思い出の釣り・これからの釣り

欧州の釣り、竹竿、その他、その時々の徒然の思いを綴るつもりです

Hardy The Kenya Fly Rod (E87364, 1953年製)

2021-05-23 12:24:44 | Hardy Palakona

暫くはハックルや毛鉤の話ばかりでしたので、今回は道具の話を一つ。
Hardyの竹竿には場所の名前が付けられたものが幾つもあります。竹竿では1886年に発表されたTest川に因んで名付けられたPerfect Testがその嚆矢。英米、大洋州の川湖の名前を付けられた竿々の中で唯一アフリカの地名が付けられたのがThe Kenyaです。
アフリカ大陸でも、旧英国植民地の南アフリカ、ケニアには英国人によって放された鱒が生息しております。ケニアは赤道直下で、港町のモンバサは流石に毎日暑いのですが、高地にある首都ナイロビは一年を通じて過ごしやすい気温でそこから更に山岳地帯に行けば鱒の生育に適した川が幾つもあります。
更にアフリカ大陸の北部、モロッコの山岳地帯には放流されたものではない自然のブラウントラウトの仲間が生息しておりアフリカ天然鱒の釣りも出来るのです。チュニジア在住時にモロッコで釣りをする機会はありませんでしたが。。。

この竿は8'の3pcs。1934年から1957年の期間製造されております。
Angler's Guideには:"A light yet powerful rod designed to handle fish up to 5lbs and to meet the special requirements of anglers in Kenya. The rod is short for transport - and capable of tackling heavy strong fish, and to hold them out of snags"とあり、持ち運びの便を考えた軽い短竿の3pcsですが5ポンドまでの大魚を障害物から引きずり出す力を備えた竿である旨の特徴が分かります。ケニアの釣り人の要請で作られたこの竿、1957年までの長い間製造されたのはケニアの釣り人のみならず、欧州、あるいは米加、大洋州でも需要があったのではないでしょうか。しかし当時のケニア植民地で繰り広げられたマウマウ団との戦いで現地はのんびりと釣りをする様な状況にあらず製造中止になったのかな、と想像しております。

段巻きはクリムゾン。リング周りの巻きはクリムゾンにスカーレットの縁取り。ジョイントは軽量級の竿と同様にサクションです。

1953年製ですので、グリップの上にフックキーパーはありません。

1950年代前半の銘を担当していた方の特徴がPの字に出ております。

竿のタイプ名、The Kanya

が手書きされております。

butt ringは瑪瑙入り。

intermediate ringはFullopen bridge。

End ringは瑪瑙入り。ザラザラするシルクラインからリングを守るための選択。

この竿にはjoint protectorが付きます。

アルミ製の円筒の内側にコルクを張っております。円筒の脇に切れ込みが入っているのはStud lock用。Kenyaはサクションなのでコルクで塞がれております。

製造番号はE87364。1953年製となります。

英国王の御用達印が刻印されております。これは1952年即位のエリザベス女王のワラントではなく多分ジョージ6世のものをそのまま継続しているのでしょう。

この竿、かなりの強竿なのですが、同じ8フィート3pcsのDe Luxeと比べて見ます。

下がDe Luxe上がKenyaですが、トップを比べるとかなりKenyaは太くなっているのが分かります。Kenyaの調子はAngler's GuideによればStiff(硬調子)。De LuxeはInclined Stiff(硬調子より)。重量はKenyaが5oz 1/2に対しDe Luxeは5oz。8フィートで1/2オンス(14グラム)の差があるというのは使われている竹のボリュームがKenyaの方が多いことを表しております。
De Luxeは日本の渓流で使うのに丁度良いのですが、Kenyaでは養沢や一般渓流の魚は役不足。私が思い浮かぶ限りですが、会津大川の50cm虹鱒あたりが丁度良さそうに思います。非常事態宣言中は養沢に行くしかありませんものの。。。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (yugawaski)
2021-05-24 19:42:38
こんばんは。
ケニア、良く入手できましたね。
以前は全く出てこなくて、幻の竿でした。
ナイロビの釣道具屋の片隅に埃を被って残っているのではないか…なんて冗談を言い合っていました。
太いトップを見ていると、大物を障害物から引きずり出すという解説になるほどなぁと。
猛獣の出現を警戒しながら鱒を釣るとは、さすがジョンブル魂と言うべきか、やり過ぎと言うべきか(笑)
返信する
竿との縁 (budsek)
2021-05-26 18:51:02
yugawaski様
コメントを頂き大変ありがとうございました。
KenyaはAngler's Guideに載っていても出てくることの極めて稀な竿であることに間違いはないと思います。
私もナイロビ、モンバサのみならずアフリカ大陸は在住も含めて東西南北中央部と訪れておりますが、何時かはケニアで釣りをしたいものと思っております。そうした想いに引かれてか、ある日ひょっこりとこの竿が目の前にやってきたもので、入手してしまいました。英植民地時代の昔に比べれば遥かに釣り場への移動は楽になったと思いますが、それでも8'の3pcsで太いトップの竿は頑丈で持ち運びも楽。アフリカ山岳地帯の釣りに持って行くには適切なデザインだろうなと本当に思います。ケニアの他にもタンザニア、さらにはエチオピアと東アフリカの高原地帯には虹鱒が放流されている様で、何時の日か機会があればこのKenya竿を持って釣りに出かけたいと思います。
返信する

コメントを投稿