つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

鬼界が、悲鳴~をあげてるぜ

2005-07-11 18:47:41 | ゲームブック
さて、ちょっと懐かしくなった第223回は、

タイトル:パンタクル
著者:鈴木直人
文庫名:創元推理文庫

であります。

私の中で最高のゲームブック。
ゲームブックって何よ? という方は第113回を御覧下さい。
鈴木直人氏と言えばドルアーガ三部作なんだろうけど、私はこっちの方が好み。

森の国シャンバラーは死に瀕していた。
天変地異が大河の流れを変え、巨大な亀裂が国を孤立化させたのだ。
人々は亀裂の向こうにできた谷を『鬼哭谷』と呼び、恐れた。

死の床にあって、国王セフィロトは三人の息子に言った。
すべての元凶は鬼哭谷にある、如意宝珠を探しだし亀裂に投げ込め、と。
三男ビナーは軍勢を率いて鬼哭谷へと向かい、消息を断った……。

四男ケセドは鬼哭谷へと馬を走らせていた。
長男のケテルには新王としての勤めがある。
父と兄の仇を討てるのは自分しかいないのだ。

道中出会った医師ミンダルカムイと共に、ケセドは亀裂にたどり着く。
ケセドを気づかって医師が先に吊り橋を渡るが、それは唐突に崩れ落ちた。
きっと助けに行くと確約し、ケセドは馬に乗って立ち去る。

ミンダルカムイは医師の装束を解き、皮鎧を身にまとった。
左手には魔道士の証である万能章(パンタクル)が輝いている。
ミンダルカムイ――追放された筈の次男メスロンは、祖国を蝕む鬼どもを滅ぼすべく鬼哭谷へと乗り込んでいった……。

魔道士メスロンとなって鬼哭谷を巡るファンタジーRPGです。
敵は八部衆から荒御霊まで、仏教世界の有名人達がゴロゴロ。
迷路好きには物足りないかも知れないけど、マッピングはちゃんとできます。

とにかく魔法のシステムがよいのです。
十五種類もの魔法をありとあらゆる場所で使用できる。
知ってる魔法のうち、これとこれだけ使える、というシステムならいくらでもあるが、どれを使ってもいいというシステムはこの本が初めてだったと思う。

魔法の選択もいいですね。
『火界』、『土呑護(どどんご)』といった攻撃魔法から、『幻水金』のような幻術破りの魔法までバラエティに富んでいます。
こんな魔法、使い道があるんかいな? という変なものや、本当に全く使い道がないというか使うと不幸になれるものもあります。

特筆すべきはそのネーミング。
防具破壊の魔法が魔防道風、パワーアップして魔防那須……。
小さくなる魔法が『ほっけ縮劣拳』……って×斗×拳かい!
ゲーム性とシリアス度をアップしたため、ドルアーガほどギャグ要素がありませんが、こういう遊びを見ると楽しくなります。

あ、忘れるとこだった、主人公のメスロン。
ドルアーガのゲームブック二作目で登場したヘビメタ魔道士です(笑)。
東洋魔術は勉強中と言ってたけど、さすがは当代随一の使い手、本作ではこれでもかというぐらい漢字表記の魔法を連発してくれます。

現在、復刻版が出てます。(上記リンクを参照)
ゲームブックファンなら絶対のオススメ、結構手強い。
あ、もちろんドルアーガ三部作も……こちらは本当に絶版だけど。