つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

古いのがいいとは限らないのでは?

2005-07-01 22:37:40 | ファンタジー(異世界)
さて、久々にまじめに読んだの第213回は、

タイトル:ゲルマン神話 -北欧のロマン-
著者:ドナルド・A・マッケンジー著 東浦義雄、竹村恵都子翻訳
出版社:大修館書店

であります。

前に世界神話事典を読んだのもあって、ふと本屋で見かけたので、久しぶりにしっかりしたのを読んでみよう、と思ったので買ってみた。

ゲルマン神話、と言うといまいち馴染みがないかもしれない。
どちらかと言うと、北欧神話と言ったほうが馴染みがあるだろう。
でも、ゲルマン民族が早くからキリスト教化して、古伝を失ったのに対して北欧ではそこまでではなかったため、ゲルマン民族の神話を伝えることができた、らしい。

だから、ゲルマン神話=北欧神話みたいな感じではあるけれど、もともとはゲルマン民族の神話らしい。

さて、まえがきを読むと、ゲルマン神話の原典でもある「古エッダ」を中心として構成されているようなことが書いてある。
確かに、神話なのだから古いほうが、もともとのものに近いはず、と言える。

だからと言って、読み物としておもしろいかどうかは別。

ゲルマン神話は、「天地の創造」から「神々の黄昏-ラグナロク」まで、神々や英雄たちの物語が描かれている。

まず、ヨーロッパの神話って、ギリシャ神話もそうだし、このゲルマン神話もそうだけど、かなり人間くさい。

オーディンは変身してトールを手玉に取るし、不死を得る林檎がなくなってうろたえるし、ヴァン神族にアースガルズは奪われるし。
あんたらほんとうに神様かい! って思えるくらい。

それに、この神話、最大の謎かもしれないロキの存在。
ラグナロクでは、結局このロキの子供である狼フェンリルにオーディンが、ミズガルドの大蛇ヨルムンガンドにトールが殺されてしまう。

そのくせ、いろんな悪事を企み、実現させながらもロキはオーディン以下のアース神族の中で生活している。

もちろん、そうしたところにも神話学では意味のあることだと語られているけど、ただ読み物として読む場合は、解決されない謎みたいなもの。

それに、古いからいいもの、と言うわけではなく、読み物としては支離滅裂だったり、話がつながらなかったり、展開が唐突だったりと、統一性に乏しい。

この本では翻訳のものと、訳者の解説があるので、どちらかと言うと解説のほうだけ読んでもいいかもしれない。
解説、と言ってもストーリーの概略も書かれているからね。

でもまぁ、原典に近いもの、と言う意味ではいいものかもしれない。
解説も、神話学の香りをさせつつも、平易に説明されているから読みやすい。

ただし、これだけのものに2500円も出せるか、と言うと読んだあとには、高すぎる、と言う感じ。
はっきり言って、新書くらいの値段でないと買わないよ、この内容だと。