つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

昨日がやけにろくでもなかっただけに

2005-07-09 16:10:49 | ファンタジー(現世界)
さて、ライトノベルを読もう企画第5弾の第221回は、

タイトル:我が家のお稲荷さま。
著者:柴村仁
出版社:電撃文庫

であります。

読後感、それなりに良好。

ホントに昨日のが破滅的なくらいダメだったので、残りも暗澹とした気持ちで読み始めたのだが、これがなかなか……。

話は、遙か昔に封印され、現代に甦った大霊狐である天狐空幻と、その封印した霊能者一族の兄弟ふたり、そして霊能者一族とともにある護り女(まもりめ)と言う女性の4人を中心としたもの。

最初は、兄弟の弟である透が妖怪に狙われているからと言うことで、それを護るために三槌本家へ連れてこられた兄・昇、弟・透。
そこで妖怪を追い払うために空幻の封印を解く。

序盤は、この妖怪と空幻の戦闘で終わるが、このとき、空幻が兄弟の守り神としてついていく。

中盤からは兄弟の生活の中での話になり、土地神である恵比寿も絡んだ終盤へと続く。

とは言うものの、基本的には夏休みの日常を描いたもので、戦闘シーンも、さほど派手ではない。
お定まりの色恋の話は、兄・昇(17歳)のほうで描かれるが、ありがちなしつこいものではなく、高校生活の中での一コマ、と言った風情で好感が持てる。

キャラも、夭折した母に成り代わり、齢17にして一家のベテラン主婦となった昇、12にしては幼い透、クー、護り女のコウと、立ち位置がはっきりしており、それぞれの個性もわかりやすい。

特に、クーとコウのふたりだが、クーは女の姿をしていることが多いが、そのときどきで男の姿にもなるし、家ではたいてい狐の姿のままで、一貫性はないが、逆にビジュアルだけを求めて女性形ばかりにするよりはよい。

コウは、無表情で常識知らず、妖怪だの五行だのと言った方面にはめっぽう強いが、それ以外は破滅的に不器用、着るのは常に巫女装束……という狙ったようなキャラになっているが、そこまでのアクの強さはない。
逆に、不器用で、どれだけ時間がかかろうが、真剣に洗濯物を干そうとするシーンなどはほほえましい。

文章も及第。
口語調が適度に混じった軽い文章だが、描写が疎か、と言うことはなく、比較的しっかりしている。
適度に読みやすく、重くならず、けれどきっちりと描写するところはしているし、分量も適当だろう。

戦闘でのクーの戦い方とかは、基本的に五行思想のものを使用しているが、説明のセリフや文章も話の邪魔にならない程度に抑えられている。
ただ、逆に少ないので、ある程度の知識がないとわかりにくいのは残念だが、話の流れを切ってまで説明に費やすよりはよいだろう。
そういうものだと思って読めばいいだけだし、この手の小説にそこまで求めてもしょうがない。

展開も、わりかし無理なく流れていっている。
兄弟の母・美夜子を中心とした展開も、序盤の母親の顔をほとんど知らない透や、中盤での父親とクーの会話、クーと美夜子とのエピソードなど、終盤に向けた伏線もしっかりと描かれている。
まぁ、わかりやすいっちゃぁわかりやすかったけど。

昨日が昨日だったから、と言うのがあるかもしれないが、これはけっこうおもしろいほうだと思うね。

総じて良好な評価が出来る話ではあるけれど、難点を言えば、ラストが尻切れトンボ気味なのが残念。
もう少し、余韻を保つシーンでつなげるとかして、きっちりと締めてくれればもっとよかったのだが。



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