欧州のメーカーは、プレス向けのローンチとディラーセールスマンの試乗会を同時に行うことが多い。この年は並列4気筒160馬力のエンジンを搭載したK1200Sのデビューだった。
フランクフルト駅から、メルセデスのAクラスを走らせてマンハイムという町を目指す。重心が高い車体はロールが大きく、助手席で酔いそうになった。
ホテルに着くと、日本のディーラーさんの一行に合流することが出来、これで一安心だ。
二日間に渡るトレーニング初日は図の濃い線のグランプリコースで行われ、技量に応じてクラス分けされる。二日目は公道で性能を確かめて、いよいよオールドコースを走る。
先導してくれるインストラクターの後をついて行くのだが、なかなかのハイペース、セイフティーゾーンも少なく、箱根のターンパイクの傾斜を減らして、そこを全開で走るようなデンジャラスな体験だ。
直線ではメーターの針が280キロを指していたのに、前を行くインストラクターはタンデムシートに女性スタッフを載せて、長い膝を擦りそうなペースだ。
この年、電子制御のESAサスペンションが採用された年だったから、試していたのかもしれない。
翌朝、ホテルをチェックアウトしようと思ったら、週末にGPコースで開催されるツーリングカーレースに出場する元F1ドライバーのジャン・アレジに遭遇できた。
この日、21日間にも及ぶ世界旅行を終えてフランクフルトから日本に帰国する。
いつまでも物事に好奇心を持ち、己の感性を磨くのには、こんな旅も必要なのだ。