児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

愛知県幸田町のアウトリーチ環境整備事業

2009年12月26日 | 徒然
幸田町のアウトリーチ環境整備事業。規模からいうと名称はちょっと大げさかもしれないのだけれど、町内6校の小学校に行ってもらう人を中京圏の演奏家に声をかけてオーディションで選抜し、研修して送り出す・・という事業。幸田の会館は小学校との関係がかなり良い状態になっていて、初めから行くところがほぼ決まっているのである意味ではわかりやすい。
前回は3年前にオーディションをしたのだけれど、比較的良い演奏家が集まった。そのあたりは中京圏の強いところだろう。弦楽器も管楽器も良い先生が来て指導などの活動をしているみたいだ。サックスの田中くんも「サックスも名古屋は盛り上がってますよ」と言っていたので、その意味でもこういう活動に繋がりやすいとも言えるだろう。
今回は金管5重奏とクラリネット四重奏。どちらも演奏は悪くない。金管のトランペット奏者は今年の音コン一位である。2月に小学校2年生のところに行って貰うのだけれど、そのための研修を今週の初めに2日間行った。
今回は私だけでなく楠瀬さんがいたので、初めにプログラムの作り方についての基本的な考え方を2時間ほどかけて話をしたあと、二組に分かれてプログラム作りをしていった。いわゆるミニフォーラム風。初日2時間、2日目2時間半ほどの話し合いは、人によってやり方は違うけれど、基本は「演奏家は何でこの曲を聴いてもらいたいのか」と言うことを突き詰めていく作業。そして、そのことを伝えるのに効果的な話を探し、順序と言い方を考えて行く。音楽もアウトリーチプランも時間の流れとともにあるわけだから、順序はとても大切である。
最後に実際にお互いに聞き合う時間を作った(簡単なランスルーである)が、この2グループは熱心なだけでなく、どちらもいわゆる「筋が良い」と言えると思う。2月が楽しみ。

幸田町では11月に愛知県の会館の方向けの研修会でも話したのだけれど、そのとき実演してくれたのはアンサンブルシェリー(木管5重奏)。大人向けではあったけれどきっちりした構成で出来ていたのは、3年間の成果かしら?
そのときにも話したのだけれど、こういう事は一つの町ではなくもう少し大きな規模で政策化すべきだと思うのだ。県とかが本気でやると地元の演奏家との新しい関係が出来ると思うのだけれど・・・。アウトリーチは、未だ(と言うべきだろう)演奏家を連れて行く仕組みを作るだけではダメで、演奏家のそのノウハウを獲得してもらう仕組みを平行して作らないと行けないと思う。幸田は小さい町なのにその意味では立派だと思う。

尾道のノイス・恭子さん

2009年12月21日 | 徒然
尾道に行くのは今年何回目だろうか。尾道は良い街だ。8年くらい前に神辺から行ったのが初めてかもしれないけれど、尾道は町歩きにその良さはあるように思う。それに食べ物がおいしい。
とはいえ、合併した尾道市は北の御調から南の瀬戸田まで、車でも1時間以上かかる広さになったが、山から島まで変化に富む景色に出会えることにもなった。
今回は瀬戸田のベルカントホールで田中靖人と白石光隆のコンサート。ベルカントホールはもう20年くらいのつきあいであるけれど、コンサートは久しぶりである。このホールは一応演劇などもできることになっているけれど、音響的にとてもリッチな音のする会場でありアコースティックな響きが美しい。舞台から見ると正面にロビーから上がる階段が見えるのがちょっと・・・というところはあるし、最近の近代的な会館から見ると不備がないわけではないけれども、なんか懐かしさがあるので好きな会館の一つである。
今回、田中、白石の二人が10月に訪問した因北小学校で見つけたドイツリートの楽譜の山がきっかけで共演が実現したのは、尾道に住むノイス恭子さん。学校でリートを一曲合わせ手演奏してみて白石君が、一緒にやろうと声をかけて実現した共演である。2000年の音活の時に彦根のために編曲してもらった2曲のソプラノとサックスとピアノのための曲が、今回久しぶりに日の目を見た。
京都女子大からドイツに留学して帰国してからも学校で教えながら演奏活動もやってきた(ドイツ人のご主人も全面的に今回の出演を後押ししてくれたみたい)。
こういう出会いとかを大事にするのはこの二人の不思議な傾向で、今のように全部がシステム的に決まっていく今のプロデューススタイルから見ると不思議かもしれないけれど、私もこういうのは案外好きなのである。
演奏したのはメンデルスゾーンのアリア「イエルサレム」(リートソロ)と踊り明かそう、そしてアンコールにムーンリバー。ポピュラー系の曲はちょっと音域が低くて大変だったかもしれないけれど、雰囲気の良いコンサートになって良かった。
写真は公演後に3人での写真。

リベンジの広島

2009年12月18日 | 徒然
田村緑さんが7月に大雨で休校になりいけなかった広島の船越小学校。12月11日、今回コンサートのついでに一日早く広島入りして6年1組と3組のためにアウトリーチをすることになった。7月は休校そのものよりも、急にできなくなって気持ちの整理が必要だったみたいだけれど、今年はインフルエンザとかいくつか似た経験をしたということで、ずいぶんタフになったと言っていた。そういうのも演奏家という職業では重要なメンタリティかもしれない。まあ、こちらも今までほとんど経験が無かったのでそれも不思議なくらいだけれど(何しろ、今年は100回を超すアウトリーチにつきあったことになるので・・・)。
田村さんのアウトリーチはピアノの秘密コーナーとか参加型のものが多く採り入れられているので、実はここでは書けても、フィールドノートにしにくいし、ヴィデオでも伝わらない部分が多い(ピアノの周りに集まって貰うので撮り切れないというのが現状なのだけれど)。何しろ曲は4曲しかやらないのである。現場にいるとなぜ子供がすっと巻き込まれていくのか分かるし、みんなが音楽を好きになるのが分かるが、やはり不思議でもある。相変わらず、時間が少し伸び気味なのもかわらないけれど。
日曜日のコンサートは,地元の「あきくら」の方たちと共演を含むプログラム。不十分なこともあるけれど、なかなかおもしろいコンサートだったし、500人を超えるお客様も喜んでいたみたいだ。

写真は、チェルカスキーがレコーディングしていた音戸の舟歌(奥村一編曲)を地元の奏者(松尾さん)と子供に波の音を出して貰いながら演奏。


クァルテット・エクセルシオと絵本

2009年12月06日 | 各地にて
尾道のコミュニティ活動の今年の目玉の一つであるエクの絵本プロジェクトは、図書館司書出身の尾道の担当者が、初めからいろいろと動いて実現した企画である。話し合いながら決めた二つの絵本。図書館での読み聞かせの一環として生音楽付きでおこなった。尾道市の北の端から南の端までの縦断的企画である。
エクはいつものように役割分担をして専門化するよりも、個人個人がオールラウンドの力をつけていくことを意識しているので、今回の話の担当はチェロの大友氏、構造的な作りの手法がもう少し身につくと良いのだけれど、子どもを引きつけ火をつける力はやはり並のものではない。
絵本の曲の選定はそれぞれ大友氏と山田さんが担当した。二人の個性がなかなか良く出た選曲の仕方だと思う。
絵本無しで学校でのアウトリーチも1回あったが、演奏の安定感の良さはやはり常設の強みだろう。インフルエンザで数日前に急に変更になった小学校(尾道市瀬戸田の南小全校60名ほど)だったのだけれど、学校の方も急にもかかわらずきちんと対応してくれて、気持ちの良い会だった。絵本のほうは前に田中+白石と一緒にやった読み手が今回も来てくれて7年ぶりの再会。そのときはカサ敬子さんの「とらくんとぼく」だったけれど、それは彼女も気に入ってあちこちの読み聞かせで使っているとのこと。今回はおなじカザ敬子さんの「My lucky day」という絵本で、ずいぶん読み方に変化があってとても面白かった。もうひとつの「よあけ」は湖の夜明けの空気感が感じられるような選曲が良い感じだった。山の湖に日が入ってきて色がわっと明るく変わるところなどが印象的な絵なのだけれど、やや抽象的、小さい子どもがついてこられるか少し心配したが大丈夫だったようだ。とはいえ、あれは大人の方が味わえるような気もする。
写真は、南小学校のエクセルシオ

邦楽モデル事業、手法開発研修会(フォーラム事業邦楽版)

2009年12月05日 | 徒然
地域創造の邦楽モデル事業(アウトリーチフォーラム事業邦楽版)の手法開発研修会(まあ、合宿して良いアウトリーチが組めるように一緒に考えていこうね、という合宿と思って頂くのが良いかな)が火曜から木曜までの3日間、島根県の益田グラントワで行われた。
この事業、邦楽の情報が全然足りないので、先ず仕組み作りのところで最初からおたおたしたわけだけれども、まあ、演奏家が決まり、集まって実際のことをし始めればクラシックもそれほど変わらないと思う。もちろん曲を知らないという意味では暗中模索ではあるけれど、クラシックだって演奏家の方がよほど曲についてはたくさん知っているわけで、それをどう聞きだしていくか、とそれをどのように子どもに分かるように伝えていくか、と言うことはそれほど大きな違いはない、と思っている。知りすぎている方が予断が多くて危ないという考え方すらあるとおもおう。
今回は、音活経験者の片岡リサさんを一応先輩格として、2組のグループで3日間の合宿形式で組み立てを行った。
邦楽の場合クラシック以上に、市町村では単に切符が売れないだろう、と言う以上に難しさがあるように思えるので、県と市町村の会館での協働事業とするためにどうするかはそれなりに大きな課題だったけれども、結局アウトリーチ+市町村の会館でのワークショップ+県の会館グラントワでのガラコンサート、と言う形に落ち着いた。これが最高だとも言えないけれども、まあ意味のある形になったとは言えると思う。邦楽にとって楽器に触ることの意味は大きいし、楽器の手配はそれなりに苦労するけれども、今回は地元できちんと借りることができたのは大きかったと思う。グラントワが邦楽の事業を日本音楽集団との提携で行っていたことが大きな要素だった。
生田流(沢井)と山田流の方達だったけれど、有り難いことにみんな五線譜でも行けると言うことも分かったし、いろいろな面で交流が可能だったのは本当にラッキーだったのか、又は今やそんなことは当たり前なのか良くわからない。でも、宮城の片岡さんと3組の全員合奏を1月のコンサートの最後に出来る事になったのでほっと一安心である。合奏曲はグラントワ館長山崎さんの提案で寺島陸也氏の地元にちなんだ合唱曲を邦楽と合唱版に編曲を寺島氏にお願い出来る事になった。それ以外も山崎さんにはいろいろと助けて頂き感謝である。最初をこの場所にして良かった。
写真は合宿最後のランスルーの模様(11.26)