児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

菅家奈津子さんのアウトリーチ

2013年06月30日 | 徒然
いわきでのアウトリーチ。6月18日からはメゾソプラノの菅家奈津子さん。菅家さんとはおんかつの宮古島が最初の出会いだけれど、その頃はアウトリーチで何をやるかの答えを自分の中に見いだせないでいたかのように思えた。それでも声自体の魅力があるので毎年何カ所かでおんかつ関係のホールに行って活動していく中で自分のテーマのようなものを見つけ出していったようで、最近の「音楽の力」シリーズはなかなかよい出来だと思う。音楽の力はだいたい一回のアクティビティでは時間的に4つくらい紹介するくらいなのだけれど、音楽の力自体はまだまだ色々と考えられるので、相手の年齢や状況に合わせて自在に変なが可能なのもアウトリーチにとっては向いた手法だと思う。今回も6回のアウトリーチのうち、小学校全校の小規模校から低学年、高学年と2回のところ、山の学校、海の学校といろいろな変化があり、その上学校の先生からのポジティブやネガティブな要望(先生は子供のことを最優先に考えるので「こういうことをして欲しい」というのも「こういう話はちょっと・・・」というのもあるわけです)にも臨機応変に反応し修正していけるのである。アウトリーチのあり方は演奏家のやりたい曲というものから組み立てていく方法もあってどれが正しいと言うことはないのだけれども、学校ごとに背景や状況が大きく違うアウトリーチでは、対応力という面では優れた組み立て方だと思う。
次はまた新しいプログラムを披露してもらいたいと思う。


ボロメオ、ベートーヴェンチクルスの最終回

2013年06月19日 | 徒然
カルミナの後に行ったサントリーホールでのボロメオのベートーヴェンチクルス最終回(第5夜)。
5回の最後にやっと聞きに行くことができたが、聴き手としてはかなり出遅れている感は否めなくて、すでにそこにある熱気のようなものを感じながら聴くことになった。カルミナの時に感じた客層の新しさと比べてこっちはかつての第一生命ホールの客層をぎゅっと集約したような雰囲気。ただしさすがに最終回でほぼ満席。どちらも好もしい感じだったけれども、サントリーホールの主催公演であるという意味はかなり大きいように思える。客層は同じなはずなのに一種の華やかさのようなものがある。さすがである。このベートーヴェンチクルスは今年で3回目なのだけれど、この室内楽フェスティヴァルの企画の背骨のようになって、その質感を保証している感じがある。アカデミーとベートーヴェンが2つの心棒になっていれば企画全体としては揺らぐことはないだろう。もちろん経済的な問題とかハードルはいくつもあるであろうが、少なくとも自分がしっている日本の室内楽のフェスティヴァルでは一番充実しているだろう。良い形で継続していくことを望む。
ボロメオは、作品132で始めるというかなり重い構成で最終日をスタートさせた。その後7楽章をアタッカで演奏する作品131、そして大フーガ付きの作品130。ほぼ3時間になるコンサートをものすごい緊張感で演奏した。しかしこの緊張感は少なくとも私にとっては、ニコラス・キッチンを正面から見て、彼の音楽に没入している様を見るだけでも心地の良い緊張感。聴く側も全く集中が途切れることがなく聴けたとおもう。音楽の経験ではよくあることとはいえ、このすごさはたぶん現場にいなければ理解できないだろう。どれも凄い演奏だったけれど、131の終楽章の追い込みなど、ロックのコンサートを聴くような爆発的な盛り上がりかたをした。
かつて、グリーンハウスが「昔はボザールトリオの演奏家では今のポップスのコンサートのように女の子がキャーキャー言っていた」という話をしてくれたことがある。ちょっと信じられないのだけれど、こういう演奏を聴いてしまうと、確かにそういうことはあるかもしれない、と思えるような経験。もったいないのでだれか音かDVDにしませんかねえ。

カルミナ・クアルテットのいま

2013年06月18日 | 徒然
いまシベリアの空焼けて朝もや森を包む・・・(流刑人の歌=ロシア民謡)
という懐かしい歌が聞こえてきたような気がした。
今回のカルミナ・クァルテットは1988年から数えて11回目の来日(だと思う)。第一生命ホールに約500名の聴衆。よく入ったなという印象。Wさんと話していたのだけれど、弦楽四重奏団がメジャーレーベルと契約し招聘する事務所と一緒に日本での客層を開拓していくというスタイルで紹介できた最後の弦楽四重奏団歌もしれない。招聘する事務所というのが彼らの場合にはカザルスホールだったというのが、ある意味良かったのか逆にリミッターとして働いたのかよくわからない。けれども、世に支配的だった弦楽四重奏や室内楽への常識を越えて、世界では変わりつつあった弦楽四重奏という音楽へのアプローチの本質的変化?の可能性が紹介されるという嚆矢になった団体の一つであることは間違いないと思う。それゆえ室内楽ファンの中にも好き嫌いは案外あったような気もする。
さて、カルミナはレパートリー作りにきわめて慎重、というかレパートリーが少ない団体である。それはいわゆる今風ではないかもしれない(彼らにベートーヴェンチクルスを頼むのはたぶん何十年早いか、彼らから別のアイデアが出てきそうな気がする(昔ボンでやったチクルスは5つの団体で全曲という構成で、そのディレクションがカルミナだったとおもう)。要は一つの作品をすべて舐め尽くしてしまうような彼らの曲への解釈の仕方があるのかもしれない。
しかし、今回の公演の前半で弾いたベートーヴェンのハープとショスタコーヴィチの第8番は、彼らにとって(少なくとも日本では)初めての演奏。両方とも未知な音がたくさん聞こえてくる個性的な演奏だと思ったけれど、ハープではいままでの彼らよりもロマン的な演奏のように聞こえた(マティアスに少しロマンティックな方向?と聞いたらそうでもないような顔をしていたけれど)。それはショスタコーヴィチでも同じ。整理が行き届いてクリアーな演奏と言うよりはもっと複雑になって行く感じがある。ああいう微妙なとこにつれていかれたあとに聞こえてくる歌はショスタコーヴィチの手法ではあるのだるけれども、ついほろっとしてしまうのは私の個人的問題でもあるかな。

後半のアメリカはあまりに自在で、危ない感じすらある。これが長く続けている四重奏団によく起こることのように壊れる方向でなく、ぎゅっと完成していったらまたすごいアメリカになるという予感に満ちた演奏ではあった。おそれいる芸。でもそれよりアンコールのハイドンのウイットがとんでもなく凄くて短時間だけれどもあとを引くような楽しみに満ちていた。

このあと、サントリーでのボロメオのチクルス最終回を聴くのはかなり体力(肉体的にも精神的にも)のいるタフな週末ではありました(ボロメオについては次回)




新潟の演奏家たち2

2013年06月15日 | 各地にて
 先週の研修会に続いて今週は小学校でアウトリーチの実践。前日に再度ランスルーをして再確認して・・・という手順であるが、実際は通してみての修正と言うよりもぎりぎりまで新しいアイデアをいれたり変更をしたりして,久しぶりにはらはらと落ち着かない2日間だった。とはいえ3組ともそれぞれの個性を活かしたプログラムができて、タイプの違ったアウトリーチになったので、第1回目のアウトリーチとしては面白い方向に進んでいると思う。新潟の財団はかなりこの事業の可能性を積極的に評価してくれているようで有り難い。このあと今年度中にそれぞれあと2~3回のアウトリーチと年度末にジョイントのコンサートが計画されている。
 3組は、まず尺八の鯨岡さんと箏の藤崎さん。アウトリーチは比較的慣れていてそれ故新しい展開が必要だと思ったグループ。能祖さんのコーディネートで演劇の要素を採り入れ子どもの打楽器と一緒に曲(砂山)を作るなど動きも多いけれど、良くこなした。フルートの中林さんは最年長。話すことに一番抵抗がありそうだったし、実際かなり苦労されたと思うけれども、こういうことは自分が是非やりたい、という強い気持ちがあって応募したこともあり、イメージに働きかけるようなアウトリーチになった。ヴァイオリンの加藤さんは、昨夏の研修会に参加して目の前が晴れた、という感じでよく考えているなという印象。気っぷの良い度胸のあるタイプだと思うが、その良さが振幅の大きな進行に良く表れていたように思う。コーディネートの田村緑さんのもつアイデアをうまく消化しているように感じた。
 こういう政令市での地元演奏家との事業は、演奏家の層の厚さを背景にしてうまく出来そうに思うところが多い。北九州でもその片鱗はあったが、新潟もこの事業を始めるにあたってそれなりに意義を感じ継続しようとしているように見えるのは頼もしい。こういう事業のコーディネートは、演奏家が地域に付いている人たちだけにかえって責任が重いという気もするが、地域での反応がより明確なので面白いところもあるし、地域で生きにくさを感じているアーチストの可能性を拡大するという意味でもやりがいを感じることが多い。会館と地域と演奏家が関係を作りながらネットワークを拡大していくのは見ていて嬉しくなる要素がたくさんあると思うので、りゅうとぴあが「新潟方式」を見出して継続していってくれることを願う。

新潟の演奏家たち

2013年06月08日 | 各地にて
新潟のアウトリーチ事業(政令指定都市モデル)がいよいよ佳境に入ってきて、今週の火曜から木曜までの3日間でじっくりと研修会をした。私が各地でやってきたやり方は、コーディネーターが一人しかいなかったこともあって、ここまでじっくりとアーチスト一人とつきあうことはそんなに無い。従って、2年とかの時間をかけて、実際にも体験をしていってもらう中で演奏家が自主的に何かを把握し自分のものにしているという比較的気の長い作業としてやることが多かったが、地域創造の場合はある程度短期決戦的に結果を出していく方法で3人の演奏家一人一人にコーディネーターをつけ、集中的に結果を出していく感じがある。どっちがよいとかではないけれど、向き不向きというのはあるかもしれない。
今回の3組の演奏家、フルートの中林さん、ヴァイオリンの加藤さん、尺八の鯨岡さんと箏の藤崎さんはそれぞれとてもやる気のある人たちでつきあっていて心地がよい。今回はランスルーまで(写真はランスルー後のアーチスト同士の意見交換。来週に学校に出かける。まだ変化させないといけない部分もあるだろうし、WS的にやるケースでは子ども相手で勝手が違うこともあると思うけれど、この2年間の登録中に今までと違った体験をしていって欲しいと思う。

いわき6/1 長瀬賢弘(ピアニスト)のランスルー

2013年06月02日 | いわき
いわきの演奏家第2期の3人のうちの一人、長瀬さんは来週市内4カ所の小中学校にアウトリーチに出かける。第2期本格的にスタート。2月以来の今日のランスルー、思い出しながら、という感じではあったが、その後スタッフ4人とともに意見を言いながら改善をして行けたので、今回の4回でもっとよくなるだろうと推測できる。
今回私は本番につきあえないのだけれど、ランスルーを見て安心したとともにいくつかの課題もよくわかった。今日はそれをいくつかは話し、いくつかは来年への課題とする、という感じ。
だいたいの構想は
月光第1楽章
子犬のワルツ
ピアノコーナー
シンデレラから3曲
基本のテーマは想像力である。でも、この3曲はイメージがだんだん具体的になっていく音楽の時代的流れとともにある。それを子供にいっても解らないこともあるだろうけれども、やり方によってはそのことまで感じ取ってもらえる可能性もある。そんなことを思いながら聞いていたのだけれど。
その辺の整理がつくと、元々力のあるピアニストなので演奏にも好影響があるはずだ。
期待。