つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

アリス・イン・ミラーランド

2005-09-20 10:16:10 | ファンタジー(異世界)
さて、こっちはいまいちマイナーな第294回は、

タイトル:鏡の国のアリス
著者:ルイス・キャロル
文庫名:新潮文庫

であります。

『ラビリンス』
『ARMS』
『キャベツ畑でつまずいて』
『真女神転生』
『アリス・イン・ナイトメア』

『不思議の国のアリス』をネタにした、もしくは影響を受けた作品を挙げだしたらきりがありません。
それぐらいこの作品は――現代から見ても――特異であり、その名が示す通り不思議な話だったのです。(個人的には不気味と言いたいが)

で、本作はその続編。
前作のベースが語りの中から生まれたのに対し、本作は始めから続編として書かれたためか、非常にロジカルな色彩が濃くなっています。
ビックリ箱的展開が薄れたためかイマイチ人気が低いのですが、前作より解りやすい作品になっているのは間違いありません。

本作のアリスは鏡の国を訪れます。
前作がトランプの国だったのに対してこちらはチェスの国。
そこでアリスは白軍の最下級の駒(白のポーン)の役割を与えられ、チェスで言うところの敵陣の最下行を目指します。

一応、元のゲームを知らなくても話の筋は解るようになっていますが、知っていれば多少楽しみが増えるのは事実。
ポーンが一手目は二マス動けることや、駒による王手、クイーンの凄まじい移動力等が、作品内でちゃんと表現されています。
個人的にはキャスリングもやって欲しかったけど。(笑)

禅問答のような会話も健在。
数学者らしく、妙な所で筋は通っています。
もっとも、御子様にはわけが解んないかも知れませんが。

一番面白かったのは赤の王の話。
この方ずっと寝っぱなしなのですが、すべては彼の夢なのだとか。
でも読者はこれがアリスの夢だと知っているわけで、じゃあ赤の王はアリスの夢の一部なのだけど、アリスもまた彼の夢の一部で……あ~こんがらがる。

ファンタジー好きよりむしろSF好きに向いてます。
ただ、今回読んだ新潮版の訳と絵はあまりオススメでない。
お兄さん風の語り口調で書かれているのがなんか気持ち悪いし、絵もテニエルのものに慣れてしまうとやはり違和感があります。
邪婆有尾鬼(ジャバウォッキ)、の表記は笑えましたが。

ちなみに昔読んだ岩波版(だったと思う)には、全キャラクターと駒の対応表が付いていました。もっとも、登場人物の殆どが実際の駒の動きとは関係ない行動を取るのであまり意味はありませんが。


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