児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

おんかつアーチストの実地研修

2010年02月27日 | アウトリーチ
来年度(22年度)おんかつ登録演奏家が実施する会館の担当者に向けてのプレゼンテーションは4月に行うが、今回はそれに先だっての研修の充実を目標にして昨秋に2日間の研修と1-2月に1回づつではあるが実際に学校に行ってもらう(アドヴァイス付き)ということを行った。私が同行したのは桐生。演奏家は野尻さん、海野さん、大石さんの3組。
前日にランスルーを行うのだけれど、先ず自分で何処が混乱するのか、話せないのかを自覚することからはじめ、小さな修正をする。これで翌日本番というのはかなり過酷だと思うけれど、演奏家というのはこれだけで翌日にはがらっと変わることが出来るのが本当にすごいとおもう。まあ子どものが目の前にいる方が楽なのだけれど。これは熊本でもそう言われたので、ランスルーというのは演奏家にはやや意地悪なのかもしれない。でもはじめから子どもの前でやるのはやや勇気がいる。実際に過去の音活でも本番の4回のアウトリーチの途中で修正していってひやひやしたこともあるので、こういうことを事前にやっておく効果は非常に大きいし、市町村に申し訳ない思いをする事もなくなるだろう。
今回は今年3月で廃校になる小学校にいって、1、2年、3,4年、5,6年と3回に分けて全ての子どもたちに聞いてもらった。学年による色々な違いなども体験できたので良かったのではないかと思う。
桐生は好きな街の一つで、本当は街も歩けると良かったのだけれど、今回は全く時間もなく残念。でも、ここのスタッフは本当に気持ちがよい。ステージラボ0回目の芝田さんを含めてお世話になりました。今回も、「おんかつよりも楽でした」などと言っていたけれど、この忙しい時期に3組の世話は大変だったと思う。

北九州のガラ(音楽専門ホールについて)

2010年02月22日 | 徒然
 昨日、北九州の響ホールで、今年度響ホールの事業として年間20数回のアウトリーチ活動をした演奏家が集まってガラコンサートが行われた。地元の演奏家4組のうち今年は松谷さん+庄野さん、早川さんが、東京からは田中さん+白石さん、野口さん+中川さんが参加して、計4組が一組25分づつ演奏をした。長崎と違って700名程度の室内楽ホールなので、このくらいの人数でじっくりという方が良いように思う。4年目にして少しづつお客様も定着してきたような気がするけれど・・・。
終わった後のロビーでは,知り合いだけでなく、アウトリーチに行った先の子供や先生や大人も思いの外来てくれていて、彼らと演奏家の交流がしばらく続いた。東京以外のホールとは思えない非常に良い雰囲気になっていて、こういうのはとても良い。

 北九州の響ホールはオープンしてからもう18年くらい経つ(と言うことは2年後に20周年ということか?)。ちょうどその時代は「音楽専門ホールの時代」と言って良い時代だと思う(最近は演劇専門劇場の時代か?)。ちょうど森啓さんが「公共ホールが街を作る」の本を書いて、その影響が大きかった時代。
 それがどうだったのかと言うことはここでは書かないけれど、少なくともあの頃は専門ホールが正しい選択だと思われていた時代だったのだろう。特に音楽は、管理に専門的な技術者を多く要求しないこともあり、全国に室内楽用のホールがいくつも建っていたはずだ。
響ホールはその中でも目立った存在で、数住岸子さんを芸術監督にして、アジアへの窓として尖った企画の演奏会をしていた。どこまで地域の人たちが認めていたかは分からないけれども、少なくとも東京での評価はとても高かったはずだ。響ホール音楽祭はアジアからの作曲家の招聘や高橋悠治さんほかの演奏家たちが新しい音楽をやっていたので、私も2回くらいわざわざ見に行っていたと思う。
 過去の企画についてはさておき、昨日アウトリーチ事業に出演した演奏家によるガラコンサートに立ち会いながら感じたことは、あの時代にできた室内楽用のホールは、10数年を経て音響にも人にも馴染んで知らず知らずのうちにとても良い場所になって来ているのではないか・・・ということ。
 北九州だけではなく全国にそのような場所があるというのは、クラシック音楽(特に室内楽)にとってはなかなか良いことではないだろうか。演奏家にとっても、このように良い意味で力の出せ、それを音響が支えてくれる場所があることはとても幸福。中川君は仙台にはこういうのがないのですよ、と残念がっていたけれど、それはそこで弾いた人が感じる確かな感覚。
たしかに、こういう時代で、今専門ホールを作ることの無駄をある程度認識すべきなのは確かだけれど、やはり芸術の選択肢のなかで必要であると言うことは間違いない。
専門のホールや劇場を支える社会的な奥行きは少なくとも今は期待できそうもないので、新しく音楽専用ホールを造りましょうよ、と自治体に言う勇気はなかなか出てこないけれど、存在している場所の活用はもう少し考えても良いのではないかと思う。全国にいくつも良い場所がある。その地域でそのようなホールを造った文化環境の過去に対する一種の敬意のようなものとして考えられないだろうか。カザルスホールがそうだとは言わないけれど、流行りで造ったものがやはり流行りで廃れていく,と言うのを見ているとちょっとつらい気持ちになる。残っているホールもがんばらないと。21世紀初頭の演劇専用劇場もそうならないことを祈るけれど。

アウトリーチの進行

2010年02月19日 | アウトリーチ
アウトリーチのプラン作りで、演奏家の研修用に最近使っているのは、学校の先生が書く(書かされる?)授業プランをアウトリーチ用にしたような表である。これは4年半ほど前に熊本のアウトリーチ事業で、サブコーディネーターになってくれた坂口さんに、こんな感じでやったアウトリーチの振り返り用にまとめてほしいとお願いして作ったものが下敷きであるが、後である人から「それって学校の授業プランと同じですね」といわれてずっこけたことがある。大学で教職などを取ると書かされるのだそうで・・・
ただ、45分間の時間の流れと、その時間が何のための時間なのか、曲目、話す内容、注意や参考と並ぶ表に書き込んでいって貰うことで、演奏する側がかなり整理ができるみたいだと言うことも分かって、研修があるとこの紙を渡している。
(写真ではよく分からないとおもうけれど、これはアイリス・クラリネット・カルテットの進行表である)
まあ、紙があればできるというものではないけれども・・・
基本はミッション感覚であり、思考回路なのだけれど、それには良いアウトリーチを見て貰うのが一番であって、それ抜きにはいくらレクチャーをやってもなかなか・・というのが現実。やはり、人から聞くよりも自分で納得するのが一番、というのが演奏家にもお話しするアウトリーチのプログラム作りの基本でもある。



愛知県幸田町との相性

2010年02月19日 | 徒然
愛知県幸田町は良い町であるだけでなく、特に町民会館ハピネスヒルのスタッフにハートがあるのでじつに気持ちがよい(グッドウィルなのである)。スタッフワークの良さでジャフラアワードを取ったのもうなずける。
岡崎のホテルがちょっと離れているし中途半端だとか、そういうことが全く気にならないのである。オーディションで決まった2つのグループも気持ちが良い上に実力があるので、今回もとても良い関係が作れたと思うし、学校の先生、校長もとても理解があり、前向きな意見を言ってくれる。教育現場の人はこう考えるのだなあ、ととても参考になる。

ただ一つだけ、どうも相性が悪いのが私の機材であって、何年か前には、ホテルから会場に向かい車の中で携帯電話が突然臨終を迎えてしまったり、デジカメが突然色の変調を来してしまったりしたことがあったのだけれども、今回は学校でデジカメを構えたら液晶が漏れて半分ほど見えなくなってしまっていた。今回は明らかにカメラの荷造りの問題で私の不注意であることはあきらかなのだけれど、なんか不思議である。幸田の担当にも「そういえば携帯も壊れましたよねえ」と言われてしまったのだけれど、不思議である。幸田にはナショナルとソニーの工場があって、壊れたカメラはカシオとリコーだから何かあるのかもしれない,などと幸田の人と冗談を言っていたのだけれど、おかげで一日目終了の後、名古屋まで行ってカメラを買う仕儀に・・・。今度はキャノンだけれどどうかな。
(写真はアイリス・クラリネット・カルテットの入場の様子。新しいカメラで)

幸田のアウトリーチ

2010年02月17日 | 徒然
昨年オーディションを行った幸田町。わたしと楠瀬さんで2日間研修をして今日が初めての本番。幸田は最初から小学2年生向けと決まっているし比較的ターゲットが絞りやすいとも言えるけれど、今回の2組はどちらも優秀だ。

12月に研修をしたときは、楠瀬さんと2人でそれぞれ一組づつの面倒を見るという形で研修ができたことも良かったけれども、そのときに渡した授業計画表(ここ1年くらい多用していて,きちんと伝えておけばかなり効果がある紙である)のような表を使って、かなり完全台本とも言えるような構成を作ってきた。ここまでしっかりしていれば、あとは場数だけである。そのあたりもやはり名古屋の層の厚さがあるとしても、幸田町民会館のスタッフの日頃の人脈が物を言っている事は間違いない。
今日は金管5重奏団のロゼで午前午後と2回行ったが、まだ話は少し堅いけれども構成がしっかりしているので安心して聞ける。
2校目の校長先生は幸田のアウトリーチ事業の良き理解者で、いつも色々と意見を言ってくれるのであるが、今日はロゼの構成に脱帽という躰であった。
そういう評価は本当にうれしい。
明日はクラ4重奏のアイリス。クラの四重奏を扱うのは私も初めて・・・。こちらも、計画表を見るとかなりしっかりとした構成になっているのでたのしみである。

長崎と熊本

2010年02月13日 | アウトリーチ
長崎の演奏家のアウトリーチに立ち会ってきた。今年はもう1,2月で20くらいになると思うけれども、最近、きちんと作ってくる地域の演奏家のアウトリーチに感心することも多い。長崎でも一人見事な人がいる。彼女は本当によく考えていて、話をするときちんと吸収するので引き出しはどんどんたまっていくだろう。ネタノートというのを作っているそうだが良く書いてある。この間のコミュニティ(ふれあいセンター)の構成もなかなか見事だった。あれは、もう全国に出しても全く遜色がない以上である。もちろん現場力というのは音活の演奏家のちからはあるけれど、よほどいろいろと考えている,と思える人もいて感心してしまうこともあるのだ。
最近使っている進行表が比較的有効みたい。
ところで、今回は熊本の登録演奏家3人が長崎まで見学に来た。研修の一環だそうだけれども、一泊の研修旅行、羨ましいね。熊本と長崎では県と市の違いもあるので政策上の組み立てはちょっと違う。でも、お互いが刺激を受けて居るように見えるのは良いことだと思った。熊本の人たちには、アウトリーチ後に行う小さなミーティング(10分とかだけれどもいわゆる振り返りである。だめ出しとも言うけれどね)にも出ていただいた。他人のものはやはり客観的に見ることができるのでその話もおもしろかったかも・・
(写真は長崎永留さんのアウトリーチの模様)

白鷹のアッシュ

2010年02月02日 | 徒然
山形県白鷹町の新しいホールあゆーむでのクァルテットH(アッシュ)のおんかつ。
福島を出て、峠を越えると突然の白い世界であった。まあ知っていたことではあったけれど、実際に雪を見ると何か心が動くことは間違いない。(写真)

実はアッシュとやるのは私としては初めてである。大体にしてオーケストラで忙しい演奏家の方たちのアウトリーチは、彼ら自身の想いが表に出にくいせいもあって、どうも形式的になっているような気がするものである。
そのあたりはソロとは若干感覚が違うのかもしれない。今回、残念ながら、事前のコーディネートの工夫が不十分であった感は否めないのであるが(それはこちらの責任)、メンバーが一人替わったこともあってそこまでやりにくかったこともある。
しかし、今回はアウトリーチの最初はやや様子見のところもあったけれど、徐々に気持ちが乗っていくのが分かるような展開だった。そういう動きに関しては集団の方がおもしろいところもある。
朝食を食べながら、今回いろいろなコーディネーターと一緒にやった。見守るタイプ、ああしたほうが良いこうした方が良いと言ってくれるタイプなどなど、が居たけれど、自分たちはどうだったのだろうかと聞かれて少しつまった。
まず演奏そのものは非常に素晴らしい。先週の徳島のラボのグループよりも、キャリアもあり、あわせる機会も多いのだから当たり前なのだけれど、表現の変化、音色の豊かさなどは明らかに一日の長があるだろう。ただ、3年前の宮城のフォーラムのときにまず何を伝えたいのかと言うことをみんなで話し合ったのだけれど,今は余り時間がとれていないかも,と言われて、そうかもしれない、と言った。確かに一人一人の話の対応力は経験の数だけ充実してきているけれども、まとめるための一緒に考える時間は少なくなってきているだろう。それは忙しくなってくればやむを得ない部分もあるけれど、それをカヴァーする何らかの方法は必要だろうと言う気はする。
今回は白鷹町の人たちの連携の良さ、人に対する真摯であたたかな感じなど、心に残る対応があって、それがいろいろな意味でお互いを高めていったと言う気がする。スタッフの気持ちを支えていたのは菅間さんという会館を担当する町の職員である。彼の力は大きい。

彼らのアウトリーチの模様はまたノートの方に乗せるけれど、楽しめた会だったと思う。