拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

「こんなにあったや読むの大変やないのよさ」

2006-09-19 23:18:39 | 漫画
近所の本屋のマンガ単行本コーナーの一角に、講談社から出ている『手塚治虫全集』がずらーっと陳列してある所がある。300巻以上にも及ぶ『全集』。とは言っても、これでも手塚治虫が描いた全ての漫画を網羅しているわけではないというのだから驚きだ。陳列用本棚の上から下まできっちりと手塚漫画で埋め尽くされたその様は文字通り「圧巻」。量が膨大なだけにいくら手塚治虫と言えども「ハズレ」な作品は多々あるだろうが、それでも読みたい。読みつくしたい。でもこの「手塚コーナー」の前を通るたびに、「こーんなにあるんだもんな。読破なんて生涯無理だな」と絶望する。大体、私が読んだ手塚作品はまだまだかなり少ないからな。『ブラック・ジャック』、『鉄腕アトム』数巻、『火の鳥 未来編・黎明編』、『メトロポリス』、『奇子』…これだけ。ド素人だ。これだけでは手塚治虫は語れまい。そうだな、せめて『ブラック・ジャック』に脇役としてカメオ出演している過去の手塚キャラ達の7割を指摘できるぐらいにはなりたい。今の私にはアトムとヒゲオヤジとレオぐらいしか見つけられない。見た目アトムそのままの少年が出てくるエピソードはかなり切ないですよ。『鉄腕アトム』でアトムが「アトムは完璧ではない。何故なら悪い心を持たないからだ」と言われたことを踏まえて読むと…。
私が読んだ数少ない手塚漫画の中で一番好きなのは『ブラック・ジャック』だろうか。一話完結、各話十数ページにも関わらず毎回濃密なストーリーが展開され、読後の満足度が異様に高い。医療漫画らしいシリアスな話も勿論面白いが、たまに出てくるピノコ絡みのほのぼのとしたストーリーも大好きだ。ピノコ。多分、私が読んだ全ての漫画のキャラの中で一番好きな女の子キャラ。ブラックジャックの「奥さん」を自称する幼児。時には強引に(?)ブラックジャックに求愛し、時には彼の助手として最高の働きをする、なんとも可愛らしい女の子である。ラ行が発音できない舌足らずな独特の話し口調も魅力的。普段は大体ブラックジャックにべったりだが、彼が仕事上のトラブルで心が荒みきったときなどは彼を一人にし、声の届かない場所で陰ながら励ましの言葉をかける健気さは涙を誘発させる(「ピノコね、先生愛ちてる」は名言だ)。ネットでたまに自己流で擬人化・美人化させたピノコを見かけるけど、それは認めないぜ、私は。あのちっちゃさが良いのです。ちっちゃさゆえにどんなに好きでもブラックジャックの奥さんになれないもどかしいピノコだからこそ魅力的なのですよ。……語りすぎか?ピノコについて。でも漫画読んでて一挙手一投足に注目しちゃうんだもん、ピノコの。スクリーンセーバーもピノコなのよさ。
そうそう、『ブラック・ジャック』を読んでると、「手塚治虫ってベタでくだらないギャグが好きなんだな」と思わせるシーンに多々出会う。ガン宣告された患者が「ガーン」という効果音とともに青ざめたりとか。
『奇子』はトラウマ漫画の一つだ。中学の頃友人に文庫版を借りて読んで、しばらく学校行きたくなくなりそうになってしまった。繊細でしたから、当時は。人間のエグい部分を救いようの無いほど描きつくしていて読後は頭がぼーっとしてしまった。ゆえにそれ以来読んでいないのだが、何故か最近また読みたくなってきた。…読んで、また暗~い気分になっちゃうのかなぁ。でもあの頃と比べたらそれなりに変な漫画沢山読んだつもりだもんな、大丈夫だ多分。