児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

いわきアリオスによせて

2008年03月31日 | いわき
 いわきの新しいホール「いわき芸術文化交流館アリオス」は、1700席の大ホール、500席の中劇場、200席の小ホール、200席の小劇場、ほかにリハーサル室、スタジオなどが一度に出来る大きな会館である。
 こういう総合的なところのコンセプトはなかなか難しい。一つ一つの企画を成功させていくことは出来るかも知れないけれど、全体をどうブランディングするのかが問題になるのである。それにここにはそれぞれのジャンルでキャリア豊かなプロデューサーが何人もいて、それぞれが、自分のスタイルや成功体験、プライドを持って集まってきている。
 だからこそその中心にあるのは抽象的だけれど、それぞれの人たちをその気にさせる言葉でなければならないし、それが、いわきと言う場所に生活の一部分を託している人たちの為に全員が一緒につくしていかねばならない。
 芸術というのは、結局、どんな社会でも、それを形成している人々が同じ方向を向き、同じ事を考えているような社会を恐怖することがスタートラインにあると思う。人との違いを受入れつつ孤立化していかないということは難しいが、それを実現する目標を持ってアリオスという社会を考えたとき、たどり着くのはやはり言葉だ。

 会館がそのオープニングのために、というよりも、そのホールに込める心のために詩を書いてもらう・・、というのは多分初めてだと思うけれど、それが、不思議な縁で谷川俊太郎さんに頼むことが出来たのは本当に本当に僥倖といっても良い神の配剤だった。
ホールの画竜点睛にというお願いをされた谷川俊太郎さんも、その書きようには悩まれたのではないかと思うけれど、彼のつよいけれども柔軟で優しい言葉が、スタッフの気持ちに刺さって、それぞれが自分流にアリオスに活かしていくととても良い雰囲気のホールになると思うのだけれど。
 「アリオスに寄せて」4編の詩のなかで、3月31日に刷り上がってきたアリオスペーパーには、谷川さんの自宅そばの公園での写真とともに以下の詩が印刷されている。ありがとうございました。


ハコのうた

からっぽはすばらしい
なんでも いれることができるから
でもいつまでも ためておかない
またからっぽにして ハコはまつ
あたらしいもの たのしいもの
ハコはいきて こきゅうしている

ハコのなかで ひとはうたう
ハコのなかで ひとはかたる
ハコのなかで ひとはおどる
ハコのなかは そととはちがう
わくわくどきどきはらはらさせる
ハコはいきて こきゅうしている

長崎文化さるくの会議

2008年03月30日 | 徒然
28日は早朝に起きて長崎へ行く。
市長に文化さるく有識者会議のまとめの提出。この話、文化なのか芸術なのか観光なのか、焦点がやや絞りきれないのだけれど、さるく博の成果をもっと芸術文化分野にも拡げられないか・・というのが目標らしい。とはいえ、最近はやりの「創造都市」と同じ発想ではないと思う。アドヴァイザーというあんまりはっきりしないことをもう5年以上もやっているのだけれど、新しい市長とあうのは始めて。
「自分の町の観光的資源を、市民が発見し市民が外部の人に紹介する」というさるく博のコンセプトはなかなか素晴らしいと思うのだけれど、一流の観光資源がふんだんにあるのと違って、芸術文化分野では、その前にいろいろとやらないといけないことがありそうだ。
一つ一つの事については紙に落としてあるわけで、具体的な個々のことは出来ることを取り組んでいけばいいと思うのだけれど、それ以外にもいくつかお話しした。
芸術文化的資源を実行する人ではなく語り紹介する人をきちんと作ること。
芸術分野は特にスタンダードが全国の人にあるので、やはりそこを高めないと行けないだろう。
芸術文化の振興を目的とし、そのエキスポートも採り入れた機関を作ること。まだ中心施設のブリックホールが指定管理ではなく直営であることを考えると、財団という形式でなくても機関の設立は必要だろう。
と言うようなことを申し上げる。

これからどうなっていくかは分からないけれど、まあすでに20年度に少しコーディネート人材の育成に手をつけるつもりで動いているので、楽しみではある。




いわきのプレオープン(アリオスで乾杯)

2008年03月22日 | いわき
いわきアリオスは4月8日にオープンするのだが、3年ほど続けてきたダイアモンドプロジェクト(イベント大賞も取った市民企画)の人たちに、プレオープンのアープンハウスを企画してもらおうと言うことになって、市民が今日明日といろいろとイベントを仕掛けている。ありがたいことに今日は全国的に天気が良く、いわきも春らしい良い天気である。朝10時から人が続々と来ている。チケットカウンターも人が切れるということがないような状態。演歌からクラシック、演劇までいろいろと行われるアリオスでの企画(主催に限らないが)が着実に売れている。何度も言うけれども市民の期待感は高い。
昨年の今頃はちょうど旧の市民会館が取り壊される直前で、市民会館さよなら企画をやっていたのだが早いものである。
目玉のイベントは、今日はBBBBのワークショップとコンサート、明日は仮屋崎省吾のフラワーデモンストレーション&トーク。
面白いのは、災害時の模擬体験を行うこと。コンサートの途中で、舞台と客席の居電気が消えて・・という事を実際に体験してもらおうというもの。
市民が中心になっているのだけれど、スタッフも総出でのイベントである。



出雲市での浜まゆみさん

2008年03月22日 | 各地にて
出雲市での浜まゆみさんのアウトリーチに付き合った。浜さんは久しぶりである。
彼女のアウトリーチは、あれだけからだが小さいのに、天性の明るさと元気さが聴き手を元気にするのがよくわかる。
5年前にやはり出雲でやったのを思い出した。今回も出雲市科学館でサイエンスショーとのドッキング企画を行ったが、ますますいろいろと工夫をして来ているのがよくわかる進行。それと、ピアノの羽田さん(旧姓大橋さん)が、積極的にアウトリーチに参加してきているのが大きく変わった点。ピアノの説明などなかなか堂に入ったものだった。
中川君のピンポン球はすでに有名であるが、彼女はピンポン球ではなく発泡スチロールのサイズの違った球を利用して弦の振動を伝えていた。こっちの方が弾ける様子がわかるとともに、ピンポンよりもずっと楽であることがよくわかった。小さい玉はピアノの穴に入り込んでしまうので、塞がなくてはいけないことを除けばこちらの方がやりやすいのではないか。力もいらない感じがするし・・・。(ピンポンでは翌日の授産施設で浜さんがマリンバで使って、鍵盤の振動を伝えていたのが印象的)
アウトリーチの面白さを感じる演奏家たちが、常に自分の周りにあることをそれに結びつけて考えている事がよくわかった。こういうのも大事なことに違いない。
コンサートでは、5年前に田中白石組と絵本の読み聞かせをやってくださった藤原さんとまたお会いした。今回は動物の謝肉祭の語り。今日いわきでダイアモンドプロジェクトの企画があるために本番には付き合えなかったのだが、昨日夕方ホールでのリハーサルを聞いて独特の語り口が懐かしかった。

鹿屋の早稲田桜子

2008年03月16日 | 各地にて
鹿屋市は鹿児島県の大隅半島の真ん中にある。市街はちょっと谷間のようになっている。ちょっと不便に感じるのは、電車がなく(駅すぱーとで探そうとすると鹿屋って出てこない)バスでしか入れないからだけれど、車社会と考えればそれほどではないのだろう。鹿屋の中心地に約1年前リナシティという複合施設が出来た。中心地活性化の一環だと思うけれど、一応公民館的な機能を持っていて、その他にスーパーマーケットや、銀行郵便局、映画館、デイケアの施設なども入っている。ちょっと珍しいかも。その中に400席のホールがある。少し手狭な感じはあるのと、2列目から後ろがずっと傾斜になっていて、ちょっと演劇劇場風の客席のすロープなのだが、音響的には完全に音楽ホール。響きもちょっと軽い感じはあるがクリアで豊かな響きがある良いホールになっていると思う。運営は第3セクターだけれど、4年ほど前に地域創造のステージラボ沖縄に研修に来ている人がいて、知り合った。今回は音楽活性化事業の一環で早稲田桜子さんとピアノの田口真理子さんの演奏会があった。
一昨日には小学校に行き(全校生徒20名)、市民のオケの弦楽器セクションとの交流があり、昨日の夜にコンサート。400席の客席に350名ほど入った。
早稲田さんは、非常に良いコンサートをした。それを引きだしたのはピアノの田口さんでもあるけれど、第3セクター(株)まちづくり鹿屋のスタッフの情熱に負うところが大である。訪れる人に対するホスピタリティがとてもよく、事業にやや前のめりになって一緒に創っていこうという熱い姿勢が気持ちが良いのだ。音活のような4泊5日のスケジュールでの滞在型企画だと、特にその効果はあると思う。スタッフが演奏家の気持ちを引きだして、聴き手にもその雰囲気が伝わっていくのだろう。
学校でのアクティビティはいずれフィールドノートで・・

アウトリーチフォーラム

2008年03月12日 | アウトリーチ
いわきの音響テストのあとは、音活のコーディネーターの集まりがあって東京に一泊、またいわき。3月7日に芸術見本市のシンポジウムに出て、トリトンに行き、その足で富山。富山はアウトリーチフォーラムの最後のガラコンサートである。延々と2ヶ月にわたっての企画であるから、それなりに大変だし、音活に比べても演奏家にかけるエネルギーは大きい。その分まあ充実もしているのだけれど、3月9日のガラコンサートのあとはかなりへたばった感じがあり、それでも帰京して税金をやり、今日からいわき。
アウトリーチフォーラムの最後のコンサートは最初の頃の雰囲気とは違う事が2つ。一つは話しが上手くなったというか、話す事へのためらいがかなり希薄になった。これは企画の上ではとても良いことなのだけれど、でも、話すことのストレスが解放されただけでは、中味の保証はないのである。そこのところが難しい。大丈夫になったことでやっとスタートラインなのだけれど・・・。
もう一つは音楽への集中度が増したこと。これは話すストレスから解放されて音楽に集中できている、と言うのが正しいだろう。各団体ともきっちりと仕上げようという意志が明確にあって安心した。
コンサートは予想通り、30分くらい延びて、でもとても楽しく終わった。
彼らが、いずれ音活のオーディションを受けてくれる事を期待している(こういう活動の面白さ・・ではなくて意義を感じて)






いわきのチケット発売と音響テストコンサート

2008年03月03日 | いわき
いわきのピアノ開き(小山実稚恵)のコンサートの発売があった。実は発売がチケットシステム等の関係で遅れて3月1日からになったのだが、大ホールと言うこともあり、いわきでどれだけの方が聴きに来てくれるか、まだまだ不安いっぱいである。幸にしてかなり出足はよく、昨日今日で900枚くらいまで伸びたのでまあほっとしたというのが本音。来週は第九の残りのチケットの発売がある。多分そうそうに売れてしまうので、そのあとは買えない方への対応に追われる事になりそうである。それについてはいろいろとアイデアが市民の方からも出てきて居るみたいだけれど、まあ単純に売り切れで仕方がないのかも知れない。
今日はいわきアリオス音響テストコンサートと銘打って、満席での音響と運営のテストランをおこなった。音響テストだと本当はきちんとした測定とかをすることが多いのだけれど、今回はそれは無し(その方がお客さんにとっては幸福だろう)。アンケートを沢山集めて、ホールの音響や温度管理などに参考にするつもりなのだけれど、沢山集まったアンケートの束を見て「これって誰がやるんだ」に近い。多忙さを考えるとそれなりに大変だろう。でも、1550人ほどの人が普通のコンサート同じように来てくれたので、駐車場のこと、人の流れのこと、対応の仕方など何となく把握は出来たみたいだ。発売と重なってスタッフはてんてこ舞いだったが、市民の期待感とかが伝わってきて良いコンサートになった。演奏をしてくれたいわき交響楽団にも感謝。

2月18日から月末まで

2008年03月03日 | 徒然
長崎のガラコンサートのあと、音活のアーチスト研修をやり、いわきに行き、帰ってきて21日にTANの豊海小学校5回目のアウトリーチプログラムを第一生命ホールでやり、そのまま630コンサート。翌朝北九州のアウトリーチガラコンのために北九州へ、帰ってきて半日休みそのあと幸田の地元演奏家のアウトリーチ、富山南砺市のアウトリーチフォーラム、いわきの音響テストコンサート。
まあ、ずいぶん動いているなあ。
21日の豊海小学校へのアウトリーチ(写真)。5回目はホールに呼んで行うことになった。同じ子ども達に5回アウトリーチを仕掛けるのであるから、まあホールの音を聴いてもらうのも大事かも知れない。
北九州のガラコンは、高橋多佳子+礒絵里子+長谷部一郎のトリオがショスタコーヴィチのトリオで非常に良い演奏をした。聴いていた九響の今村さんはむくむくとベートーヴェンのトリプルコンチェルトをやりたくなったそうな。地元の二組の室内楽グループとは2年間で私も勉強が出来た。続けていってくれると嬉しいのだけれど。
愛知県幸田町のアウトリーチ事業も、地元の愛知室内オケのメンバーによるSQと花音(歌とヴァイオリンとピアノの変則的なグループ)がどちらもかなり手に入った感じの進行を見せてくれてなかなか良かったのではないか。その点、富山のトリオエトワールの方はまだたどたどしい感じではある。
2月26日は相模原に行って、相模大野のグリーンホールや橋本の杜のホールはしもとなどを管理運営する相模原市民文化財団の職員の方と音楽家連盟の方に話しをする。タイアップしてアウトリーチ活動に取り組もうと思っているようだ。相模原市には東京のオーケストラのメンバーを初め多くの音楽家が住んでいる。連盟は演奏家をオーディションをして登録(全ての楽器かどうかわからないが・・)し、現在は160名ほどの方がいるそうである。今回を含め3回話しをする。次回は演奏家向けでアウトリーチプログラムの具体例を話す。最終回は財団の人にアウトリーチの作り方。これはTANの桜井さんにも話しをしてもらう予定。
2月27日からの富山のアウトリーチフォーラム。ピアノトリオ(トリオ・エトワール)の2都市目は南砺市。ここは全国的にも有名ないくつかのものがある。合併前の8つの町の名前を聞くとそれなりに知っているかも知れない。たとえば城端の麦屋節、合掌造りの五箇山とこきりこ、北陸浄土真宗の中心井波(瑞泉寺)とそこで培われた木彫り、知る人ぞ知る福光のバット生産。パフォーミング系では今や全国的に知られた福野ヘリオスのスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドと言うイベントがある。そういった意味では文化的には宝庫の地域だと思うのだけれど、だからといってコンサート運営が楽なわけではない(に違いない)。
今回は3日間のアクティビティで、小学校3回、中学校1回、病院1回、コミュニティ1回という変化のある活動だった。小学校向けは射水で6回やってきたこともあり、やっと余裕が見える進行だったが、他はかなり緊張したようだ。まだ、話さないといけない話、と言う感じで追いかけている感じがある。中味を決めたあとは、普通に人と対峙して話す時と同じで良いので、自然に話せばいいのだけれどね。それよりも、話しの内容の流れを自分の意識と出来ればスムースになると思うのだけれど。
基本的にカード形式で話を作ってきたので、次はその話の繋ぎ方、内容の流れ、気持ちの流れなどに気が行くようになると全然楽になると思う。
でも、演奏家には大変だったけれど、もうこりごりと思うのでなく、子どもが喜ぶ事を楽しいと感じてくれれば嬉しい。それぞれソリストの能力のある人でもあるので1人が45分を仕切れるようになると良いのだけれど。