児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

いったりきたり

2006年11月30日 | 徒然
 先週の木曜日からずっと出張。
 23日に長崎に行きオーディションの1次選考。
 そこから福岡経由富山に行って「こしのくに音楽祭」の文化塾の講義、福岡経由で北九州に入りアウトリーチを見てサジェスチョンをして、兵庫県朝来市和田山である。ここは音楽活性化事業で奈良希愛さんと片岡リサさん。全部小学校。
 明日帰京である。出張先の方が休める時間が長いという考え方も出来るがこんな無茶なスケジュールを作るのは良くないのだろうなあと思いつつ・・である。来年になっていくらか落ち着く(筈)なことを期待しよう。

 北九州の演奏家の皆さんは、それぞれかなりきちんと考えて構成をしてきたのでほっとしている。打合せをきちんとやり、意図を明確にしてそれに集中していくという手間暇をかけることで良い演奏会になる、と言うことは大ホールのコンサートであれ学級へのアウトリーチ一つであれ同じことだと言うことを再確認できるような3日間だった。子どもの前で話すことの心労はあるだろうし、それ故に演奏に集中できない、という可能性は否めないのだけれど、子どもたちに何かを明確に伝えようとする意識の方が大事だと思うし、それが知らぬうちに自分の演奏にも返ってくると思う。
 まあ、この事業はまだアウトリーチの1/4位を終えただけだし、来年の3月にガラコンサートをやってはじめて一回りなのでまだまだ半ばではあるが、私の出来ることとしては3/4くらいはもう済んでいる感じがする。あと、コンサートが有意義に出来れば・・・。最終的にはこの事業は地元演奏家の環境と能力の向上を目指しているのであるから響ホールでのコンサートの出来は重要な要素なのである。
こういうことは地味なことなので、なかなか日が当たらないかもしれないが、それにかけるエネルギーは同じようにかけていかなければ。


 

こしのくに音楽祭とやま文化塾

2006年11月25日 | 徒然
ちょっとタイトルが大げさかもしれないけれど、富山文化塾は4回のうち、伊藤裕夫、加藤種男、曽田修司というばりばりの講義があり、今日は4回目。なんで最後が私なのかはよく判らないけれど、それは、ブリの季節を意識したからか?
今日は芸術家と地域というタイトルで、主にアウトリーチプログラムの話しをした。ゲストは小倉貴久子。前半は30分ほど小倉さんに話してもらい、後半は小倉さんにアウトリーチをやってもらう前提でグループでどんなところに行くのが良いのかというアイデアフラッシュから討議まで。
そこそこに充実した講座であったのかどうかは聴き手にゆだねるとして、私にもいくつか収穫があった。
老人と子どもを結びつける・・と言うテーマのみで4回のアウトリーチに様々なアイデアを出したグループ、富山県4つの地域の人がそれぞれアイデアを出した特徴のあったグループなど、なかなかアイデアには富んでいたと思う。
その先の問題は当然あるはずであるが、短時間だったことを考えるとまあまあだったかな、とおもう。

指定管理について

2006年11月24日 | 徒然
指定管理者とメセナ
一ケ月以上前になるが朝日新聞の吉田純子さんと話していて、吉田さんが「これから外資金融のように社会貢献に意欲のある企業が、公立ホールの運営に名乗りを上げる可能性があるのではないか・」と言うようなことをおっしゃった。「金融は金融庁の意向があって無理である」と言ったのだけれど、確かにそれは、面白い視点だと思った。
指定管理者制度は、簡単に言うと民間に公立施設の管理運営を任せる一種の民営化であるが、公立の施設の運営を利益を前提にした運営主体にまかせていくこくことに対する違和感というのはぬぐえない。それは、公益サービスの提供の仕方として妥当なのかどうか。
一方、民間企業でもメセナ(社会貢献)の考え方からホールが出来ていることも確かで、彼らは、メセナ的な仕事の姿勢を身につけ始めているのも事実である。企業の内部でもメセナ事業の運営管理は他のセクションと違う違和感を社員が持つと言うことはある。しかし、企業のCSRでもステークホルダーを株主に限定して考えることのひずみを修正し、ステークホルダーをより広範な範疇で考え、その全体幸福を考えるという考え方が導入され始めている。この発想をするセクションは会社の中でも一部のセクションであるとは思うが、そのバランスの中で会社経営を考えるのが新しい、とも言えるであろう。自治体の場合のステークホルダーはなんぞや、といえばまずは税金を払っている市民である。しかし、市民の要望(欲望?)のためを声高に語るのはやや危ないと言う気もする。もちろん役所の問題は常にある。だが、熱心な公立ホールの職員を見ていると、彼らもステークホルダーの一人であることを意識してしまう。

魚沼こしひかり

2006年11月22日 | 徒然
 地域創造が支援する音楽活性化事業の手法を採り入れた中越震災復興祈念事業の集大成であるガラコンサートが終わりました。本プロ最後が中川君主導による表題のインプロヴィぜーション。客席もその場で参加して異様に盛り上がりました。新潟の方ってラテン系だったっけ?
 こういう事業では、演奏家のスタンスはそれぞれであっても、コンサートに向うときに、最終的に一つの思いのようなものが繋がって良いものが出来るのは嬉しいことです。アウトリーチでもガラでもプロがもつ、席に座る人(客)への愛情のようなものを深く感じました。最後にアンコールでジュピターをやったとき、じつは案外ホロッとなったりして。
 でも、こういう企画は、災害があって、そこにボランタリーな気持ちで演奏しようと言う人がいて・・で出来る企画ではないということははっきりしています。本当の意味でのコーディネートが必要だと思う。このコーディネートは難しい、私なぞうかつに手を出したいとは思わない。

 ただ、2年以上を経過した今後は、今回のような政策的なやり方ではなく、もっと個人的なものとして、心の問題をボランタリーにフォローする人が出てくると思います。私的な、あまりにも私的な・・で良いのかもしれない。が、そのときにそれを受ける皿なのか箱なのかはあった方が良いのでしょう。心の問題には家を建て替えるのとは違った空間と時間とがある。何十年も前に建てたホールは老朽化して廃れていくけれども、同じころに合併した市がまだ、エリアの気質の違いにとまどうように・・。

 うーんちょっと感傷的かな。
 では、ちょっと内輪受けの話しで恐縮なのだけれど・・
今回、良いコンサートが出来ただけでなく、これだけ多くの人が一堂に会してスタッフワークをすることも珍しかった。演奏家13名。スタッフほぼ同数。そのなかで幾人もの方々が今までとちょっと違う認識をさせて下さったのだけれど・・。演奏家の印象とほかにも私の周りで気がついたものを。


1,演奏家の方は大ホールで音を出すときに、アウトリーチや小ホールで出す力とは違った意味での、巨大な空間を音で埋める能力がわかると言うことがありますが、そのあたりはみんなさすがと思いました。
2,大森智子さん。声の伸びが良くなったとおもいます。大ホール本当に貫禄が出てきた。
3,大森潤子さん。大編成の中での存在感(決め所の作り方)が非常に見事に感じました。
4,宮本妥子さん。やはり祭りに入ったときの大太鼓はカッコイイといえると思います。ああいうギャップはアーチストに必要なものなのですが、久しぶりに見ることが出来た。
5,長谷部一郎さん。音に円味というか色気が出てきましたよね。
6,中川賢一さん。あれだけのテンションを作り出しながら長崎のときよりも全体が見えていたような気がします。すごい。
7,白石光隆さん。いまやびっくりしないのですが、演奏以外で役割を本当にしっかりとやって下さいました。公演直前「五分押しでーす」とふれて回ってくれたのにはちょっと恐縮。ソロソロ会長? あ、もちろん演奏も。事務用腕カヴァーまでつけての即興は迫力満点。
8,バズ・ファイヴの皆さん。大人の雰囲気。いろいろな注文への対応力にずいぶん幅が出来、リラックスしていたような気がしますね。前は五人の反応が違ったのだけれど、今回はそう感じなかった。演奏は言うに及ばずです。
9,村越麻希子さん。だんだんと実物大に見えてきたのですが、アウトリーチとかにも力を発揮しそうな感じに見えてきました。
10,安藤裕子さん。実は、寄るとぱしっとされそうな感じがどこか少しあったのですが、そうでないことがわかりました。
11,オペラ振興会の吉池さん。舞台と舞台裏で本当に活き活きとしていました。なぐり持たせたかったなあ。
12,クラ協の善積専務。客席に座らずに公演中の舞台裏にいたときの雰囲気が妙にはまっていたので・・。
13.小出郷の榎本さん。一回り大きくなりましたね。今回の事業全体の構成、ではなく思想のようなものを演奏家とのつながりで理解して頂いたのは榎本さんです。途中でやや制作(演奏家的な部分)の不慣れはありましたが、立派としか言いようがない。そろそろ、師匠筋というのは止めてほしいなあ。

呑気布袋(ドンキホーテ)

2006年11月18日 | 徒然
本日はこれから第一生命ホールで日本音楽集団のコンサート「呑気布袋」があります。
2周年のときにオイディプスに挑戦したのと同じ仕組みで、音楽集団と共催ではありますが、小なりとはいえどもオペラ(楽劇)を出来るのは本当にありがたい。邦楽器によるオペラというのも有りそうでないものなので楽しいです。

ドンキホーテを日本に置き換え、どこまでセンスのある荒唐無稽さがでるだろうかと思っていたのですが、脚本の宗さんはとても面白い本を書いてくれたのがよく判りました。考えてみれば、あの世界は梁塵秘抄とか俳諧(狂句)とかにあるなあと思いつくのではありますが・・
昨日通し練習を見ていて思ったのですが、今回合唱団(東芝フィルハーモニー合唱団)を入れて、合唱のコロスとしての役割が案外大きいし、実際合唱が充実した曲に仕上がっています。上原まりさん(琵琶ではなく今回は役者)と狂言の善竹十郎さん、テノールの森一夫さんと言う主役3人の発声の違いと音量をコントロールするPAのバランスは工夫がいると思いますが、これは地域の大きめのホールで地元の合唱団と一緒に作っていく事業として面白いのではないかと思いました。


第一生命ホール5周年

2006年11月16日 | 徒然
今日は第一生命ホールの5周年の記念日だった。おめでとうさんです。
50すぎてからの5年は30代ころのと比べてずいぶん早い。早く感じると言うことは「一日にできることが衰えていること」と同義なような気もするのだが、そうではないと考えたいところだ。
今日の記念日のコンサートは前半がメンデルスゾーンの8重奏曲、後半がシューマンのピアノ5重奏曲。水曜日なのでSQWを少し意識して、でもSQはやらないというプログラム。短めの計算だが充実していた。ピアニストは開館記念コンサートのときに協奏曲を弾いてくださった長岡純子さんを5年ぶりにお呼びすることができた。毎年浜離宮でのリサイタルがあり、室内楽という形で弾いて頂くのが一番だと思っていたので、今回はチャンスだ、と思ったと言う事情もある。
長岡さんは健在だ。何年か前から自分の考えに実に忠実に弾いているという気がするのだが、今日の5重奏なども思いつく自分のアイデアをそのまま音にしているように見える。そのアイデアも素晴らしいのであるが、明確なイメージとテンポのゆれの的確さは見事と言うべきだろう。7、8年ほど前に「あれだけ自分のやりたい放題の演奏ができるのは幸せだろうなあ」と某ピアニストが長岡さんのリサイタルを聴いて呟いていたのを想いだすが、それがきちんと独りよがりでなくできているところが芸の内だと言えるのだろう。
前半のメンデルスゾーンでは、松原さんがあんまりフェスティーボにならないようにと意識したのではないかと思われる3楽章とかも乙だったが、久しぶりに若々しいメンデルスゾーンを聴いた感じ。プレアデス・クァルテットとクァルテット・エクセルシオと言う2つのSQを組み合わせてお互いが刺激になるように考えていくのは楽しい作業であるが、上手くいっただろうか。2つのSQが一緒にやるのに向いた曲は、実はこれかショスタコーヴィチくらいしかないのではないか。これもなかなかできそうでできないチャンスだったが、エクのみんなは特に刺激があったのではないかな。






魚沼市の中越震災復興祈念コンサート

2006年11月15日 | アウトリーチ
 10月に震災から2年が過ぎ、復興行政的にもターニングポイントかもしれない時期なのかもしれないけれど、人間の精神というのは簡単には戻らない念のようなものが深いところで残る。私だって25年前、7年前はまだ引きずっているものなあ。誰かさんの怨霊史観ではないけれども、その念の力を信じる文化であるしそれ故に前向きに把握する必要があるような気もする。また、継続的に心の問題をフォローする必要があるのだろう。それは自身でも社会でも・・でもあるかもしれない。
 まあそれはとにかく・・
19日に小出郷文化会館で行う記念のコンサートは、春から秋にかけて被災地域にアウトリーチなどをしてきた事のまとめの意味を持つコンサートである(翌日には魚沼の小学生のための短いコンサートも行う)。
ソプラノ、SQ、金管5重奏、ピアノ2台、打楽器という13名の演奏家が集まるガラコンサートであるが、こんな編成でできる曲はないので必然的に編曲が必要と言うことで、アメージンググレースとジュピターの編曲を長生淳さんにお願いした。ジュピターは震災当時流行していた曲で(もちろん原曲はホルスト)、ずいぶんみんなの心を慰めてくれた曲だと言うことである。
 13日の夜に都内月島のピアノアートサロンでその練習が行われた。長生さんの編曲は面白いけれど案外難しいかも、と言う風説(誰だ!)があるのと、音量の違いすぎる編成なのでバランスをどうするかという心配があったので、前日のホールでのリハーサル前に一度合わせてみるという事になったものである。
 アメージンググレースは、アメージンググレースとクラシック名曲が織りなす楽しい編曲。タンホイザーあり悲愴あり・・。アンコールで行うジュピターはドヴォルザークからはじまり、歌の部分はちょっと変拍子のように聞こえる不思議な世界。


八丁味噌

2006年11月07日 | 徒然
愛知県幸田町の宿泊は隣の岡崎である。ホテルは家康の居城だった岡崎城の西側。歩いて3分のところに八丁味噌の工場がある。観光バスがひっきりなしに来る。流石NHK(純情キラリ)効果である。工場の横の売店には味噌以外にも味噌グッズが売っている。八丁味噌プリッツとか、八丁味噌のご当地キティちゃんとか。
朝ふらりと散歩をしたら、八帖通りというなかなかよさそうな通りに出た。なるほどそれて八丁味噌なのね。まあ、味噌やさんのパンフレットを見ればそう書いてあるのだけれども、妙に納得。
味噌工場の裏手の道もなかなか雰囲気がある(写真)が、この道に足を踏み入れたとたんにぱらぱらと雨が降ってきた。なんと塀ばかりで隠れるところがない。まあこういうのも街の風情というのでしょう。
昨年も何度も来たわりにはほとんど街を歩けなかったので今回は数十分とはいえ楽しい時間でした。

愛知県幸田のアウトリーチ

2006年11月05日 | アウトリーチ
幸田町のアウトリーチ事業。今日は地元演奏家へのレクチャー第2回。あんまり教えるというのはいやなので一応アーチストミーティングと呼んでいいるが。
今日は松原千代繁さんに話しをして頂く。彼は私からみるとこの世界での大先輩であり、どうも頭が上がらないのだが、彼の話をまともに聞くのも初めて。オケの世界でいろいろとやってきた人だけに、若干意見を異にするかと思っていたのだがアウトリーチに関してはほとんど発想は同じだった。アウトリーチは音楽の諸要素のすべてを反映する割には、一つ一つの会ではあんまりたくさんのことができないので、一見違った方向のことが同居するような感覚に陥りがちだし、そこでこれ以外はだめというのは非常に危険な発言になることもわかっているつもりなので、意見が違っても良いと考えていた。でも松原流の話題の中で話されたことは納得できることばかり。流石。
今日は、みんなから出てきたアウトリーチプログラム案を一つづつ繙くという手法での話しだった。このやり方はかなリスクを伴う。何しろ、話す内容を全く決めずに成り行きで進めるので、そこで気の利いたことが言えるかどうかは神のみぞしるである。でも、こういう話しをできる場所は実は音楽家にとってもそれほどあるわけでもない。北九州の時もそうだったが、それは私たちの使命の一つだろう。
松原さんも時折口を挟んでくださったが、とても参考になった。
今回、名古屋の方達の意識は高く、良いプランがいくつも出てきていた。期待したいと思う。




チェロ協会のチェロサロン

2006年11月04日 | 徒然
 日本チェロ協会ができてからもう9年になる。来年は10周年か・・と言う感慨はある。今日は拡大版チェロサロンがサントリーの小ホールで行われたのでのぞきに行ってきた。今年から再び評議委員というのになっているのに、全然スケジュールが取れなくて顔を出していなかったので、勝どきのクァルテットサロンを一曲で抜け出して着いたところでちょうどヨーヨー・マ氏の登場だった。ラッキー。
 会はマ氏が飛び入りで演奏に参加したりして(まあこれは無伴奏チェロ組曲全曲演奏会に合わせて小ホールを押さえた事務局の大ヒット)チェロアンサンブルを楽しんだ。レディマドンナと賛歌。私は弾けないとはいえ、チェロのアンサンブルは上手い下手にかかわらず奥行きのある音がするのでいつでも楽しい。
 協会でアマチュアチェリストを牽引する石島さんとか昔からのメンバーもいて懐かしいとともに、少し知らないメンバーも増えているようだ。評議委員にもう少し若い人がいると良いのだけれど・・・いつまでもトコちゃんが最年少で無い方がこれからは良いのかもしれない、とは思うが、まあ、もうしばらくは仕方がないのかもしれない。誰か居ませんか?