つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

確かにこの年齢で

2005-07-15 21:33:21 | 小説全般
さて、今頃になってようやくもう1冊を読んだの第227回は、

タイトル:蹴りたい背中
著者:綿矢りさ
出版社:河出書房新社

であります。

弱冠19歳にして第130回芥川賞に選ばれた作品で、おなじく直木賞を受賞した「蛇にピアス」と並んで話題になった。

まぁ、ほとんどベストセラーとか、話題になったのは見向きもしないんだけど、貸してくれると言うひとがいたので読んでみた。
いちおう、「蛇にピアス」のほうは読んでたので、こちらもってくらいなんだけど。

話は、主人公の長谷川初実(ハツ)の高校生活の数ヶ月を描いたもの。
神経をすり減らすグループでの行動に背を向けて、孤立しつつあるハツが、おなじくクラスの中でひとりでいるにな川と、理科の時間で初めて言葉を交わすところから始まる。

にな川は理科の時間にもかかわらず、女性もののファッション雑誌を見ていて、なぜそれを見ているのかと言うとオリチャンと言うモデルのファンだからだった。

そこからクラスメイトの中で孤立しているハツとにな川を中心としたハツの姿が描かれていく。

う~む……。

何となく微妙な感じ……(^^;

いや、悪い作品かと言えばそうではない。
ハツの心理描写とか、文章とか、口語調が混じるけれど、とても19歳とは思えないくらいの筆致で書かれている。

グループでいることに背を向けつつ、孤立してしまうことに対する恐怖感とか、にな川から目を離せない気持ちと嗜虐的な気持ち……そうしたところとか、とても上手に描いていると思う。

にな川や、ハツと接点を持ちながらも新しいグループへと移っていく絹代などのキャラも申し分ない。

でも、作品に入っていけない……。

プロットの固まりきった短編を書いてるみたいに、遠いところから俯瞰しながら、淡々と話が進んでいくような感じ。

小説としてよくできた話だと思うんだけど、たぶん、感性に合わないんだろうなぁ。

なんかそれだけ年を食ったのか……と思って少し悲しくなったけど(爆)

なので、完全に好みの問題、と言うところに落ち着いてしまうのは仕方ない、と言うことにしときましょう(^^;

まぁでも、最後にちょろっとだけ。
ラストの、ベランダで寝転がるにな川の背中を蹴りたい衝動が湧き上がって、蹴ってしまうハツ。
けれど、蹴りたいのは、にな川の背中なのか、クラスメイトとの人間関係に葛藤する自分なのか……とか思ってみたり……。