児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

二つのガラコンサート

2009年02月27日 | 各地にて
先々週は北九州響ホールで、先週は長崎ブリックホールでこの一年間それぞれアウトリーチ活動をしてきた演奏家たちのガラコンサートが行われた。おんかつの演奏家などキャリアのある人と地元の演奏家が同じ舞台に上がる(共演はなかなか難しいとしても)。
このスタイルは、同じ市町村で一定数以上のアウトリーチを行う場合、アウトリーチのような明確に普及的な意図をもった演奏ではなく、音楽できちんと勝負をできる場所を演奏家に持ってもらうための方法としては妥協的ではあるけれども悪くない方法だと思う。リサイタルだと聴き手の指向からどうしても普及的でわかりやすい演奏会になりがちなのだけれど、ガラ方式でのヴァラエティがあることで、帰って冒険的な曲もできるという面もある(そんなに単純ではないけれど)。
実際、どちらの会場も子ども連れが予想以上に多い割に、親子コンサートに時々見られる集中力の欠如もなく、いい感じでできたのが収穫。そんなことで、会場に足を運ぶ習慣がついてくれるといいのだけれど…。
特に地元の演奏家にとっては、他の人と比較される緊張感は意味があると思っている。理想を言えば、地元で小さな仕事でなく一人でリサイタルを組めるような実力(さまざまな意味で)を持ってもらうようにしていくことが大事なのだけれど、なかなかそういうわけにはいかないので・・・



長崎ホリデーインの朝食

2009年02月20日 | 徒然
長崎ホリデーインの朝食バイキングはティアという2階のオーガニックレストランでとてもおいしい。
ティアは「土地に命と会いありて」という言葉の初めの文字(TIA)を取ったものだということだけれども、もともとは農家や魚市場でとれた、中身は同じだけれど形のそろわない故に商品として流通しない食材を有効に使って提供する、というコンセプトではじめられたレストランだということだ。こういう一種の地産地消的なレストランがホリデーインというインターナショナルなホテルチェーンのレストランであるというのはとても興味深い。
オーガニックというと健康食品のように思ってしまうけれども、朝食には、その日その日の食材に沿って調理された野菜や魚が中心だけれど、その中にはハヤシやカレーもあったりする(そして美味しい)のでつい食べ過ぎてしまう。ここに泊まると朝に食べ過ぎるので昼食が進まない。それでは健康とはいえないかも。ただ、御飯は白米はなく、玄米だったり、十穀米だったり、赤米入りだったり、炊き込みだったりするのでカレーライスには何となくしづらく、ついそのままスープの代わりにしてしまうのだけれど・・・。
ここは入口がちょっとわかりにくいとか建物が古いので空調が少しうるさいとかいくつか欠点もあるが部屋は広いし調度も重厚。しかし、長崎でここに泊まるのは便利さもあるけれどおもに朝食の故である

高木和弘の演奏の力

2009年02月19日 | アウトリーチ
長崎で高木和弘のアウトリーチの最中である。今日が一日目。今回はアウトリーチを二日やった後ガラコンサートに出演という形。ブリックホールのスタッフはすこし仕事が重複して大変そうだけれども(市民参加舞台である演劇の追い込み中でもある)、相変わらず高木和弘のパワーは全開である。
今日は都心部にある学年5クラスもある中学校で、3年生を二つに分けて午前と午後コンサートをした。中学校(特に都心部)は乗りが悪いという傾向はあるのだけれど、高木君のメッセージ性と演奏にかける気迫のようなものが伝わるであろうというのがこちらの期待であった。
かれは、「今日は特に伝いたいメッセージとかがあるわけではないけれども楽しんで帰ってほしい」などと初めにいうのだけれど、曲の合間の話では、みんなにこういうことを考えて生きていってほしい、というメッセージ満載である。これがいやらしくなく伝わることが彼の真骨頂であろうと思う。ヴァイオリンの音楽というのは一面ジプシーの楽器であるので、哀愁とともにこれ見よがしな技巧を見せるという要素が存在する。そこのバランスが極めてよいのが彼らしい。今日の曲目は、愛の喜びのあと、ピアノの佐藤勝重さんの、トルコ行進曲とプロコフィエフのロメジュリ(ソフトバンクの広告に使われている)。そのあと、ヴァイオリンのソロの魔王、もののけ姫のエンディングの音楽?、カルメン幻想曲と大きな曲が3曲。
たぶん本人もそう感じているだろうけれど、特に午後の演奏は非常に充実していて、明らかに神が下りてきていた、学校の定番であるお礼の言葉というのがここでもあったのだけれど「色々と考えていたのだけれど、演奏に感動して全部忘れてしまいました。ありがとうございました」という女生徒の言葉が感動的だった。まあこれは勲章の一つですね。
東響と山形響という2つのオケのコンマスを兼任するようになっても、高木和弘の熱は変わらないということの確認できた一日でした。
ピアノの佐藤勝重君はかつて音活のオーディションを受けたことのある人。今も変わらない子供への熱意が感じられたし、ヴァイオリンソロの演奏中に子供の表情をとてもよく見ていたのが印象的。ピアノがうまいだけではない愛情が感じられるピアニストである。

今野さん、アウトリーチの話

2009年02月05日 | アウトリーチ
なぜか、地域創造では私もてっちゃんと言うことになっているらしい。知識の豊富さとてっちゃん度は必ずしも一致しないはずなのだけれどねえ。
しかし確かに旅は多い。旅も街も乗り物も決して嫌いではない。いやならば、多分最初の音楽事務所がダメになった時にこの世界から足を洗っていたであろうと思うだけの理由はあったはずである。
2月に入ってからもいわきに行き、帰って翌日にステージラボで徳島へ、徳島で午前の話を済ませてすぐ列車に乗り、延々と大分県臼杵。このあと、三重町~岡崎から東京(これも延々の電車旅行である)。来週は幸田~北九州。翌週は長崎など。

今いる臼杵は音活の本番である。いい街だ。ここの演奏家はピアニストの今野尚美さん。イギリスに6年ほど留学していた人だ。
ピアノのソリストというのはなかなか孤独な商売であって、アンサンブルよりも一人で動くことのほうが比較的多いと思う。そのうえ、アンサンブルで行ったとしても、ピアノだけは部屋では練習できないし、慣らすためにほかの楽器よりも早く会館に入ったりするし、常に人目にさらされて練習をしているというのもなかなかつらいのだ。
今日が一日目で臼杵中央部の小学校でのコンサート。歴史のありそうな小学校である。午前4年生と午後5年生の2回を行った。移動がないことと、ここでの先生との話でいろいろとアイデアが出てきたため、各60分(ふつうは45分が一時限)にしていただいた。
アウトリーチでの今野さんの話のいいところは、自分を隠さないこととメッセージを持っていることだ。こういう人に言われるメッセージは決して人に押しつけ感を与えない。子供たちとの対話のカンがすぐれて良いとかではないのだけれど、相手がとても好意的に感じてくれる、というのは演奏家という職業の重要なキャラクターである。少し泥臭い感じがするが、それが非常にいい反応を引き出していると思える。演奏のほうも、決して器用にどんどん・・と言うタイプではないように見受けれられるけれども、出来上がってきた演奏は魅力的である。
その意味では音活で今までにないタイプの人かもしれないね。

児玉真