つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

またこんなん手に取ってみた

2005-07-30 17:48:55 | 小説全般
さて、最近児童文学の賞取ってるのを見ると買ってみようかと思ったりするの第242回は、

タイトル:アーモンド入りチョコレートのワルツ
著者:森絵都
出版社:角川文庫

であります。

3つの短編が収録されたもので、どれも主人公は中学生。
それと各話に、それぞれテーマとなるピアノ曲がある。

10も20もあるわけではないので、それぞれひとつづつ。

・子供は眠る ~ロベルト・シューマン「子供の情景」より
主人公のぼくが5年前から4人のいとこたちと夏の2週間を過ごす別荘での話。
テーマで出てくるシューマンのピアノ曲は、別荘の持ち主の息子である章くんに、毎日夜10時になると強制的に聞かされるレコードから。

2週間の生活を仕切る章くんと、この夏の2週間を終わらせたくなくて章くんを立てて、章くんよりも優れたところを見せまいとするぼく、智明、ナス。
それぞれの気持ちや行動、不満と言ったところがうまく描かれている。

ストーリー的に特に目立ったところはないけれど、流れるように進んでいて、さらっと読める作品になっている。

・彼女のアリア ~J.S.バッハ「ゴルドベルグ変奏曲」より
不眠症で1ヶ月寝られない日々が続いているぼくと、球技大会をサボって訪れた旧校舎の音楽室で出会った、虚言癖のある藤谷りえ子の話。

おなじ不眠症だと言う藤谷とともに毎週火曜日に、不眠症のことや藤谷一家のとんでもない家庭事情などを語り合い、けれど、不眠症を始めとしてそれは全部藤谷の嘘で、ぼくは怒って毎週火曜日の音楽室へ行かなくなってしまう。

まぁ、ラストはいちおうハッピーエンドに終わるので安心して読めるけど。

この話でも、ぼくの気持ちがとてもうまく描かれている。
藤谷の話がすべて嘘だとわかって、もう火曜日の音楽室に行かなくなったあと、学校で見かけても、ぼくはまだ怒ってるんだと無視したり、けれどそのあとに、あれは少し酷かったんじゃないかと後悔したり、でもまだ藤谷が悪いんだと言い聞かせたりするところなどは、子供っぽくてほほえましい。

それにたぶん、心当たりがある、と言うか、中学時代を思い出してそういう気持ちになったりしたひとはけっこういるんじゃないかな。

懐かしいとともに、どこかくすぐったい感じのする優しい話になっていて、これは雰囲気のあるいい話になっている。

・アーモンド入りチョコレートのワルツ ~エリック・サティ「童話音楽の献立表」より
前の2話は少年が主人公だったけど、これは中学生の少女の奈緒が主人公。
あとは奈緒の友達で、おなじピアノ教室に通う君絵、ピアノ教室の絹子先生、そして絹子先生が呼び寄せた謎のフランス人のサティのおじさんの4人で描く、ピアノ教室を中心とした、ふわふわとした雰囲気のある話。

う~む、これはとてもいい雰囲気を楽しみつつ読みましょう。

以上。

……つか、それくらい雰囲気がよいのでね。

と言うわけで、総じていい本だと言えるかな。
オススメできる作品のひとつ、でしょう。