★ Serena ★

カナダ暮らしのエスペランチスト、自然愛好家。
エスペラントやカナダの野草、ネーチャークラブの活動など思いつくままに。

空飛ぶカヌー August 08, 2005 20:24

2005-08-09 09:24:51 | カナダの民話
Flying Canoe
それは、ある大晦日の夕暮れのことです。森の奥の、とある樵小屋で何人かの樵たちは家が恋しくなっていました。開拓時代の農夫たちは、冬になるとこうして森の奥へ樵として出稼ぎに出たものですが、一緒に暮らしていた家族と別れ、森の奥で朝は暗いうちに仕事に出かけ、夜は暗くなってからやっと小屋にもどって来るという男ばかりの毎日ですから大晦日でなくても寂しいのです。家族や恋人たちのこと、そして大晦日の年に一度のパーティーのことなど考え無性に家に帰りたくなっていました。でも、どうやって今日のうちに家に帰り着けるでしょう。村からこの森の奥の樵小屋に来るのに三日も四日もかけて歩かなければならなかったではありませんか。

今からこの雪の中を歩いて、今夜の楽しい行事に間に合うわけがありません。そこへ樵たちの気持ちをかぎつけたのか突然悪魔が現れてこんな提案をしました。
『今夜のうちに家に帰らせてあげるョ。条件付きだけど。』
悪魔は罵言を聞くのが大嫌いでした。たいていの罵言というものは宗教的な言葉から出ているもので、忌まわしい言葉と神聖な言葉の組み合わせであることが多いのです。悪魔が嫌いなのはその神聖な部分でした。
『24時間罵言を口にしないと約束するなら、「空飛ぶカヌー」を出してあげるョ』
樵たちは『お安い御用!』と思いました。そこで、軽い気持ちで悪魔と約束をしてみんなで空飛ぶカヌーに乗り込んだのです。カヌーはスイスイと空を飛び、あっという間に村に着いてしまいました。
なんというパーティー。踊ったり、歌ったり、食べたり飲んだりのドンチャン騒ぎ。それは楽しい大晦日でした。
気がつくともう森に帰る時間になっています。家族や恋人たちに別れを告げカヌーに乗り込み飛び立ちましたが、みな酔っ払っているもので、カヌーの舵を取るために誰が一番しらふかと口論を始めたのです。口論はらちがあきません。しまいには悪魔との約束を忘れてしまい、一人の樵が罵りはじめました。ハッと気付いた時はもう遅く悪魔はそれを聞いてしまったのです。
『教訓を与えてやれ!』とばかりに悪魔はカヌーを持ち上げひっくり返してしまったので、樵たちはみんな森の木立の中に落ちてしまいました。さいわい木が繁茂していたので枝にひっかかり大きなケガはしませんでしたが、樵たちはコリゴリし、生涯罵言は吐かないと肝に銘じて誓ったということです。
(ケベック州の民話)


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5 コメント

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人間の本質は何時まで経っても~。 (りこ)
2005-08-10 00:16:33
Serenaさん今晩は。何人であっても人間であることは同じ。私もカナダの人も同じだと分かって妙な安心感を抱きました。



相手に不快の思いをさせないように普段は気を使っているのですが~時々辛らつに突っ込みを入れて見たくなったりします。別に相手を嫌いとか何か特別な感情を持っている訳ではなくても時々そうしたくなる~。自分でも良く分からない不思議な心の動きですが~。悪魔が囁いているのでしょうか??
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実は私も。。。 (serena)
2005-08-10 03:40:00
そういう傾向がありまして、大分オトナシクナッタとは言え顰蹙を買うことがありますのよ。

歯に衣着せぬ、とかズバリそのもの、とか、或いは見かけによらず、とか言われているうちは良いのですが、言い過ぎ、とか、物には言い方というものが有るでしょう、とか非難の対象になって後悔することもあります、何時もと言うわけではないけど。。

反射的に出てくるので、仕方ないかな、です。実際不快な思いをさせるつもりは全く無いのです。どうやら、私達は「同じ穴のムジナ」???

見ようによっては「人生のスパイス」ですけどね。
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Unknown (glimi)
2005-08-10 08:33:39
挿絵自分で書いたのですか?

素敵です!!



 
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面白いですね (Natsumi)
2005-08-11 00:35:48
人の心のなかにいる悪魔に対して、悪魔がお仕置きするって、ちょっと面白いですね。

人を罵るのがクセになっている日本のおじさまたち(団塊の世代あたり)を、一度空から落としてほしいわ!
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glimiさん、 Natsumiさんへ (serena)
2005-08-11 06:44:42
挿絵、自分で描きました。大分むかしに。。



Natsumiさん

団塊の世代ってそういうのが多いのですか?

そういうのが子供を育てている。。フ~m

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