児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

この10日間

2008年04月29日 | 徒然
ここのところなかなか筆が進まないのは、気持ちの問題ではあるがやはり毎日を追われているから。
前便以降の動きを・・
音活全体研修が終わってコーディネーターで飲み、翌日いわきに。
いわきはコバケンの炎の第九の本番にむけ、指揮者、合唱団、オケ、ソリストと分担して面倒を見る形になる。その上来年3月のアーネムフィルの話しも動き出していてそれも気にしなくてはいけない。19日はNHK交響楽団がいわきに来て、午後からオケリハと合唱合わせ。前日の現地に行って合わせるというのはNHK交響楽団としては比較的異例のことらしい。20日の本番に向け市民の合唱団は極めて意気軒昂で集中力はすごかった。本番を見に来て下さったNHK交響楽団の理事長も、合唱団については意義を見いだしてくれたようで、それが一番嬉しいことだったかも。大ホールのこけらにコバケン、N響、第九、市民合唱団という4点セットで勢いをつけたいと思ったのは成功したと言えると思う。
第九の打ち上げを終えてから帰京。毎週の昭和音大の授業がスケジュール的にはかなり重くのしかかる(生徒には申し訳ないような気もするが)けれども、まあ、こういう事も面白いし、今やっておくべきだと思う事の一つであるので仕方がない。
22日は地域創造の日。昨年の反省から毎月必ず地域創造に一日居る日をつくりそのときに音楽関係の会議をなるべく入れる・・という方針にした最初の日である。
終了後いわきに行き、NHK交響楽団メンバー(シューベルトの鱒をやる)が飲んでいるところに乱入。翌日は野平さんが来て小ホールのこけら落とし公演。野平さんのピアノソロと鱒である。小ホールは200席しかなくて少しもったいない公演が続くが、きちんと常客をつけるやり方は、市内の音楽好きから聞こえる「マナーがよくない」という意見に対する答えにもなるかも知れない。マナーは「No」の姿勢では修正しにくいから。
翌日24日は幕張の市町村アカデミーの市町村長特別セミナーで少しだけお話しをし、地域創造の音楽活性化事業の宣伝もかね、菅家奈津子さんの歌を聴いてもらう会。一応講師なわけだが、市町村長と聞くとそれなりに緊張する。(写真)
25日にいわきに戻り(ほとんどいわきから出張状態)、吉野直子さんのリサイタルのリハーサルに立ち会う。いわきアリオスの小ホールは200席しかないし実はあんまり期待できないと思っていたのだが、音響的にはかなり良い出来だと思う。200席で音響をつくるのは難しいはずだから。もちろん、曾ての大リハ室の改修なので、できないこともたくさんあるし、表に中のモニターが聞こえないなど、いくつか前のリハ室から引きずっている問題もあるようなのだが、ホールの音響については良いようだ。ただ、乱暴に弾く人だとちょっと大変かも知れない。そのあたりはカザルスホールにちょっと似ている。でもカザルスよりも細かい音が聞こえてくるし、客が一杯入ったときに耳元で吸音されるような感覚があったカザルスよりも客席は扱いやすいように思った。永田音響的にはヒット作なのではないか。ただ、ピアノにしてもハープにしても置く場所によってかなり微妙に音が変わるので気をつけないと行けないホールではある。
27の朝に帰京。そのまま中央区第九の会の集大成公演である「歌舞伎座の第九」を聞かせてもらう。私も一様アドヴァイザーとして名を連ねているのだが、あんまり発言する機会が無く極めて申し訳ありません状態。でもしっかり2階席の西桟敷で聞かせて頂いた。桟敷はいわゆるL席で横の位置になるのだが、音楽ホールでよくある手すりが気になるということもなく、舞台の見通しがよかったのは歌舞伎座の伝統の力か。消防法で手すりはしょうがない・・といつも設計の方から聞かされていたのだが、あれはどうなんだろうか。演奏ではバリトンが花道から出てきて「オーフロイデ・・」と歌い出すところなどなかなかの演出。民間の有志が言い出し、区も乗っかって実現した第九。ここは極めて出演者オリエンテッドな世界だが、流石中央区といえる民間の力が結集した感じで見事だと思った。銀座旧東武ホテルでの打ち上げも異様に盛り上がっていた。
今日は、再び大学。終了後すぐ帰宅して、車でガソリンを入れに行き(まだやすいはず)そのあといわきへ・・。とはいえ、今月は東京といわきだけ。
ああしんど。まあ面白い人生だわ



おんかつの研修会

2008年04月19日 | 徒然
地域創造の公共ホール音楽活性化事業2008年度の全体研修会が15-17日にあり、毎年のことだが新しいアーチストと新しいホールの担当者の出会いは新鮮である。何しろ、ホールの担当に「全部自分で聴いて一番やりたいと思う人をえらんでね・・」という事は実はかなり過酷な注文で、「その人を活用したコミュニティプログラムをイメージするように」とか「スケジュールをつくってみよう」とかまあ無理難題を押しつけている感じがしなくもない。私たちも曾てそうだったように、現場の空気をイメージするのはかなり大変なのである。
でも、情報がずいぶん行き渡ってきたことも確かなのだろう。演奏家も会館の人も、所謂耳年増になっている気配もある。きちんとしているがはちゃめちゃさが少ないのだ。コーディネーターとしては「安心だけれど突っ込めない演奏家や会館の人」はちょっと物足りなく感じる事もある。アウトリーチフォーーラムが「教える」と言う感じを持っているのに対して、おんかつは全員が楽しむという感じで行ったときが一番嬉しいかも知れない。
しかし、この辺の塩梅は極めて難しい。面白いことを探す方向に行ってしまった時代は、無茶が通ってしまった時代でもあって、それを押さえようとするとつまらなくなる・・という繰り返しのようである。まあ、人間のやることは大体そんなものさ、という面もあるのだけれどね。
今年の研修会は2月にやったラボの関係者たちがいろいろな立場で来ていて、ミニ同窓会のようになりちょっと楽しかった。コーディネータ(私)、コーディネータ研修生、地域創造の人、ラボで手伝ってもらったピアニスト、遊びに来た人、など。プレゼンテーション後の交流会(会館の人がこの人ならというアーチストの話しを聞いて交渉をする場所なので、案外真剣なレセプションであるのだが)での写真。



コバケンと小山さん

2008年04月13日 | いわき
小山実稚恵さんは嬉しいことに、いわきアリオスは気に入ってくれたようで、一昨日は1時すぎにホールに来て夜まで弾き込み、昨日も昼から8時近くまでずっとピアノを弾いていた。調律の杉浦さんもほぼつきっきり。彼が前の方の座席に座り、小山さんといろいろと問答をしながら聞いているのだけれど、その問答の内容は私ら素人には禅問答のよう。しかし、演奏家が何処までピアノの扱いに微妙な感覚を持っているのかがわかるような話で面白いことこのうえない。特に新しいピアノで、いろいろと変化していく様も本人たちも面白いのだと思う。
今日が本番。初めての有料の主催公演である。お客も1500人くらい入る予定でまあ出だしは好調と言っておこう。
昨日は夕方から小林研一郎さんが来て第九の練習。どかんと気合いを入れる方向なのだろうと覚悟していたのだが、比較的ソフトな進行。今日の夜もう一回練習がある。あと一週間だし、次はN響との合わせなので少し気合いを入れてもらった方が良いのかも知れぬ。しかし、合唱団の人たちの芸術に向かう気持ちがとても表に出てきている。昨日は小林さんにあいさつにきた小山さんに、合唱団にちょっと音を聴かせてあげて・・と言うので合唱団の前に小山さんが現れたのだが、その反応の良さは来週に向けて集中してきている気持ちが良く現れていて気持ちが良かった。
こういう、心の中で何かが変わってきたように感じる事も芸術の力かも知れない。





アリオスオープン

2008年04月09日 | いわき
いわき芸術文化交流館アリオスが今日無事にオープンしました。
といっても、ずいぶん前からプレイベントのあらしでしたから、大感動と言うほどではないけれども、今日は、能の高砂の公演があり、そのあとで式典。あいさつのあと、大石支配人が「アリオスはこうします・・」という宣言のような話しをして(その中で良い組織は他所者、出戻り、地元の人が一緒に流通良くいる組織であるということも言って)、最後に谷川俊太郎さんの朗読。
彼は、昨秋に、ワークショップのようにしてアリオスのメンバーと対話をした。約2時間ほど。みんなが勝手なことを言ったらしいが(私は居なかった、残念)、それを聴いて、一つの思い言葉よりもいろいろな見方の方が良いのではないかと思ったそうです。それで4つの詩による「組詩」をつくった、といっていました。
僕は、それがそれぞれの人の中で勝手に発酵して、その人にとって意味のある言葉になることを本当に望んでいて、詩を聴きながら、そんなあり方を思いつつ、ちょっと涙してしまいました。
しかし、さすがは詩人です。多分私には100年かけても出てこないであろう言葉の力があります。来場していた人もそのことを感じてくれたならば最高です。

あと2日

2008年04月06日 | いわき
4月になった途端に風邪をひき(久しぶり)、ずっと調子が悪い。具合が悪そうにしていると、本当にみんなが心配してくれる。多分、忙しすぎて死ぬのではないかと思われているのだろう。確かに、体力で風邪をはねのけるには少し草臥れているかも知れないが・・。

いわきも桜が咲き始めた。今年は昨年よりも少し早い。全体に春の明るさがこぼれてきた気がする。北東北のほどではないが、東京に比べると春が明るさとともにやってくる感じが明瞭なのは明らかである。駅周辺の商店街にも祝いわきアリオスオープンの幟が飾られて、何かを始めるには良い時期である。日本の一年が4月から始まる理由の一端であるかも知れぬ。

いわきアリオスのオープンまであと2日になった。今日は日曜なのだが、その準備と平行してこの3日間は月末に行う文化協会のフェスティヴァルの各団体とのうち合わせもあり、8日の式典のあとには能の公演もあるので、舞台スタッフの忙しさは頂点である。
コバケンの第九公演もあと2週間。今日もこれからその練習である。だんだんと気合いが入ってきているが、来週マエストロが来て、仕上げの様子を見てもらうまで、いろいろと心配な事もある。何しろ相手はNHK交響楽団だし、マエストロは、気合いを入れるために厳しいことを言うのだろうなあ、きっと。


トロンボーン奏者の涙

2008年04月01日 | 徒然
我田引水風だが、トリトンアーツネットワークの名物企画に育児支援コンサートというのがある。前半は、小さな子どもは年齢別にスタジオに分かれ、サポーターが子供を預かる。時間になると、演奏家が現れて、音楽を聴かせてくれたり楽器に触らせてくれたり・・
おとなはその間にホールでクラシックのコンサートを聴く。30分程度だけれど、子どもから離れてゆっくりと聴ける音楽は、自分のなかに何かを呼び起こしてくれるものだ。
後半は、子どもと一緒にホールで音楽を聴く。ここでは、子どもは本格的な室内楽をまず聴くことになる。そろそろ飽きるかな、というときに部面は変わって、絵本と音楽と語りによる「音楽絵本=クラシック版」となる。今年は「おふろだいすき」というほんわかとした絵本。
絵本の音楽の構成は、今年はピアノの中川賢一氏に頼み、金管5重奏(BUZZ FIVE)との演奏をお願いした。中川君曰く、「金管とピアノというのはなかなか難しかったが、難しい方が闘志が湧く」。そのせいかどうか分からないが、語りの大森智子(本来はソプラノ歌手)とともに、非常に楽しい舞台を創り上げた。
前半のスタジオには金管の4人が友人や弟子を連れて参加して、子どもの相手をした。ホールではトランペットと中川君の共演。

終演後、いつものように高揚して周りがちょっと引いてしまうくらいの中川君の大盛り上がりが炸裂。これはちょっとサポーターには見せにくいよなあ・・などと思いつつ、中川君をタクシーに乗せ、その後トロンボーンのKさんとディレクターとでもう一杯飲んだ。
その話の中でKさんがこんな話をしてくれた。「前に長崎(島原)に行ったとき、ちょうど長崎でトロンボーンをやっている少年が自殺した。自分がそばまで行っていて、子ども達と一緒に演奏したりもしていたそのときに、自殺のニュースがあったのは本当にショックだった。もし自分の演奏を聴くか一緒に何かをやっていればそうならなかったような気がしてとても悔しかった」。
その島原の公演には私も居たはずだけれどあんまり記憶がない。Kさんはもう2年近く前のそのことをおもいだして残念そうに涙を拭いた。それを見て、4年前に始めてバズファイヴを育児支援コンサートで取りあげたときからの彼らの大きな成長を感じて、とても心が動いた。