小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

いわゆる「安倍外交」を検証してみたーー日本にとって本当にプラスだったのか?

2018-10-13 02:44:15 | Weblog
 トランプ大統領と安倍総理は仲がいいと言われている。とりわけトランプ大統領は安倍総理とのゴルフが楽しいらしい。腕前が互角で競争心をあおられるからなのか。それとも勝敗で優越感に浸れるからなのか。
 ゴルフでどっちが勝とうが負けようが、そんなことに関心はないが、二人の関係は「君子の交わり」なのか否かは、今後の日米経済関係に大きく影響する。
 安倍総理は9月28日、アメリカから帰国した。トランプ大統領が日本に求めていた二国間交渉の要求に屈した安倍総理だが、懸念されていた日本車への高関税措置について、トランプ大統領が交渉中は発動しないことを「確認した」と記者会見で胸を張った。
「約束を取り付けた」ではなく「確認した」とはどういう意味か。記者会見で、「確認したとは、どういう意味か? 約束を取り付けたわけではないのか」「どういう方法で確認したのか」といった質問をした記者もいなかったようだ。
 もっとも約束だろうが確認だろうが、トランプ大統領の場合は「朝令暮改」どころか「朝令朝改」の常習犯だから、公式文書にでもしてもらわないと当てにできないことは、安倍総理も百も承知しているはずだが…。ま、「君子の交わり、淡きこと水のごとし」というから、二人の親密度もその程度と思っていれば腹も立たないが…。「君子は豹変す」とも言うしね。

 国連総会でトランプ大統領は国連を否定するかのような演説までした。「アメリカはアメリカ人が統治する。我々はグローバリズムを拒否し、一国主義を採る。今後は我々に敬意を払う国、率直に言えば我々の友人にだけ対外援助を与える」と。さらにトランプ氏は友好国を数え上げたが、その中に中国やロシアが入っていないのは当然としても、同盟国であるはずのドイツや韓国はおろか、誰かが「我が国は100%、アメリカとともにある」とトランプ大統領に忠誠を誓ったほどの日本も含まれていなかった。安倍総理はどんな思いで、会場内に失笑の渦が巻いたトランプ演説を聞いたのだろうか。
「100%、ともにある」とはどういうことを意味するか。世界に向かって「対米属国宣言」をしたに等しい意思表明だ。たとえ夫婦であっても、夫か妻の一方が「100%貴方とともにある」などとは考えもしないだろうし、そんな夫婦関係はあり得ない。私は国粋主義者ではないが、日本の右翼団体や日本会議と称する復古主義団体が、この国辱的発言になぜ沈黙しているのか理解できない。
 トランプ大統領が言う「公正な貿易関係」とは何を意味するか。貿易収支がトントンであれば、それが「公正」なのか。
 だとすれば、もともと安い労働力を求めて「産業の空洞化」に踏み切り、中国を「世界の工場」に育て上げてきたのはアメリカ自身ではなかったか。その結果、アメリカの貿易収支は悪化の一途をたどることになったが、中国に進出したアメリカの大企業は好業績を続けることが出来た。
 アメリカに「右へ倣え」したかどうかは別として、日本も安い労働力を求めて韓国や中国に進出して、アメリカほどではないにしてもやはり「産業の空洞化」への道を歩むことにした。
 技術革新の多くは、生産現場から生まれる。たとえば現在進行形中のIT革命のキーテクノロジーの一つである半導体。半導体産業はアメリカで生まれ、育っていった。当時の日本の通産省が賢明だったのは、「将来、半導体があらゆる産業のキーテクノロジーになる」とみなして国をあげて半導体技術の革新を図ってきたことだ。その結果、短期間で日本の半導体技術はアメリカに追いつき、そして追い越した。
 半導体の生産に欠かせないのは良質な軟水である。ローコストで純水を生産できるからだ。アメリカのシリコンバレーも、日本も、良質な軟水に恵まれていた。ヨーロッパ諸国で半導体産業が育たなかったのは、実はこの一点による。が、日本の半導体産業はいったん世界を制覇したものの、生産現場を韓国に移すようになった。韓国も良質な軟水に恵まれていたからだ。だが、最先端の研究開発拠点は日本に残した。そうすることで、技術革新の主導権は維持できると考えたのだろう。
 が、そうはならなかった。先に書いたように技術革新の多くは生産現場から生まれる。というより、生産現場からしか生まれない。韓国が半導体技術の主導権を握るようになるのは時間の問題だった。日本もかつて巨大な輸出先のアメリカから「物まね産業」と揶揄(やゆ)されながらも、生産現場から生まれた先端技術で世界をリードするようになった。 
 私は30年ほど前、半導体に限らずあらゆる先端技術の分野を取材していた。その取材で痛感したのは、「産業の空洞化は、必然的に技術の空洞化を招く」ということだった。政治が貧困だと、そうした事態を生じる。実際アメリカがそうなったし、日本もアメリカの二歩くらい後から同じ道を歩んでいった。
 世界の歴史において、貪欲でない国家は存在したことがなかったし、また同様に貪欲でない企業も存在しえない。政治の目的の一つ、というより最大の目的は自国の経済発展である。その経済発展の目的が他国の同じ目的と衝突したとき、最終的な解決手段は戦争で決着をつけることだった。かつて帝国主義時代あるいは植民地主義時代も、領土の獲得の目的は経済発展だった。そうした類の侵略戦争は第二次世界大戦後、姿を消したが、それは軍事大国が国連憲章の平和主義を順守してきたからではない。巨大な軍事費と莫大な人的犠牲を払わざるを得ない植民地支配が、必ずしも経済的合理性に適うとは限らないことに、大国がようやく気付いたからに他ならない。むしろ軍事的・政治的に支配するより、独立国として扱いながら経済的に支配し、「資本」という巨大な力で、安価な労働力と豊富な資源を利用したほうが経済的合理性に適うことが分かったからに他ならない。
 その経済的合理性の追求は、今では体制を超えて行われている。冷戦時代、西側先進国は東側の安価な労働力や豊富な資源を自国の経済的目的を達成するための手段として利用しようとはしなかった。共産圏の経済的発展を促し、ひいては軍事的緊張を生むことを恐れたからだ。
 いま西側先進国には、そうした懸念はない。ソ連圏の崩壊によってパワー・バランスが崩れ、冷戦が消滅したからだ。アメリカや日本、韓国などが中国に経済進出を始めたのも、そうした安心感からだった。が、過度に経済的合理性を追求すると、かつて日米間で生じた経済摩擦と同様、経済進出した先の「途上国」だったはずの国からの輸出攻勢に自国の産業が脅かされることになる。トランプ大統領が始めた貿易戦争は、そうした事態への尻拭いを一気にやろうとしたことにある。危険な火遊びだ。
 いま世界は、自由貿易の流れをさらに進めるべきか、保護貿易主義に戻るかの二者択一を迫られている。どちらの政策をとるにしても、メリットを得る産業とデメリットを受ける産業が生じる。国民投票でEUからの離脱を決めたイギリスは、新たな自由貿易圏への参加を目指してTPP加盟を考慮しているようだ。本気なのか、それともEUからの離脱に際して「いいとこどり」のためのEUとの交渉材料にしようとしているのかはわからない。日本のメディアや政府は、イギリスの計算を考えようともしていない。私自身は、EUとの交渉を有利に進めるためのブラフにすぎないと見ている。

 日本はTPPの推進やEUとの自由貿易協定など、自由貿易の流れを促進する経済政策をとってきた。そうした政策は民主党政権時代に確立されたもので、安倍政権になってから始めたことではない。だからそうした政策については与野党の対立はない。国会でも議論さえされずに、当然のように推進されてきた。 いま、そうした流れに安倍総理は竿をさそうとしている。トランプ大統領との首脳会談で、事実上二国間の貿易協定を締結することに踏み切ったからだ。トランプ大統領の得意のブラフ「日本車への輸入関税を現行の2.5%から10倍の25%に引き上げる」に屈したと報道されている。
「やれるものなら、やってみろ」と、中国やEUのように報復処置による対抗策を、安倍総理はなぜとろうとしないのか。
「もうアメリカから防衛装備品を無条件に買うことはやめる。必要な防衛装備品はEUやロシア、中国からも買う選択肢を持つことにする。さらに在日米軍に対する思いやり予算も10分の1に削減する。基地協定を廃止し、EU並みに国内法を優先する。それで基地を引き上げるというなら、それはそれで結構。日本はもはやアメリカの『核の傘』で守ってもらう必要はない。日本の安全保障上、核が必要ということになれば、我が国が核を持つ。核不拡散条約から離脱はしないが、日本も核大国の仲間入りをして自国の安全保障を充実させる」
 私自身は日本の核保有には賛成しかねるが、「日本車の関税を10倍にする」などというブラフには、そのくらいのブラフで対抗してもよかったのではないかと思う。
 あるいは、「アメリカの農畜産物に対する関税を10倍にする」といった中国やEUのような報復処置を発動してもいいだろう。アメリカは食料自給率130%に達しており、余剰の30%分は輸出せざるを得ない。おいしい輸出先の日本が、「アメリカから買わなくても、いくらでも売ってくれる国はある」と居直れば、困るのはアメリカの農畜産業者だ。彼らはトランプ大統領の岩盤的支持層の一つであるだけでなく、伝統的に共和党の支持基盤である。
 世界有数の石油産出国であり、ガソリンがぶ飲みのでかい車しか作ってこなかったアメリカの自動車産業が衰退したのは、日本のせいでもなければドイツのせいでもない。自分たちの経営判断が誤った結果にすぎず、アメリカの対日貿易赤字の80%近くを日本車の輸入が占めているといっても、それはアメリカの消費者の選択であり、日本の消費者がアメ車を買わないのは日本政府の政策のためではなく、日本の交通ルールに従って右ハンドルの車を開発しようとしない米自動車メーカーの怠慢の結果にすぎない。トランプ大統領は「日本は不公平だ」と主張するが、現在日本は輸入車に関税をかけていない。アメリカは日本車に2.5%の関税をかけているが…。
 アメリカ政府がやるべきことは、自動車メーカーに対して「いま国内で生産しているアメ車を買うべきだという傲慢な経営姿勢を改め、輸出したい国の交通ルールや道路など交通事情に合わせた車の開発に力を入れろ」と行政指導することではないか。
 ビジネスでの交渉は、複数の業者での入札を除けば、基本的に売り手と買い手の1対1の「押したり引いたり」のテクニックがものを言う。政治の世界での経験がまったくなく、1対1のビジネス交渉の巧みさで事業を成功させてきた手法を政治の世界に強引に持ち込もうとしても、そんなやり方を認める国は世界中で安倍総理を擁する日本以外にない。安倍総理がトランプ大統領に押し切られて二国間交渉に応じることにしたことに、世界の国々がどう見ているか、「少しは恥を知れ」と言いたい。
 日本が毅然とした態度に出れば、共和党もトランプ大統領を見離しかねない。トランプ氏の危険な賭けに、アメリカ人がいつまでも黙ってついていくとも考えられない。安倍総理がトランプ大統領との蜜月関係の維持に固執すればするほど、安倍総理はいつまでもトランプ氏の手のひらで踊ることになり、日本は「アメリカの属国的地位」からいつまでたっても抜け出せないだろう。

 ついでに竹島や尖閣諸島について日本政府は公式に「日本の領土」という認識を示している。竹島の場合は現在、韓国が実効支配しており、日本からすれば「不法占拠」ということになる。軍事的に奪還するのが難しければ、「そういう国とはお付き合いできません」と国交を断絶するのが国際常識だ。10億円という大金を払っても慰安婦問題の解決には熱心な日本政府だが、日本の国土が不法占拠されていても何も言えない。それなら「日本の国土」だと宣言したり教科書に掲載させたりしなければいいのに…。
 尖閣諸島も、元の所有者から日本政府が買い取って国有地にした。安倍総理はオバマ大統領に次いでトランプ大統領からも、「尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用地域だ」との言質を取り付けた。が、それはその時点の米大統領の気まぐれ的口約束にすぎず、正式な約束事になっているわけではない。ということは、大統領が代わるたびに、日本の総理は頭を下げて実質的に無意味な言質を取り続けなければならないことを意味する。なぜ米大統領の言質が有効なうちに、日本は尖閣諸島を実効支配しようとしないのか。
 もっとも、外務省の中国・モンゴル1課の説明によると、「日本の領土ですから、そう表明することで実効支配しているという認識です」ということだ。そんな理屈が通るなら、韓国が事実上実効支配しているように私には見える竹島も、実際には日本が実効支配しているということになる。ただし、中国・モンゴル1課によれば、「竹島は私どもの担当ではないので、私が云々することは出来ない」。かつて評論家の竹村健一氏が「日本の常識は世界の非常識」という名文句をつくったが、日本の外務省の「認識」は日本国民のだれも理解できないだろう。あっ、安倍さんは別か…。
 日本はもう一つ領土問題を抱えている。北方領土だ。ロシアに「返還」を求めている以上、常識的には日本の領土と政府は考えていると思われるが、竹島や尖閣諸島のように日本の領土とは教科書への記載は求めていない。日本にとって北方領土はどういう位置づけなのか。そうした疑問すら提起しないメディアは、自らの言論の場での使命をどう思っているのか。
 尖閣諸島問題に戻る。アメリカの大統領が代わるたびに、日本の総理大臣は大統領に頭を下げて、「尖閣諸島は日米安保条約5条の適用地域だ」という言質を取らなければならなくなる。つまり、そのたびに日本はアメリカに新たな借りを作ることになる。どうやって、その借りを返すのか。
 防衛装備品をさらにアメリカから購入することによってか。それとも、沖縄県民の悲鳴にも近い辺野古基地建設中止の願い(普天間基地の移設ではない。「普天間基地返還=辺野古基地移設」は一種のトリックだ)を踏みにじることによってか。あるいはまるで日本がアメリカの属国であるかのような(少なくとも外国から見れば、そう見える)基地協定を存続することによってか。
 安倍さんがオバマ氏やトランプ氏に頭を下げて尖閣諸島についての言質を取るたびに、メディアの世論調査で内閣支持率は上昇するが、そうしたことを今後の総理も続けなければならなくなったという、悪しき前例を安倍さんは残してしまったことになる。そして、何の意味も持たない言質を取るたびに、日本はアメリカに借りを作り、返し続けなければならなくなった。
 私は、いわゆる「安倍外交」のすべてを否定するわけではないが、少なくとも対米外交については、これほど屈辱的な姿勢をとり続けた総理を、かつて見たことも聞いたこともない。
 
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