つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

トリビアだといくついくかな

2006-02-19 23:18:27 | 小説全般
さて、そういやぞろ目を何も記念しなかったなぁの第446回は、

タイトル:ハミザベス
著者:栗田有紀
出版社:集英社文庫

であります。

読む本がなくなったとき、とりあえず本屋の文庫棚に並んでいるもののうちで、聞いたこともないひとのを手に取ってみたりする。
これもそうした感じで買ってみたもので、表題作の「ハミザベス」と「豆姉妹」という中編の2話が収録されている。

「ハミザベス」
母と子ふたりで生活していた主人公のまちるのところへ、ある日、死んだとばかり思っていた父がほんとうに死んだという知らせが入る。
その遺産の管理をしている花野あかつきから、まちる母子に遺産があるから受け取ってほしいとのこと。

遺産なんていらないと断りに行くまちるは、父の同居人でもあったあかつきと話しているうちに、いつの間にか遺産として残されていたマンションの一室を受け取ることになる。
どうせだからと言うことで母と暮らした家を出て、マンションに移って暮らすようになったまちるの日常を描いた話。

ちなみに、ハミザベスとはあかつきが手のモデルの仕事を辞め、長期間家を空けることになるからと言うことでまちるが譲り受けたハムスターのこと。

「豆姉妹」
母の再婚を気に、年の離れた姉の永子とともにふたり暮らしをするようになった高校生の末美に、看護婦をしていた永子は突然SMクラブで働くことにすると宣言する。
年は離れていても、とてもよく似た姉妹であった末美と永子。
転職を機に、鏡写しのようだった姉が変わっていく様子や、意味もなくアフロにしてしまうまちるの日常の姿などを描いた話。

トリビアの「へぇ」が「ふぅん」だったら、いったい何ポイントくらいになるんだろうなぁ……。
ってくらい、ぜんっぜんおもしろくなかった。

さらに解説に、「しばしば、途方もない「笑い」を起こさせる」と書いてあったのだが、これのいったいどこで「途方もない笑い」を起こさせてくれるのだろうか、甚だ疑問である。
まぁ、そこは感性の領域なのだろうから、とやかく言うほどのものではないが。

とは言うものの、ストーリーは別として、文章や読みやすさと言う点では申し分ない。
「ハミザベス」での、まちるとあかつきのやりとりや、「豆姉妹」のラストのほうで義理の弟である良太と末美、永子姉妹とのやりとりなど、会話文の流れるような文章はとてもうまい。

それから、おもしろくないと言っても、すべてまずいと言うわけでもない。
「ハミザベス」では、まちるとあかつきの姿よりも、まちるとその母との関係の描写などはよかった。
読みやすいが、無味乾燥な文章のおかげで、マンションに住むことになって出て行ってしまったまちると、残された母の姿が、重くなりすぎず、比較的あっさりと読める。

「豆姉妹」でも、良太が義母に恋をしていると語るラストのほうのやりとりも、おなじような感じでけっこうあっさりしている。

こういうところは特徴としていい部分だとは思うんだけどねぇ。
それ以外、私にはこれっぽっちも魅力を感じない作品。
少なくとも2冊読んで今後読むかどうか決めるつもりではあるけれど、手出しにくいな、このひと……。