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児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

いわき7/17 菅家奈津子さんのカスケードコンサート

2012年07月17日 | いわき

菅家さんには今年の2月にアウトリーチをしに来てもらったのだけれど、昨年度はホールでの有料公演を限定するという方針でいたので特別にコンサートは無しと言うことにしていただいたので、今回はカスケードでのランチタイムのコンサートに来ていただいた。アリオスできちんと彼女の音楽を聴いてもらうのははじめてになる。カスケードはやや響きすぎで、歌は歌詞が聴き取れるか心配な空間なのだけれど、菅家さんの場合心配は不要な人。彼女の歌詞の発音(特に日本語)は非常に自然ではっきりしているので、言葉がとても自然に入ってくる。意味が普通に聞こえてくる状態で鑑賞できるので内容にもスーっと入っていけるのである。今回の彼女の曲は、
1,私を泣かせてください
2,マッティナータ
3,彼女に告げてよ
4,カタリ・カタリ
5,もののけ姫
6,さよならの夏~こくりこ坂から~
7,小さな空
8,カッチーニのアヴェマリア
メゾなのだけれど、テノールっぽいものとかもあって、菅家さんの特質が良く出ているレパートリーである。また、もののけなども彼女が声楽の発声で本気で歌うとみんな襟を正して聴くみたいな感じが出てくる(これは小学生でも同じ・・・)。アニメソングを歌うという感覚ではない。
さて、今年からカスケードコンサートの最初の挨拶をやらされているのだけれど(足立君の陰謀?)、今回は、彼女の声の特質を考えて初めにこんな話をした。
「いまコミュニケーションが大事、ということが言われているけれども、コミュニケーションは他の人との間だけでなく、自分との会話もある。音楽というものは自分のとのコミュニケーションにとても良いので、菅家さんの歌を聴きながらそんなことをちょっと考えて見てください」
出て行った菅家さん、3曲目のあとで「みんなとても静かに聴いてくれて嬉しいのですが、もっと明るい笑顔もみたいです」と言っていました。人間、内省的なときは笑顔にはならないものだよなあ、確かに。

いわき7/4,5 おであり研究会1期生4人の成長

2012年07月06日 | いわき
いわきはこの間地元第2期のオーディションを終えて3人の演奏家を決めたところだけれど、今年は第1期4人の演奏家は2年目、経験を深めてもらう年でもある。今回はこちらの都合もあるけれども、昨日、一昨日で4人にそれぞれ1校づつ行っていただいた。2年目は新しいプログラムを作っていこうという気持ちもあり(みんなもそう思っているみたいだし)打合せとランスルーをやって本番を迎えるという方向。
4人それぞれの感想を・・・
鈴木香保里さんはこの間リサイタルをやったことがとても良かったようだ。音楽づくりが充実したことが話にも良い効果を上げていると思った。話に余裕ができていることとともに、演奏に入るときの切り替えがうまくいくようになっていると思う。

常光今日子さんは、ある意味一番正統的。組み立ての思考回路のようなものができて来つつあるように思う。毎回、詳細な進行案を書いてきてくれる(大体いろいろと考えすぎて内容的にはあふれてしまう傾向があるけれど)のだが、それが良い意味で蓄積できてきたようだ。

紺野裕子さんは今回は新しい構成案でまだ完成されていないけれど、彼女は自分でやりながら作り上げていくタイプ。今年はこのプログラムで完成させていく方向。演奏が安定してきた。ピアソラなどの力強さなどが印象的。

木田奈保子さんは、今年に入って声のメンテナンスをしなおしたのか、声に安定感が戻った。その声が聴き手を圧倒する場面もあって、こどもがびっくりしてしまうくらい。オペラなどではそういう部分も必要だ。語りかけなどは多くの声楽の人と同じように天性のものがある。

4人とも、細かいところで気になる部分はあるにしても、相手が毎回変わるのですべてが思うように行くことがほとんど不可能なアウトリーチという分野、場面では、絶対的な正解を求めると言うよりは、或る方向性(矢じるし)が常に意識されていることの方が特に演奏家にとっては大事。これで良いのかもしれない。
ご苦労様でした。

いわき6/10 鈴木香保里さんのリサイタル

2012年06月07日 | いわき
鈴木香保里さんはいわきアリオスの第1期のおでかけアリオス研究会の登録メンバー。
東京音楽大学を出ていわきに帰ってきたときにちょうど募集をしていて「そういうことがやりたかった」と応募された人。登録を契機にリサイタルをやろうと計画していた矢先に東日本大震災があり、一時がっくりしていたのだけれど、だんだん復興の兆しが見えてきて、再度リサイタルを組み立て直しての本番だった。昨夜のリハーサルの時に,ピアノの力を信じて力を抜いて弾いた方がいい音に聞こえるよ、と言って帰ってきたのだけれど、今朝、昨日選んだピアノの弦が今日の調律中に切れるアクシデントが在り、急遽もう一台のスタインウエィに切り替えてのコンサートになったが力まずに弾けていたので本人としてはまあ満足のいくリサイタルになったのではないか。
ショパンの二つの大円舞曲を最初と最後に配し,ベートーベンとメンデルスゾーン、ドビュッシー、ショパンのバラードをサンドイッチする構成。こういう芸術的な機会を時折作りながら、指導や普及をがんばっていってほしいと思う。

いわき6/7 澤村祐司さん(箏)と見澤太基さん

2012年06月07日 | いわき
いわきで邦楽初めてのアウトリーチ。邦楽は安心してまかせられる演奏家がそれほど多くない。まだそのような発想と機会が必ずしも多くないのだろう。地域創造の邦楽事業はその意味では貴重でもある。個人的には古典的な発想で音楽を扱う限りにおいて、クラシックものほんの古典もそれほどの距離は無いように思っている。ただ仕事としてのルールは必ずしも同じではないのが少し難しい。とはいえそれほど大きな差異があるわけでもない。アウトリーチの内容に関する発想の原点は私の中ではほとんど差異がないので、似たような考え方で内容を吟味することは可能だろう。私が邦楽のコーディネーター役をしているのもその意味である。
澤村さんと見澤さんは熊本の邦楽事業(2010年度)で一緒に組み立てをした同志であって、その意味では安心して任せられると思える人達である。熊本ではもう一人入れてやったのだけれど、今回は二人。久しぶりなのでやや緊張して迎えたけれど、熊本で見せた澤村さんの組み立ての基本はここでもきちんと活きていて安心した。その上見澤さんの話しぶりがずいぶん良くなっていて、特にメッセージ性が明確に表れてきているのにややびっくり。良いコンビになっている。
最近の私のテーマである「聴き手の意識の流れ」について一つ二つ意見を言った以外は本当に細心の注意を持って構成ができていて感心した。今回はそれなりにハードで、小・中学校が2校(どちらも生徒は小中入れても10-14人程度である)、少し規模の大きな小学校の6年、山間の中学校という4回であるが、少なくとも今日は非常に良くできていて、小さなこどもも中学生も一様に注目して聞いてくれていた。

いわき5/23 篠原英子(Hp)と市島徹(Fl)

2012年05月26日 | いわき
いわき、お出かけアリオス。
5月23,24日とハープの篠原英子さんとフルートの市島徹さんが市内4カ所の小学校にアウトリーチをした。二人ともいわき出身のベテランだが(篠原さんは四倉出身、市島さんは小名浜出身でいわき在住)こども真摯に対してくれた。22日はカスケードコンサート(私が同行できたのは22日と23日だけだけ)。
ところで、いわきでは5年前の開館時に、親しみを持てるようにコミュニティ系の会館から飛び出していく事業を総称して「お出かけアリオス」という名前で呼ぶことにした。これが不思議と浸透していて、アウトリーチの始まりの時に学校の先生が「これからお出かけアリオスを始めます」と言ってくれる事も多い。とてもありがたく思うのだけれど、なんかすこしぴったりしないのも事実。「お出かけアリオス」と呼称しておこなっていることは、いろいろな概念が含まれているので、やはり音楽を学校に届けるのはお出かけアリオスコンサートだと思うのだけれど。このような企画する側の思いと受け取り方の微妙なちがいは以前にもあったきがする。もちろん、同じ仕事をしている同志でも言葉に対する観念を揃えるのは容易ではない。カザルスホールでも長谷工のシリーズの趣旨の受けとられかたで違いがあった。成功した企画ではその企画にそれぞれ自分の価値観を入れて判断するというのは良くあることで、このことは自分でも気をつけないといけない。
閑話休題。小学校ではハープの威力は絶大で、見かけが面白いし音がきれい、弾き方が面白い、足をもごもごと動かしているなど、目も耳も興味津々になる。いわきの子供らはさすがに東北の湘南と言われるだけあって、積極的である。質問もどんどん出てくるので、演奏者がちょっと詰まるような時もあったけれども,とても良い雰囲気で終えることができたのではないか。少なくとも見ることができた1日目は、そんな感じで終わったので安心した。少しだけ手を入れることをお願いしたが2日目も楽しくできたと思う。

いわき4/22 常光今日子さんのコンサート

2012年04月22日 | いわき

 いわきでおでかけアリオス研究会の第1期生(といっても今年2年目の活動になるが)常光さんのコンサートがあり、珍しくいわきで時間があったので聴かせてもらうことにした。常光さんは、東京音大を出て東京でがんばっているけれども、いわきにもたびたび帰って活動をしている。特に震災のあとは帰る頻度が増えているかもしれない。見かけによらず芯がしっかりしているのでまあ安心してみていられる。
 今日の会場は、アリオスから歩いて5分くらいのアートスペースエリコーナ。いわきの画家であるご主人浩一郎の記念に、奥様でピアノ指導者としてずっとがんばっていらっしゃる若松紀志子先生が建てた展示室と小ホールのある空間。おおむね120人も入るといっぱいになってしまうような会場だが、スタインウェイのピアノがあるしゃれた空間である。客席の残響が見た目よりも響かなく感じることもあるけれど、小さな空間では響きすぎるのも良くないので妥当なのかもしれぬ。いわきの音楽拠点の一つ。もう95歳を過ぎたけれどもお元気な若松先生は、昔、まだ学生だった萩原麻未を何度かいわきに呼んだ事があるらしい(その話は萩原さんから直接に聞いた)。広島にいながらヤマハで全国に知られていたらしいとはいえ東北に呼ぶというのはなかなか先見の明があるといえるだろう。

 さて今日のコンサートは東京音大出身の演奏家によるピアノトリオをベースに、ヴァイオリンとピアノ、チェロ、ヴァイオリンと色々なデュオも入れて変化を考えたプログラム。構成も考えてあって楽しめた。こういう風に活動をして行くというのも大事な事だと思う。
それと、常光さんのお母さんが言っていたのだけれど、震災で音信不通になっていた人と連絡が取れたりして、その意味でもコンサートをすることでそのきっかけになっている、ということだ。地元できちんと活動する、ということはやはり大事であるし、復興の一里塚でもある。


いわき3/22 読売日本交響楽団

2012年03月23日 | いわき
昨日3/22に読売日本交響楽団の復興支援特別講演として「きぼうの音楽会」がアリオスで開かれた。全員招待で。コンサートの初めに市長と読響の理事長のことば、それから読響の特別顧問である高松宮妃のおことばがあってそのあと普通にコンサート、最後に指揮者の下野さんがマイクを持って出てきて、みんなでふるさとを歌って終わる。
読響はこういうことを被災地で今後も続けていくという話である。
読響にはソリストとしてつきあったことのある知り合いも何人か居て、終演後、藤原浜雄さんや鈴木理恵子さん、チェロの毛利さんや高木君、ヴィオラの柳瀬君などと久しぶりに会えて嬉しかった。弾きやすいホールだと言うことと、お客さんが暖かくて良かった、というのがみんなの感想。藤原さんは3月いっぱいで正式にはコンサートマスター職を降りるそうだ(とは言っても、年間20公演くらいはお願いすることになるのではないか、と事務局の人はいっていたけれども、まあ一世代が終わりつつあると言うことかな。チェロは嶺田さんも、毛利さんももう60過ぎているし・・・。読響の音はN響とはやはりずいぶん違う性格がある。ソリストの清水和音さんのピアノの音も懐かしい(懐かしがっていてはいけないのだが)きらきらした音。好き嫌いはともかく気持ちがよい。この公演のために組まれたプログラムは、ウインザーの陽気な女房たち、シューマンのピアノ協奏曲、ドヴォルザークの8番。プログラムノートにもう少しメッセージがあるとわかりやすかったかも。

いわき3/18 0さいからのコンサート

2012年03月18日 | いわき
311から1年強が過ぎて、今年も寒い日が続いている。
震災と原発事故の影響はいわきの中心部に来てそれほど感じることが無くなってきた、というのは来訪者の感覚で、実は見えないか見ないようにしているかに過ぎないとは思うのだけれど、でも日常はある意味形成されつつある。いわきアリオスの今年度の事業もあと渡辺亮さんの事業の仕上げが残るのみ。今年は有料のコンサートは大幅に減らしたけれど、復興支援企画への手伝いとか、特にコミュニティや学校への事業を大事にして例年以上に行ってきた。それ以外にも手伝ったアウトリーチなども多く、スタッフにとっては忙しい一年だったと思う。
今日明日と「0さいからのコンサート」としてアリオスのリハ室、小名浜と内郷の子育てセンターで小さなコンサートをする。本来はホールで有料のつもりだったけれども、アウトリーチのスタイルに近い公演。今日は大リハ室で群響のコンマス伊藤文乃さんとコンバス首席の山崎さんというデュオでの企画である。
なかなか面白いアイデアもあって興味深いのだけれども、もっと完成度を上げることは出来るだろう。今一回終わったところで、私抜きでディスカッションをしているので、明日に向けての改訂がどうなるか興味深い。
今日のお客さまの子どもはほとんどが3歳以下。やはり親と一緒に過ごす時間になる。今日も親と子どもの一緒に出かけて過ごす場所としての価値は、終了後に人がなかなか帰らなかったことでも感じられる。これと幼稚園や保育園に行くのと同じような(サントリーのカーネギーキッズもそうだけれど)小さい子どものためのプログラムづくりは同じコンセプトで作って良いものかどうかはやや悩ましい。別にしても良いような気もする。すると、会場とか入場料の考え方も変えていかねばならないかもしれない。
まあ、今回のこの企画は「自前できちんと考え、制作して創る」ことが目標でもあるので、いろいろと工夫をしつつ実験的に行っていけばよいと考えている。

いわき3/8 NHK交響楽団の公演

2012年03月08日 | いわき
いわき市はNHK交響楽団と定期公演の協定をしていて、年間1回の公演を行っているが、その故もあろうか、メンバーのいわきに対する気持ちはかなり濃いものがあるように思える。ありがたい。今回も昨年9月の定期公演がホールの修復が間に合わずに流れて諦めつつも,次の公演まで2年半も空くのは良くないという気持ちからお願いして、やや無理にスケジュールを入れてもらった公演でもある。
この公演を決めたときは、市民の生活とか感情とかが有料公演に向かうものだろうか,復興支援の企画がたくさん入ってきたらどうしようかとか、いろいろと心配もしたけれど、ある程度の覚悟を決めてやって良かったと思う。少しチケット料金は安くしたとはいえ満席。その過程ではいろいろなことがあるだろうが、復興というのはこういうことを少しづつきちんとやっていくことなのだろう(別に満席でなくても)。
全国的に3月に入ってから、3.11に向けて黙祷をしようとかいろいろな動きがあって、僕としては大げさなのは少し気持ちが引けるのだけれど、今日のコンサートでは、初めに指揮者の高関さんがすこし話をしてG線上のアリアを演奏した。そのあとは普通のコンサート。マメールロワとラプソディ・イン・ブルーと新世界である。
ピアノの小曽根さんはアンコールで自作の「リボーン」を弾いて、がんばろうと叫んで袖に帰ってきた。
帰りのお客様の様子を見ていたのだが、なんか嬉しそうで本当に良かった。

メッセージのある菅家奈津子さんのアウトリーチ

2012年02月05日 | いわき
今年度のいわきのアウトリーチ活動もあと少しで終了である。今年は震災の影響もあり、有料コンサートを減らしてコミュニティ型のものを増やしたので、担当はかなり難儀だったかもしれない。
2月1-3日にアウトリーチ(お出かけアリオス)を行ったメゾソプラノの菅家奈津子さんは、声と演奏にはとても力がある。その音楽の深みを活かすことで心の深いところに届くアウトリーチが出来そうな感じが以前からあって,それをどう構成と話術に乗せられるか,というのが課題だったわけだ。
今回は、「声は楽器、クラシック音楽はマイクを使わない」ということと「音楽にはいろいろな力がある」ということにテーマを集中して音楽を聴いてもらうという手法で3つの小学校で計5回のアウトリーチを行った。今回特に秀逸だったのが(子供の反応の影響もあるが)、一番心配していた小学校1~3年生の回。菅家さんの言葉遣いは小さな子供に対してとてもコミュニカティブで良い(たぶん障害者とかに対しても同じような良さが出ると思う)。それでも内容的に難しいのではないかと思っていたのだけれど、今回は一年生までもかなり深い感情の世界に連れて出ていたような気がしてなかなか感動的だったのである(いわきアリオスのアウトリーチ担当が純粋に感動していた)。
内容はいずれフィールドノートに挙げることにする。