つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ファルカンの定理……ではなくて

2006-02-01 00:14:15 | 学術書/新書
さて、単純なものほど難しいと思う第428回は、

タイトル:天才数学者たちが挑んだ最大の難問―フェルマーの最終定理が解けるまで
著者:アミール・D・アクゼル
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

三百五十年もの長きに渡り、数学者達を悩ませ続けてきたフェルマーの最終定理。
彼らはいかにして、この難問に取り組んだのか? そして、なぜこんなものが出てきたのか? を解き明かしていく好著。

フェルマーの最終定理は至って簡単です。
本書のカバー裏から引用すると――

「Xn+Yn=Znは、nが2より大きいとき、自然数解をもたない」
(表示の問題でこう書いてますが、nは乗数です)

以上!
nが2の時、つまり

「Xの二乗+Yの二乗=Zの二乗」

の式は成り立つけど、

「Xの三乗+Yの三乗=Zの三乗」
「Xの四乗+Yの四乗=Zの四乗」
「Xの……(以下無限)」

は成立しないと言っている、そんだけです。
ちなみに二乗の場合は、

X=3 Y=4 Z=5
3×3+4×4=5×5
9+16=25

であっさり解けます。
三乗も簡単にいけるんとちゃう? と思った方、やってみて下さい。
一生やり続けても無理です。(笑) 

序盤はこの定理のルーツとなる乗法、代数の歴史。
起源はなんと古代バビロニアまで遡ります。租税を取るため、土地の広さを正確に記録する必要があったのですね。
三平方の定理で有名なピタゴラス、「エウレカ!」という言葉をメジャーにしたアルキメデスなどの話もあります。

中盤は直接的、間接的にフェルマーの最終定理に関わった数学者達の紹介。
やっかいな問題を残して後世の数学者をシメたフェルマー、世界で最も美しい公式で知られるオイラー、偉大なる巨人ガウス等々……有名人がいっぱい。
彼らの数学者としての業績やフェルマーの最終定理に果たした役割についてダイジェスト的に触れています。

終盤はいよいよ、証明の最終段階に突入。
この簡単な定理を証明(あるいは否定)するために知恵をしぼる近代~現代の数学者達の奮闘を描きます。
個人的にP185のケン・リベットとバリー・メイザーの会話は大好き、格好良いぞメイザーじっちゃん。

フェルマーの最終定理の解説本、ではなくて、数学のプチ歴史本、かな。
数学好きな人にはかなーりオススメ、でも数学嫌いな人は手を出しちゃ駄目。
専門知識がなくても楽しめると書いてはあるけど……最低でも高校数学Iぐらいまでは理解してないと読んでて疲れると思います。

あ、また『不思議の国のトムキンス』をオススメしたくなってきた。
あれは数学嫌いの人が読んでも面白いです。