児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

長崎10回目のガラコンサート

2012年02月26日 | 各地にて

長崎市のブリックホールに関わって10年以上になる。直営館だったが、2年ほど前に指定管理者制度を導入した。事業については文化振興課が以前のように行う。とはいえ、ここでは新聞や放送局など民間の事業者がそれなりに存在する事情から、市が芸術に関わる事業は普及型にほぼ特化して行っている(演劇は市民参加型、音楽はアウトリーチをベースにしたおの)。
今年はアウトリーチを始めてから10年目、ガラコンサートも10回目になる(回数を表記しているわけではないけれど)。
昨日は夕方からリハーサル、ここのホールは反響板を設置すると音響はずいぶん良いのだけれど、何しろ2000席の広さがあるので、位置取りなどそれなりに難しい。当日だけのリハーサルというわけにもいかない。
それと、今回は10回目と言うことも意識して全員の合同演奏にOBも加わってボレロを演奏する。広島に住む作曲家新田祥子さんに編曲をお願いした。途中津軽三味線がメロディに入ってくるところなど、なかなか乙である。ボレロは元々が楽器の音色を聞かせるという構成になっているのでガラには向いているのかもしれない。
(写真は練習風景)

宇都宮のステージラボ

2012年02月23日 | 各地にて


地域創造の合宿型研修であるステージラボは1994年から始めて今回で35回になる。毎回60名程度の参加者が居ることを考えると2000人以上の人が参加していることになる。今回の講師をお願いしたSPACの広報アドヴァイザーである阿南一徳氏の話ではないが、35回を数える歴史というのは絶対にお金では買えない類の価値である。
今回は広報についてに一日を当て、阿南さんといわきアリオスの広報チーフである長野隆人さんに出ていただき、後半はグループでのワークショップ方式で広報プランを検討した。
(写真は長野さんの講義)

アウトリーチの嬉しい話(トリトンアーツネットワーク)

2012年02月19日 | 徒然
NPOトリトンアーツネットワークの桜井さんから嬉しい話。

「嬉しいことがありました!
先日近所の小学校へアウトリーチへ行ったら、音楽の先生に「うちの5年生の男の子でヴァイオリンやってる子がいて、結構コンクールとか入賞して真面目にやってるんだけど、なんときっかけがTANさんのアウトリーチなんだって~!」と言われました。なんでも、保育園でアウトリーチを聴いて、ヴァイオリンやりたいと言い始めたそうです。調べたところそのアウトリーチはなんとボロメオSQではありませんか!そう…それはいい経験したねぇキミ。
今度ボロメオが来日したら会えるきっかけとかあったらいいな~。
第一生命ホールの公演にもよく来てくれているみたいで、なんだか本当に芽が育った!という感じで先生、サポーターとみんなで大喜びしました。」

こう言うのって普通は美しい絵なのだけれど、実際になると本当に嬉しいですねえ(この場合、嬉しいというのがやはり一番の言い方だと思う)。ボロメオSQはいつも直球勝負のアウトリーチをしていて、幼稚園や保育園でも演奏の熱の入りかたが凄いのだけれど、こう言う話を聞くとなるほどねえ、と思う。アウトリーチの目標をそこに置くかどうかは、主催者、演奏家それぞれケースバイケースで同じではないけれど、やはり目標設定の確かさとぶれなさが大事なのだと言うことは肝に銘じないといけないね。やはり

と言うことで、2003年にトリトンでボロメオを招いてアドベントセミナーの人たちに話をしてもらったときの、ボロメオSQのファーストヴァイオリン奏者ニコラス・キッチンの話を再掲する(たぶん以前にも載せたと思うので)。ちなみに上記エピソードはその次の来日の時の話だと思われる。以下。そのときに、ニックが「仕上げていない曲はやるべきではない」といっていたことが非常に強く印象に残っているのだけれど。
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トリトン・アーツ・ネットワークのアウトリーチミーティングでの
ボロメーオ弦楽四重奏団ニコラス・キッチン氏のコメント

1.TANについて
・TANはコンサートの企画・制作だけでなく、アウトリーチ・プログラムのコーディネートにおいても、きちんと運営されていて、組織としての質が大変高い。
・ともすると、コンサートにしろ、アウトリーチ・プログラムにしろ、易きに流されて、コマーシャリズムに押しつぶされがちな昨今、一つ一つのアウトリーチ・プログラムを聴き手の立場に立って、注意深く取り扱っている事は称賛に値する。
・とてもうまくマネジメントされている一例として、一つ一つの演奏する場での対象者についての情報を事細かに事前に奏者に教えてくれていることがあげられる。このことは演奏家にとってはとても大事な事で、「どういう人が聴いてくれるのか、普段はどんな生活をしている人たちで、何に興味を持っているのか」など出来るだけ多くの情報を奏者に教えてくれれば、何を演奏したらよいか、また演奏する際にどんなお話をすれば興味を持ってもらえるのかが分るのだ。
・米国でもレジデンシー・プログラム(演奏する場所に住みついて、コミュニティの一員として生活しながら演奏活動も行なうもの)を行なう事が多いが、誰の為に弾くのかを事前に知る事が難しい
・TANでは事前に下見をするが、これが情報の収集と言う意味で大変、重要なことだ。たとえその場で生活している人たちと一言も話が出来なくとも、見るだけでも大事な事である。(昨年、国立がんセンターに下見に行ってニックがいるか分教室で子どもの作った歌の楽譜を手に入れて、実際にアウトリーチをするまでに弦楽四重奏用に編曲して持っていったことが、患者さんや看護婦さんに大変喜ばれた)
・当日の演奏プログラムを考える際にも、演奏と言う一種のコミュニケーションをする際には、最初に相手からの信頼を得る事が出来れば、雰囲気が柔らかくなり、良い関係を築く事が出来る
・聴き手にとって初めての奏者と相対した時に、その奏者から自分達の事を分ってくれていると思わせる、何かのつながりが予め用意されていると、なじみのないクラシック音楽でも聴き手の心の襞に分け入っていくものだ。
・保育園で演奏した際に、家族が同席したのは良かった。というのも、「これは大変重要な事だ」と子どもに分らせる上では、自分の親が同席してい真剣に聴いていれば子どもも真剣に聴こうとするからだ。
・TANがアウトリーチ・プログラムを上手く運営している事を羨ましいとすら思う。
2.米国での経験から言える事
・中学・高校生は、アウトリーチ・プログラムの対象として大変難しい。というのも、自分がクラシックを好きだと言う事を隠しているケースが多いからだ。
・学校でやる時に演奏後、最初の質問をするその内容が、その後のQ&Aの内容を規定する上で、非常に重要だ。
・ 病院において、生きる事の意味を考えているような、特別な事情を持っている人々にとって、音楽は何か意味のある事をプレゼントできるものだ。

3.TANへの示唆
①アウトリーチ・プログラムを記憶に定着させる上で、もう少し分かり易 い「配り物」があると、その翌年にまた同様なアウトリーチ・プログラムを 企画した際に、記憶が蘇る手助けとなる。
②「配り物」を事前に手渡ししておく事も大事。ワクワク感を作っていく事に役立つ。また、これから来る人の情報を聴き手が持っておく事が期待感の醸成に寄与する。例えば、TANのHPに情報を事前に上げておいて、アウトリーチ・プログラムの聴き手がそれにアクセスするというのも一案だ。Real Player で音のサンプルを作ってあげるとか、絵を見せることも役立とう。
③奏者の気配りとして大事な事を二つ:
i)当日演奏する曲目に対して奏者が興味と持った理由を語る事。何故その音楽を自分が面白いと思うか、好きな曲であれば、その思いを伝えられる可能性が高いものだ。今回、第一生命ホールではバルトークの弦楽四重奏全曲を弾くが、自分が本当にバルトークを美しいと思っていなければ、つまり弾き手として納得していなければ聴き手を引き込む事は出来ない。
ii)クラシック音楽は誰にでもすぐに分ってもらえるものではない。
だからその場で自分の思いが充分に伝わらなくても、すぐに自分の考えを改めて、妥協したりせず、自分の思いを伝える為の努力を惜しまず頑固に自分を変えない事も重要だ。

④聴き手と奏者をつなげる何かを見つける事。だから事前の情報が大事なのだ。

以上







エルガーの肖像

2012年02月16日 | 徒然
ほとんどの学校の音楽室には作曲家の肖像が掲示されている。出版社によって何種類か有って、ショパンの顔などは若い貴公子然としたものから死ぬ直前の暗いものまであって同じ人とは思えなかったりする。あと僕らから見ると作曲家としての重要度以上にほとんど必ずと言って良いほど飾られているのがサン=サーンスで、これは鑑賞素材としても定番の白鳥の威力だろう。
あんまり意味があることではないが、アウトリーチで演奏される曲のランキングがあるとすると、たぶん最上位には行ってくるであろうと思われる曲に「愛の挨拶」がある。ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、管楽器など楽器を選ばず演奏されているが、デュオプリマも冒頭の演奏曲に採用している。長崎でデュープリマと行った15日の小学校でエルガ-の肖像が飾られているのを発見。これは全国で何百校も行ったけれども初めて見た。珍しいので写真に撮った。礒さんも神谷さんも初めてだそうだ。うーん、こういう顔の人だったのね。

長崎のデュオプリマ(礒絵里子、神谷未穂)

2012年02月16日 | 各地にて

14日から16日までデュオプリマと佐藤勝重の3人で長崎市内の学校でのアウトリーチをおこなっている。デュオプリマのアウトリーチはたぶん6年ぶりくらいに見るのだけれど、会話の流れがとてもスムースなのが特徴だろう。ずいぶん進化していて見直した。二人の個性の差が活かされ始めている気もするのだけれど、やや驚くのは、二人の話の役割に全くと言って良いほど境界がないこと。たぶん一人でもほとんど同じ話を出来る状態になっていて、それがシームレスにつながっているので、回によって話をする人が交代していることもある。本人たちはそれを意識せずにつなげているらしいのだけれど、こういう例は珍しい。さすが従姉妹。
長崎の子供たちの反応は良く、3人も楽しみながらアウトリーチが出来ているようだ。

あと、今回は今までになく、大村の室内オケのメンバーが交代で何人も見学に来ている。弦楽器と言うこともあると思うけれども、オケがNPO化されて彼らが取り組んでいる大村市内への学校へのアウトリーチの内容についての興味が大きくなってきているのを感じる。指導をしている松原勝也さんの影響もあるだろうし、ブリックホールのアウトリーチ事業で育ってきたサポーターの枡田さんが事務局に加わったことも良いきっかけになっているかもしれない。大村のメンバーには長崎市内に住んでいる人も多く、長崎のやっている演奏家個人のスキル向上の取り組みと大村のオケがうまく結びつくといいのだけれど。

日本チェロ協会「第2回チェロの日」

2012年02月14日 | 徒然
日本チェロ協会は最近になって若い人がちょっと活発に活動を始めているような気がする。昨年は日本チェロコングレスという形でお祭りをしたけれど、今年はもう少しこじんまりとしているとはいえ、チェロの日として2日間のイベントを行った。こういう流れは定着してくれると良いのだけれど。
今回の初日はリレーコンサートとして、8名のチェリストによるコンサート。それぞれが力の入ったソナタで個性が際立つおもしろさがあったと思う。2日目はアンサンブルの日だけれど、マスタークラス、オーケストラスタディ、招待演奏、全体合奏(山本祐ノ介指揮)と過ごした。盛りだくさんで制作的には、思わぬこともあったけれども、概して楽しく、それはスタッフもチェリストも同じだったであろう。
人が集まるというのは、いろいろな問題があっても有意義な面の方がより強く表れるのであろう。
今回準備にほとんど顔を出せなかったので、当日突然行く形になってしまったのだけれど、私の仕事は録音係。全部セットされているので、ボタンを押すだけのようなものではある。とはいえ、録音というのは失敗すると大きな問題なのでかなり緊張する。


大船渡の新崎誠実

2012年02月11日 | 各地にて
昨日は熊本から大船渡までの移動。朝6時45分のバスに乗り、熊本空港から伊丹、仙台空港経由で仙台に出て、バスで大船渡まで。他に良さそうな方法が無くついたのが17時半前後なので概ね11時間弱の移動。
こういうのは久しぶり(何年か前に山形の山の中から島根県益田に行ったときと同じくらいの時kなんである。
まあこういうことも年に一回くらいはあっても楽しいがさすがに草臥れることも間違いない。
今日(10日)は大船渡で新崎誠美さんのアウトリーチがあった。コンサートは明日11日で、昨年のドビュッシーが良かったので期待もあるのだけれど、今回は残念ながらつきあえない。
アウトリーチは大船渡市街の中心から離れた2つの小学校(蛸が浦と末崎小学校)。新崎さんの言いたいメッセージは比較的はっきりしていてかなり正面から取り組もうとしているのがわかる。良いことだとおもう。
それをどのように自分の中で流れとして把握するかがまだ慣れていない感じはある。それが出来るとすばらしくなるだろう。
彼女は秋から全国の諸処でアウトリーチを行いコンサートの最後にやるお菓子の世界(湯山明の組曲)に対してのメッセージを集めてきたので、大船渡でその集大成となるコンサート、と言うことになる。
コンサートにはつきあえなくなってしまったのだけれど、一年ぶりの彼女のアウトリーチの成長を見ることも楽しみである。
大船渡に来る途中、気仙沼、陸前高田の海岸をバスで通ってきたのだけれど、地盤沈下の故もあってか、まだまだ新しい何かが見えてくるような状況とも言えないような気がする(ちょっと見で判断するのは失礼だけれども)。もう11ヶ月たつわけだからやや暗い気持ちになる
夕方は新崎さんが各地で集めてきた300を超すメッセ-ジと、各コンサートでの写真をロビーに飾る準備。
半年近くをかけた事業は大がかりともいえるが、小さなことを積み上げてく一見大がかりに見えないようなことは個人的には比較的好きである。

熊本の3人の演奏家

2012年02月08日 | 徒然

昨日の続き。
今日は3日目だが早速県立劇場近くの詫間原小学校にでむいて3人のアウトリーチの実践。3組とも、きちんとした構成で五年生を巻き込みインターアクティブな関係を作っていた。生徒も非常にしっかりとした大人ながら素直に反応し楽しむという比較的理想に近い生徒たちで、この学校の意識の高さが感じられる反応だった。

コントラバスの亀古さんは、楽器のパワーを活かしつつも、きちんと音楽的なアプローチをしたが、語り口で子供たちをリラックスさせていたのが印象的。クラリネットの徳田さんは中では一番若いがコミュニケーションについては天性のものがあり、子供とのゆっくり関係を楽しむ余裕さえあるのにびっくり。演奏もバランスのとれた良さがある。ソプラノの辻さんは何しろ笑顔が良い。モーツアルトの春へのあこがれから導入したのだけれど、その明るさであっという間の子供を巻き込んでいた。前半がモーツアルト2曲と糸を紡ぐグレートヒェンというやや渋めのプロだったけれど、その晦渋さをかんじさせなかった。後半春の声では、ワルツのステップを踏み、そのまま子供を巻き込みつつの歌唱だったけれど、声にも心がきちんと通っていて彼女が乗っていたのがよくわかった。
今回2人が3.11の話題を取り上げたが、わざとらしくなることもなく子供にきちんと思いが伝わっていたようでほっとした。

今回講座は、3人の演奏家がいることから、私の他に熊本県芸術劇場の本田次長、ピアニストの田村緑さんがコーディネーター役に加わりスタッフも参加してそれぞれの演奏家に張り付くコーディネート体制で行ったけれど、地域創造のおんかつフォーラムの趣旨の1つである現地でのプログラムづくりが出来たのがよかった。今までは私一人の世界になってしまいがちであったのが、田村さんが入ったためにアーチスト的な発想が加わり、一種の緊張感もあったけれども、とてもおもしろいことが出来たのが最大の収穫だったと思う。演奏家の皆さんにも意義のある研修会に出来たのではないか。演奏家のコーディネーターというのはなかなか勇気がいるのだけれど、今回は大成功。
明日は早朝に熊本を出て大船渡まで大旅行である。

熊本の演奏家研修会

2012年02月07日 | 各地にて

熊本県が秋にオーディションをして選んだアウトリーチ事業の演奏家の研修会が昨日、今日、明日と行われている。ここでは、2日目の午後にランスルーまで持って行ってしまい、3日目はもう小学校に行ってもらうのだけれど、事前にアウトリーチを見てもらったり研修的なことを行っているので、はじめからぶれがない。また演奏家は室内楽ではなくソロであるので、演奏家も含めて話し合いながら作っていく作業が個人的な問題になる。それ故、この日程でも(ちょっとどきどきするけれども)大きな齟齬は出てきていない。
今回は、年上からコントラバスの亀子さん、ソプラノの辻さん、そしてクラリネットの徳田さんの3人。それぞれ個性があってとても良い雰囲気で推移している。
コーディネーター役は私の他に、熊本県劇の本田さん、そしてピアニストの田村さん。ノウハウを持った人たちがそれぞれの演奏家についてプログラムづくりをしている。やり方はそれぞれで、これもなかなか興味深い。
研修会のはじめは私と田村さんでそれぞれ1時間くらいづつ話をした。私の話はいつもながらのことだけれど、田村さんは「ピアノの秘密」のコーナーを使って実際に説明をしながら進めてくれた。この人選はなかなか良く、私が比較的理屈を話し、田村さんが現実的な話し方の対応などを話すというかたちで、役割分担が出来て非常にやりやすかった。wたしの話を受けて受講する演奏者の気持ちを作っていく術はさすがである。おかげでずいぶん楽をした感jもあるが、2日目の今日まで演奏家同士の雰囲気も良くて、気持ちよ進められている。演奏家がコーディネート役をやることは、長い間疑問に思ってきたのだけれど、結局は人の問題で田村さんのような人にかかればその心配は霧消することが今回概ね理解できた。実は北九州で神谷さんにも聞いたのだけれども、「向いてる!」と言っていたのをきいて安心した。
あと明日は熊本市立詫間原小学校に行って実際にアウトリーチを実践するのだけれど、今日の段階でかなりきちんと出来ているのでまあまあ安心である。

写真は県劇の事務所にいる「くまもん」スタッフが和服を着せた。

北九州のガラコンサート

2012年02月05日 | 各地にて
本日は北九州響ホールで本年のアウトリーチ演奏家によるガラコンサート。500ほどのお客様で会場の雰囲気はとても良く、アウトリーチ事業での成果が感じられた。経験的にはコンサート会場の雰囲気が良くなることは客の数が増えること以上にアウトリーチの効果で、質(負の数もあり)×量(基本正数)を評価基準に考えるとかなりの成果だと言えないこともない。
去年今年の2年間の地元演奏家たちの最後でもあったのだけれど、今回の4名はとても良い感じである。今回東京組の神谷未穂、田村緑の演奏も良くて、充実したコンサート。財団の担当池野さんも最後と言うことでとてもがんばったようだ。彼女の最近のやりとりを見ていると、気持ちが行き届いている、という意味で押さえるべきところが押さえられている、という境地になっているように思う。

北九州響ホールの事業として行ってきたアウトリーチ事業は今年で6年(実験的にやった年をいれると7年)になる。その間4組×3回の地元の演奏家と一緒に年間何回かのアウトリーチをやってきたことになる。毎度同じ話になるけれど、競争、研修、スタンダードは(もし地元演奏家の成長を望むならば)どこでも必須の要素だと思っていて、どれかが欠けると企画はいびつになる。演奏家を学校や施設、コミュニティに送り出していくことは大事な仕事だけれども、そこで行われる内容も大事だし、そのことが演の成長につながっているという実感がコーディネート側にも演奏家側にもないと長続きしないだろう。もう一つ、強のガラコンで感じたのだけれど、舞台に出ていくときの演奏家の高揚感と緊張感のある顔つきをみて、やはりリサイタルではなくてもコンサートは大事だと思えるのである。
北九州の来年のアウトリーチ事業は、過去3回の登録演奏家を活用して行う。また民間の音楽団体にコーディネートを委託しているのも大幅に増やす方針だそうで、ある意味ではいいことでもある。こういう手順は公共が事業を行うときの1つの常法でもある。しかしミッション的な発想をもう少しきっちりと広げないといけないので、ちょっと急ぎすぎている感じもある。いずれにしろ、とりあえず私の北九州とのアウトリーチ事業での関係は一旦休止という感じになっている。来年は担当者も変わるのでそのような方策をとっていると思えるが、数は少なくしてもきちんとやる体制を作ってあげないと担当者も大変かもしれない。
写真はガラコン終了後今年の出演者たち