサートにできたのでほっとした。と言うわけでなんかややくたびれて帰ってきたけれど、今朝の雪の尾道や広島空港と一転、東京はそこそこ暖かくて一息。
写真はガラコンの練習風景。


いわき3/8 NHK交響楽団の公演

2012年03月08日 | いわき
いわき市はNHK交響楽団と定期公演の協定をしていて、年間1回の公演を行っているが、その故もあろうか、メンバーのいわきに対する気持ちはかなり濃いものがあるように思える。ありがたい。今回も昨年9月の定期公演がホールの修復が間に合わずに流れて諦めつつも,次の公演まで2年半も空くのは良くないという気持ちからお願いして、やや無理にスケジュールを入れてもらった公演でもある。
この公演を決めたときは、市民の生活とか感情とかが有料公演に向かうものだろうか,復興支援の企画がたくさん入ってきたらどうしようかとか、いろいろと心配もしたけれど、ある程度の覚悟を決めてやって良かったと思う。少しチケット料金は安くしたとはいえ満席。その過程ではいろいろなことがあるだろうが、復興というのはこういうことを少しづつきちんとやっていくことなのだろう(別に満席でなくても)。
全国的に3月に入ってから、3.11に向けて黙祷をしようとかいろいろな動きがあって、僕としては大げさなのは少し気持ちが引けるのだけれど、今日のコンサートでは、初めに指揮者の高関さんがすこし話をしてG線上のアリアを演奏した。そのあとは普通のコンサート。マメールロワとラプソディ・イン・ブルーと新世界である。
ピアノの小曽根さんはアンコールで自作の「リボーン」を弾いて、がんばろうと叫んで袖に帰ってきた。
帰りのお客様の様子を見ていたのだが、なんか嬉しそうで本当に良かった。

養父チェロコンクール優勝の西方正輝君のリサイタル

2012年03月05日 | 徒然
養父市(合併して養父市になったので元々は養父町)がビバホールという音楽用のホールを作ってもう20年ちょっとくらいになる。ここは民間の支援者との関係がうまくいっていて、地味だけれどもチェロのコンクールを続けている。はじめは菅野浩和さんとかが関係していたような気がするけれども、ずっと上村昇さんが中心となっていたように思う。そのあと、より広がりを持たせたいと考えたのだろう、上村さんが堤剛さんに審査委員長を依頼して今に至っている。コンクールは2年に一回、参加者の民泊も継続して行っていて、その人たちが応援団になってくれたりするのも良いし、優勝者は東京でのリサイタルも約束される。東京でのリサイタルは地味と言ったけれど、今年の7月で第10回になる。隔年で10回も続けていけばそれなりの意義や社会的な影響はある。広報的には「いくらお金を積んでも第10回のコンクールを突然やることはできない」という事の典型。優勝者も第1回の菊池知也や第2回の趙静からいろいろな人が排出しているし、近年は横坂源や宮田大もここの優勝。国際ではないけれど(だから地味に身の丈にあったやり方をしている)良いコンクールに育ってきていると思う。
はじめはカザルスホールに話があって,その後第一生命ホールで継続し今も続いている。
さてもう一昨年になるけれど第9回のコンクールの優勝者の記念リサイタルが昨日第一生命ホールであった。今回はお客様も多く(一般売りが多かったと聞いている)良い雰囲気のコンサートになった。これは西方君という演奏家の特質でもあると思うけれども、堤さんがプログラムに書いているとおり「自由な雰囲気が人を巻き込む力になっている」のだと思う。
演奏会は演奏の力だけでなく、プログラムの曲の並べ方などかなり考えたものになっていて、演奏でもやりたいことがいっぱいあるのだけれど・・・という、良い意味でアイデアが豊富な印象。興味深い。聴きながら「同じプログラムで10年後にもう一回聴いてみたい」(今がだめなのではなくて、このアイデアの豊かさがどうなっていくのか興味深いという意味)と思った。
写真は終了後のレセプションで。

大石将紀さん(サックス)の学校アウトリーチ

2012年03月02日 | アウトリーチ
文化の世界で比較的時代の先端を走っている世田谷区。世田谷パブリックシアターや世田谷美術館など他の文化施設の見本になるような活動を行っているように思う。JAFRAのアワードをこの2施設がとっているのもその現れであろう。音楽では何年か前からジュニアオケの活動を初めた。これはかなり腰が入った活動にしないといけない,会館にとってはいわゆる「覚悟のいる活動」であるが、着実に成果を上げているようにも思える。
音楽のアウトリーチについては今まであんまりやっていなかった(演劇とか美術では早くから取り組んでいたように思うけれど)のではないかと思うけれど、楠瀬さんが財団に入って少しづつ新しい目が生まれてきているように思う。今回はおんかつのアウトリーチで今年の最終の三宿小学校のを見に行った。大石将紀さんのサックスのアウトリーチは、今回の大石さんの絵画を使った組み立ては理詰めの印象を持った。子供とのやりとりがとてもうまく、きちんとした進行。45分ではもったいないと思うけれど、45分ならばそこの割り切りをもう少しした方がよいかもしれない。でもあえて言うと、音楽自体の力を見せると言う意味ではやや不完全燃焼の感じがあるかもしれない。とはいえ、大石さんのやりたいことはとても刺激的で、見学する側から言うとアイデアの宝庫、いろいろと口を出したくなるのは、おもしろい進行の証拠である。興味深い。