つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

最初にまんがはつかないけれど

2006-02-17 21:01:16 | その他
さて、やっぱりいいなぁの第444回は、

タイトル:日本の昔話
著者:柳田国男
出版社:新潮文庫

であります。

日本民俗学の大家である柳田国男の著作になる日本各地で語り継がれている昔話を集めたもの。
なんと、と言うほどではないけれど、最初のはしがきは昭和5年になっていてもともとは古い本。

中には10行程度の短いものから、2,3ページに渡る比較的長いものまで、合計108の昔話が収録されている。
それでも200ページに満たない薄めの文庫だけど、1話1話がとても短いので、通勤時に読むのに最適。
10分程度の電車の中でも、3つ4つの昔話を読んでいられる。

で、肝心の中身はと言うと、やっぱり、すごい懐かしい感じがいっぱいでとても心地よく読める。
自分の家や近所のじいさんばあさんに、と言うわけではないけれど、テレビでやっていたまんが日本むかしばなしを見ていた人間にしてみると、マジで懐かしい(^^

はしがきに著者本人がなるべく広く知られているようなものを収録した。
と言うようなことを書いてあったので、知っている話はごろごろある。

定番中の定番、ひとのいい正直者の爺さん婆さんと、欲深な爺さん婆さんの話や、正直者の青年が長者になる話、キツネやタヌキのいたずら話、逆に鶴の恩返しに代表されるような動物の恩返しの話、英雄譚、仏教説話によく見られるような因果応報の話などなど、ほんとうにいろんな昔話がある。

もちろん、わらしべ長者などの極めて有名な昔話もしっかりと収められている。

でも、知っていると言っても、土地土地によって微妙に違うところがあったりして、そういうところを見つけるのもおもしろい。
私はまったく知らなかったのだが、おそらく知らないひとはいないかぐや姫の昔話は地方によっては「鶯姫」という名前でストーリーはほぼそのまま、ってのがあったりして、へぇと感心したり(^^;

ただ、やはり古い時代の本だけあって、漢字の使い方が古い。
たとえば、いまでは「むこ」と言うと「婿」だけど、この本では「聟」の漢字をあてている。
また、どこに伝わっている昔話かの特徴とかがはっきりしていると、話の最後に地名が書いてあるけれど、これがまったくいまの地名と対応していない。
「肥後天草郡」とかだとわかるけれど、「磐城石城郡」とかいったいどこだ!? ってのがかなりたくさん。

こういうのに詳しいひとならいいんだろうけど、あいにくとまったく詳しくないので、上総とか書かれても、確かあの辺り……くらいしかわからん……(爆)

とは言うものの、どこの昔話だろうと、こういう昔から語り継がれてきた物語には、やっぱりどこか心に残るよさと言うものがあるんだろうね。
短いお話ではあるけれど、読んでこれっぽっちも感じるもののない小説なんかよりも、断然いい。

なんかふと、若いひとに読んでもらいたい気がしたなぁ。
マンガやラノベばっかりじゃなく、しかも堅苦しい古典でもない、こういう素朴な日本の昔話を、ね(^^