児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

小山実稚恵の協奏曲(いわきアリオス)

2010年04月29日 | いわき
3年半前、いわきの新しいホールのピアノ選びを誰に頼むか、という話になったときに一番先に思い浮かべたのが小山さんだった。彼女は東北生まれと言うこともあって盛岡市のホールのピアノ選びに何故かつきあったことがある。あれは何故そうなったのかよく覚えていないのだけれど、今は亡き盛岡の最上君が突然電話をしてきて、ピアノ選びにつきあって・・と言われたからだと思う。
小山さんとはそれほど親しかったわけではないけれど、まあ興味もあって一緒について行ったのだけれど、最上君に「ピアノはね、買ってからどう維持するかの方が大切なのよ」と何度も何度も言っていたことを思い出す。
今回は小山さんに頼んだけれど、今までいくつかの会館のピアノ選びをお願いすることがあった。カザルスホールは内田光子さんだったし、第一生命ホールでは佐古さんと仲道さんに一大づつ選んでもらうというやや離れ業のようなことをやった。岐阜のメルサホールは関与しなかったけれど、三鷹ではアヴォ・クユムジャン、考えてみれば、それだけの数、新しいホールに関与させてもらったことになる。まあありがたいことと言えば言えるが、良いことなのかどうか・・・
いずれにしろ、ホールのピアノを選ぶと言うことは、単に良いピアノを選択する、という単純なものではない。まず何台もの中から調整されたピアノ数台がそこにあって、その中からしか選べない(というか、調整されていないピアノを選ぶことに意味はない)。それに、ピアノは少なくとも5年程度は変わっていくものだし、季節や状態、使った人の個性などによっても変化していくものだ。その中で、これが良いだろうというのは、小さい子供の才能を見抜くような一種の感性(感)がはたらかないといけないのである。
ピアノ選びがそのような実に人間的な営みであるとすれば、お願いする方も、ホールの個性(これも頼む段階でははっきりしないことも多いわけだ)や演奏家の個性までも勘定に入れてお願いするのであるし、その後のいろいろな演奏家とのつきあい方もある程度思い浮かべておく必要もあるのだ。その意味では、いわきアリオスのスタインウェイは比較的幸福な出会いができて、小山さん本人も私たちも気に入っているという状態が続いている。
アーチストが入れ込んでくれるというのはすばらしい事態であって、今回小山さんもピアノとの再会を楽しみにしてくれていたようだ。
小山さんの強い希望で実現したコンチェルトだけれど、指揮の沼尻竜典さんとトーキョー・モーツアルト・プレイヤーのサポートも良くて、良いコンサートになった。
ショパンの1番とブラームスの2番という2曲の選択はかなり重量級のコンサートだと思うけれど、小山さんが楽しんで弾いてくれていたようなのでまずは満足である。
演奏も後半に聴いたブラームスの演奏は気合いの乗った力演で、お客の気持ちを一気に、ひとまとめにして持って行くエネルギーに満ちていた。それは、今回のCDへのサイン会への列が表していたように思う
(写真はゲネプロ)

綾部

2010年04月23日 | 徒然
京都府でのアウトリーチフォーラムの準備打合せで綾部市に行ってきた。あいにくの雨。
「綾部は川があるので霧の発生が多い霧の町」だそうで、確かに今朝も霧がずいぶんと出ていた。これも風情であるけれど、住んでいる人は大変かもしれない。
でも、便利とか盛んとかいうのではないけれど落ち着いていて好きなタイプの町である。夕食に入った居酒屋にあった日本酒や焼酎もなかなか気が利いている。ここのご主人の趣味が判るような選択なのだろう。
今回は6月はじめに行く小学校の下見など。ここの先生はどの方も熱心。学校の対応は先生の個人差もあるけれども町によっても違う。ここは綾部の担当の方の根回しがとても良いのだと思うが、話をしていてとても気持ちがよい。「子供をどんどん揺さぶってほしい」という先生からの希望があったりして、こういう明確な言葉が出てくるのはうれしくなるだけではなく、きっと本番も期待できると思う。


ことしのおんかつ全体研修会

2010年04月17日 | 徒然
昨日までの3日間、今年の音活の研修会があって、北は八郎潟から南は玖珠までの20団体の方が東京に集まった。最近の傾向はホールの担当者として来る方々の平均年齢が高くなっていること、男性が増えていることかな。ことしも、40代後半から50代という方が半分くらいいて、ちょっとびっくり。その理由は正確には判らないのだけれど、一つには、会館に配置される人員が減っていること、たくさんの職員を採用した時代の人たちが高齢化してきたことなどもありそうな気がする。
実は、(自分を棚に上げて言うのは憚られるのだけれど)男性の高年齢の方というのはおんかつでの過去の経験では、いろいろな人との調整をしつつ演奏家や地域創造にも配慮していく、そして事業はきちんとする、という四方八方にエネルギーを分散させつつ総体としてのエネルギーを保つ、という人は多いとは言えなかったように思う。ある部分はとても理解があるのだけれど、ある部分は妙にかたくなだったりとか・・・。それでちょっと心配をしていたのだけれど、今年集まった人たちは、町を何とかしようと思っている感じがあってとても積極的に音活に取り組もうとしている人が多かったように思う。うれしい誤算。最後に、こんなことをしてみたいと言うことを全員に発表してもらったのだけれど、久しぶりにわくわくするような町がいくつもあって、とても楽しみになった。今後の研修会の事例発表になるような場所がいくつも生まれてくることを期待したいと思う。
コーディネーターもそれに答える必要があるだろう。

演奏家のプレゼンテーションは、みんな小手先を使わないある意味では正攻法のプレゼンで、聴いてる人はどう思ったかな・・・
98年度の第一回目の実施団体だった某ホールの人が、翌日にメールをくれた。
「登場する音楽家が次々に、地域だとか、聴く人との音楽の共有だとか、お客様と互いに刺激しあうクロストークの関係だとかということを語っていらっしゃいましたね。かつては、『私は弾く人、お客様は聴く人』という明確な意識区分を音楽家の側がしていることを感じることが多かったのですが・・・。このような意識変化には、間違いなく音活の歴史が大きく作用していると思い、ああ、時間が経ったのだなあと思いました。」
なるほど。毎年見ていると変化というのは明晰には見にくいものだ。でも時間の感覚はとても大切だと思う。外山滋比古がライフワークの思想という本で書いているけれども、人間でも企画や事業でも、有限なライフワークという感覚が大切だと思い始めたのは、こっちも歳をとったと言うことかな。



ラポルト珠洲

2010年04月11日 | 徒然
初めて能登のほうに足を向けたのだけれど、前から行かねばね、と言っていたラポルト珠洲の担当だった津枝さんが3月で辞めてしまったので、せっかくなのにむなしく会館前で写真を撮ってきたのでした。大きくない会館でこういうように一人しか顔が見えない場所は、時々こういうことがある。まあ、取り立てて困るような仕事上の問題はないのだけれど、地域創造の音活を手伝ってもらったりした人だけに、やはり寂しいものがある。しかし、能登は深い(遠い)と言うことがよくわかった。約400キロメートルのロングドライブでした。能登空港は一日2便しか入っていないし、経営的には確かにきついと思うけれども、富山からも小松からも遠いこの立地は確かに大きな魅力なのだろうと思う。実際、途中までの場所にはそれほど大きな魅力が無くそこに至る道は行きにくいことは間違いない。輪島付近とかは大変魅力的な場所でした。

4月

2010年04月04日 | 徒然
4月は比較的時間がある時期である。ここ数年特にその傾向が強くなってきたのは公立の会館とのつきあいが多くなってきたので当然と言えばいえないこともないけれど、今年はまわりに比較的異動が多くて、22年度がどうなっていくのか気になるスタートである。
4月2日は誕生日だったのだけれど、昨日3日にはTANが毎年やっている築島さんぽの会との連携で行う「さいたさいた桜が咲いたコンサート」があってずいぶん多くの人からおめでとうと言われたし、夜は持ち寄りパーティがあったので久しぶりに会う人もずいぶんいて懐かしかった。カザルスホールの仕事での関係、音楽事務所の関係、トリトンアーツネットワークのサポーターや職員たち、チェロ協会の関係などなど、とりあえず今やっている仕事とは直接関係はないとはいえ、祝っていただけたのは本当にうれしい。ありがとうございました。
今週は一年ぶりに私的な旅行があってことしは金沢の方にいく。

いわきは今年4年目に入る(会館としてはオープン3年目のシーズン)ので、5年契約の身分としては、あと2年でどうしていくのか、と言うことがある。会館としてはプレ事業からはじめて大ホールのオープン、昨年のグランドオープンと3年間で一定の成果と方向は出せたと思うけれども、まだ、いくつかの部分ではこのままではいかないだろうと思うこともある。いわきは福島一の人口ではあるが山に囲まれているので狭いエリアを相手にしているという感じもあるし、不景気の影響は東京以上に強く出てきているように見受けられるので、そのことをきちんと考えていかないといけないだろう。
ただ、アリオスは市民の期待を背負って広い守備範囲を持たないといけないということもあるけれども、今年からのアリオスは「生活支援型のアートセンター」という位置づけを、より明確にしようという意識ははっきりさある。言葉では地域の会館として当たり前ではあるけれども、そこに各ジャンルに専門的な知識能力を持つスタッフを配置した会館として、他所には出来ない何が出来るのか・・ということを考えていくのが必要だろう。

それはさておき、いわきのGWは小山実稚恵さんのコンチェルトの夕べに(29日)始まるけれども、5月1,2日と小さなフェスティヴァルを行う。N響メンバーの室内楽とかもあるし、音楽版のかえっこバザールもやる。気楽に顔を出せるものが多いので、安い高速道路を使って来ていただくのもいいかも。

写真は桜が咲いたコンサートの様子。今年はハープでした。