つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

時の階段から落ちる少女♪

2005-07-04 17:28:27 | SF(国内)
さて、ライトノベルを読もう企画発動な第216回は、

タイトル:タイム・リープ――あしたはきのう(上)(下)
著者:高畑京一郎
文庫名:電撃文庫

であります。

現代版、時をかける少女
作中でもラベンダー云々という話があり、作者が意識してやっていることが解る。
でも、『マイ・フェア・レディ』が好きだから『プリティ・ウーマン』は見ない、という人でなければ容認できる範囲なので、御心配なく。

鹿島翔香は平凡な高校二年生。
いつも通り登校した時、彼女は奇妙な事実に気付く。
自分とクラスメートの認識している曜日にズレがあるのだ。
存在した筈の月曜日が消え、彼女は火曜日の時間の中にいた……。

頻繁に繰り返される時間跳躍。
パニックに陥りながらも、翔香は一人の協力者を得る。
同じクラスの若松和彦、女嫌いで通っている校内一の秀才。
誤解と不審、異常な事件を経て、彼は翔香の唯一の理解者となる。

別々に進行していく二人の時間。
和彦は跳んだ時間の穴埋めと、解析を試みる。
しかし、どうしても説明がつかない日が存在した。
翔香はなぜ時を跳ぶのか? 空白の日に何が起こったのか?

『時をかける少女』がそうだったように、これまたSFラブ・ストーリーです。
この子の場合、ラベンダーの香りではなく、階段から落ちるのだけど。(笑)

翔香と他のキャラクターの知っていることのズレがポイント。
これを複線として、和彦が非常に解りやすく論理を展開します。
理路整然と時間跳躍について解説するくだりも上手く書けている。
ラストのアレはそれまでの理論と矛盾している気もしますが、ま、いいとしよう。

と、SF要素ついては綺麗にまとまっています。
では恋愛要素はどうか、一言で言ってしまうと――

主人公二人が可愛い

これに尽きる。

翔香は非常に古典的なヒロインです。
時間の跳躍に怯え、唯一の理解者である和彦にすがりつく。
守ってあげたい症候群の方々は胸キュン(死語)必至、間違いなく。

和彦もまた非常に古典的なヒーロー。
頭脳明晰、容姿端麗、んでかなり無愛想(重要)、でも誠実。
薄情少年純情派を地で行く彼は女性から見た可愛いタイプの典型です。

本来、こんな二人がベッタベタなラブ・ストーリーを展開した日にゃ、全身にさぶいぼができて三日間ぐらいはうなされるもんですが、そこはそれ、タイトルネームでもあるタイム・リープが二人をつなぐ強力な絆になっており、絶妙な配分で無理なくハッピーエンドまで行きます。

とっても不思議な青春小説です。
アイディアも二人の関係も特に真新しいものではないのですが、構成が凄く上手い。
文章もかなり読み易く、いい意味でライトノベルと呼ぶに相応しい作品だと思います。
私は上下一気に読めました、オススメ。

ちなみに、本作のイラスト担当は漫画家の衣谷遊です。
シャープな絵柄で作品の雰囲気作りにかなり貢献してます。
下巻目次、二人が並んでいる絵を見て『白龍』を思い浮かべてしまったけど。(笑)