小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

アメリカが新疆ウイグル人権侵害問題で北京オリンピックの外交的ボイコットを呼びかけた本当の理由

2022-01-25 01:21:34 | Weblog
【特別追記】ウクライナ情勢でバイデンはなぜへっぴり腰に変わったのか~
ウクライナ情勢をめぐって緊迫状況が続いている。ウクライナはもともとは旧ソ連邦の構成国であり、ワルシャワ条約機構の最前線国だった。そのためウクライナにはロシア人も多く住んでいる。
旧ソ連が崩壊後、ウクライナは独立したが、親ロ派政権が続いていた。が、親ロ派政権の汚職問題もあって政権が親ロ派から親EU派に変わった。その後、2014年に、ロシア人が圧倒的多数を占めているクリミア自治共和国が、住民投票を経てウクライナから分離独立、ロシアへの編入を決めた。さらにロシア人住民が多い東部の2州(ドネツク州・ルハーシンク州)もウクライナから分離独立の動きを始めた。そうしたロシア人住民の多い地域でのウクライナからの分離独立の動きの背景にロシアの関与がなかったとは、多分言えないと思う。
いまウクライナで危機が生じているのは、親EU政権のポロシェンコ大統領がNATOに参加する方針を打ち出したためだ。
NATOとEUとは違う。そのことを明確に認識しておいてほしい。EUはヨーロッパの経済圏を意味し、NATOは旧ソ連圏に対する軍事同盟連合である。NATOは旧ソ連圏の軍事的圧力に対抗するために結成された、当時の西側軍事同盟であり1954年に結成された。旧ソ連が主導して結成されたワルシャワ条約機構はNATO結成の翌年の1955年である。この両軍事同盟の成立の時間差から考えても、NATOは共産主義勢力の西側ヨーロッパへの浸透を防ぐために結成されたと考えるのが文理的である。一方、旧ソ連圏にとってはNATOが軍事的脅威に相当し、対抗するための軍事同盟のワルシャワ条約機構を結成したと考えるべきだろう。
言っておくが、私は本稿でも書いているように、どちらを支持しているわけでもない。体制についていえば、私は共産主義体制には反対である。が、民主主義の名のもとにおかしな政治を行っている状況に対しては厳しく断罪している。本稿では、日本の安全保障をアメリカに頼ることがいかにリスキーかということを、本稿の前のブログの「憲法改正論」とともに書いている。
そのうえで、いかなる体制の国でも、他国からの軍事的脅威に対する対抗手段は否定すべきではないと主張した。本稿では、北京オリンピックの外交的ボイコットに関していえば、欧州議会が中国の新疆ウイグルでの人権侵害を口実にしたアメリカに対して香港での人権侵害を決議したことを評価したが、日本はさらに踏み込んで国会でチベットやモンゴルに対する人権侵害も非難する決議をした。私は寡聞にしてチベットやモンゴルに対する人権侵害の実態を知らないので何とも言えないが、日本が矜持をもって人権侵害を問題視するならアメリカでの黒人迫害の様々な事件に対しても「遺憾の意」くらいは表してもらいたいと思っている。
それはともかく、ウクライナ危機に関していえば、私は「キューバ危機」を思い出した。当時、アメリカはCIAがキューバのカストロ政権を転覆させるため、様々な工作を行っており、キューバがアメリカの軍事的圧力に対抗するためミサイル基地の建設の乗り出し、旧ソ連がキューバを支援するためミサイル基地建設のための資材(ミサイルそのものも含んでいた可能性も高い)を搬入しようとしたとき、時の米大統領のケネディが「ソ連との戦争をも辞さず」とソ連・フルシチョフと強談判してソ連からの搬入を阻止したことが頭によぎった。冷静に考えれば、キューバがアメリカと戦争して勝てるわけがなく、北朝鮮もアメリカと戦争して勝てるわけがないことは12歳以上の子供なら常識でわかる話だ。
日本は「12歳以下の子供」(マッカーサー発言)だったから、勝てる見込みのないアメリカとの全面戦争を始めたが、世界の国々は日本のバカげた戦争から学んでいる。北朝鮮の核ミサイル開発はアメリカと戦争するためではなく、アメリカの敵視政策・軍事的脅威に対する、あくまで対抗手段でしかすぎず、だから日本が北朝鮮の暴発をやめさせるにはアメリカに対して「北朝鮮に対する敵視政策・挑発行為をやめてくれ」と主張すべきだと本稿で書いた。
同様に、ウクライナがNATOに加盟するということになれば、ロシアに対する軍事的敵視政策をとることを決めたということを意味し、ロシアにとっては黙視できるわけがない。キューバ危機と同様、ロシアと隣接した地域にミサイル基地が建設されることを意味するからだ。
ウクライナ政権にとっても、これ以上ロシア勢力の浸透を許すわけにはいかないという思いもあるだろう。が、いきなりNATOに加盟するということは、あからさまなロシアに対する敵視政策であり、核禁条約については日本政府が「核保有国と非保有国の橋渡し」に徹するというなら、ウクライナ政府に対して「EU(経済圏)への加盟にとどめ、軍事同盟であるNATOへの加盟は考え直してほしい」と要請すべきだろう。
それにしてもアメリカ・バイデンの豹変にはあきれた。当初は「軍事介入辞さず」と強硬姿勢を示していたが、一気に「経済制裁」に後ずさりしてしまった。やはりアメリカには「モンロー主義」(自国に直接の利害関係がない国債紛争には関与せず)が根強く染みついているようだ。アフガニスタンからの撤退騒ぎもそうだが、日本有事でもアメリカにとって直接の利害関係が薄ければ、おそらく在日米軍は総撤退するだろう。
私は別に反米主義者ではないが、アメリカという国はそういう国だということを、私たちは胸に刻み込んでおいた方がいい。(1月28日)



北京冬季オリンピック開催が目前に迫ってきた。米バイデン大統領が、習近平政権による新疆ウイグル自治区での人権問題を重視して北京オリンピックの外交的ボイコットを表明、EU、カナダ、オーストラリアなどが次々に同調、中国との関係悪化を懸念してなかなか態度を鮮明にしなかった日本も、昨年12月24日になって滑り込みで同調、政府代表団を派遣しないことにした。ただし、日本は政府代表団の代わりに橋本聖子・東京オリンピック組織委会長、山下泰祐・日本オリンピック委員会会長、森和之・日本パラリンピック委員会会長を派遣することにした。
が、アメリカが新疆ウイグルでの人権問題を「口実」にした外交的ボイコットには、私は疑問を抱かざるを得ない。新疆ウイグルでの強制労働や虐殺は少なくとも2019年には明らかになっており(ただし外国の報道陣が入れないため、実態は不明)、さらに翌20年5月には習近平政権が「国安法」(香港国家安全維持法)を成立させ、それまで「一国二制度」のもとで政治結社や思想・言論の自由が曲がりなりにも保障されていた香港での人権弾圧の状況は私たちもテレビの映像で目に焼き付いている。実際、欧州議会は昨年7月アメリカに同調して新疆ウイグルの人権問題で外交的ボイコットを議決したが、今年1月20日に香港の人権問題も外交的ボイコットの要件として再決議した。EUの方が筋が通っている。
なぜアメリカは今頃になって新疆ウイグルの人権弾圧を理由に北京オリンピックを外交的ボイコットすることにしたのか。それしか口実にできない事情があったからではないか。そう確信できる問題が実はある。

●新疆ウイグル自治区とは~
まず「新疆」とは地域の名称であり、「ウイグル」は新疆地域で多数を占める民族の名称である。日本なら「沖縄琉球」とでも言えばいいか。つまり沖縄は沖縄県と言う地域を意味する名称であり、その地域に住む住民の多数は日本人ではあるが琉球民族という関係と理解してもらえればいい。
新疆は少なくとも2500年以上の歴史を持つと言われており、モンゴル・ロシア・カザフスタン・アフガニスタン・パキスタン・インドなど多くの国と国境を接しており、国境の大部分は標高数千メートルの山脈である。また新疆のアクサイチン地域はインドとの間に領有権問題を生じている。
18世紀に中国の清王朝に征服され、清後は蒋介石の中華民国の支配下になり、その後、毛沢東の中華人民共和国(中国)に組み込まれた。日本による朝鮮併合のような感じだ。なお、かつては日本のメディアは中国を「中共」と称していた。中華人民共和国を略せば「中共」が正しい。
新疆は綿産業が盛んで、日本のユニクロも含め世界のアパレルメーカーの多くが新疆産の綿製品を購入していると言われるが、ここ数十年、新疆では豊富な石油・鉱物資源が発見されており、中国最大の天然ガス産出地でもある。
新疆は当初、中国の「省」だったが、民族融和のため1955年「自治区」に指定し漢民族が多数流入し始めた。中国政府も新疆の近代化を促進する政策をとってきた。いまでは新疆の住民2500万人のうち4割を漢民族が占めるに至っているようだ。が、新疆の多数民族であるウイグル族は大多数がイスラム教徒であり、とくに文化大革命のときには宗教を否定しモスクを大量破壊した紅衛兵との間に大きな衝突が何度も生じている。そういう過程を経て胡錦涛が2003年、高等教育において少数民族固有の言語使用を禁止し、公用語も漢語に統一した。当然、ウイグル族が反発して独立運動もしばしば発生するようになった。
そうした状況下で誕生したのが習近平政権である。習近平はまず「汚職の撲滅」を口実に政敵を次々に粛清、「毛沢東二世」を目指すほどの独裁権力を手に入れた。時期は不明だが、新疆に「強制収容所」を設置し、ウイグル族の思想改造に乗り出したのである。一説には強制収容所に収容されたウイグル人は延べ100万人に達しているという(「強制労働」については実態が不明)。
こうして習近平が、日本が朝鮮併合時代に行った「朝鮮人の日本人化」政策と同様の「ウイグル民族の中国人化」を目指しだしたのが、そもそも新疆ウイグル人権問題の発端である。
もちろん私は習近平政権の人権侵害政策については新疆ウイグル問題だけでなく、香港問題も含めて一切支持するつもりはない。が、なぜ新疆ウイグルの人権問題が突如、北京オリンピックの外交的ボイコットに結びつくのか、それが大きな問題なのだ。
もし本当に人権問題で習近平・中国を国際的に孤立化させるというなら、いっそのこと北朝鮮と同様の経済制裁を中国に対して発動する方がよほど効果は大きい。が、北朝鮮を孤立化しても世界経済はほとんど影響を受けなかったが、中国を孤立させれば、アメリカも日本もEUも経済的に大打撃をこうむる。いまや先進国のあらゆる産業は、中国を抜きにしては生き延びることができないからだ。

●アメリカはなぜ中国の共産化を防げなかったのか?
習近平政権の目標はアメリカを凌駕する中国の覇権をアジアで確立することのようだ。南沙諸島の軍事基地化などの海洋進出や香港の「一国二制度」の破壊による「中国化」もその一環。新疆ウイグルの「中国化」も同じ。そして最後の総仕上げが「台湾の中国化」である。そういう習近平の狙いはアメリカも分かっている。分かっていないのは日本だけだ。

日本の敗戦後、中国の内戦で蒋介石率いる国民党軍(中華民国政府軍)と毛沢東率いる共産勢力(人民解放軍)の戦いで、アメリカがなぜ国民党軍を軍事支援しなかったのか。
近現代歴史家と称する学者や小説家のほとんどが、実はこうした疑問を抱いたことがないようだ。
私はこう考えている。
日本がいたずらに太平洋戦争を長引かせ、とくに沖縄戦では米軍にも多くの犠牲者を出したことで、日本が無条件降伏したときには米軍自体が疲弊しきっていて、中国の内戦に軍事介入できる余力がなかったことが最大の理由。
日中戦争が始まって以来、中国で敵対関係にあった、孫文が創設した国民党と共産党が協力して関東軍と戦った(国共合作)。当時は共産党勢力より中華民国政府軍の方が圧倒的に戦力に勝っており、連合国も中華民国を中国の正当な国家とみなしていた。実際日本に無条件降伏要求を突き付けたポツダム宣言はルーズベルト・チャーチル・蒋介石3人の連名で発されている。また戦後の45年10月に発足した国際連合の常任理事国には国民党政権による中華民国が名を連ねていた。
が、46年6月には政府軍(中華民国軍)と共産党勢力(人民解放軍)が激突し、中国内戦が始まった。対日戦争では政府軍が前線で関東軍と戦い、人民解放軍はもっぱら後方支援に回っていた。そのため日本が降伏したとき、政府軍と人民解放軍の戦力は逆転していた。政府軍は関東軍との戦いでかなり疲弊していたのに対して人民解放軍は後方支援に徹し、戦力を維持していたからだ。
米ソもそれぞれ武器支援など双方の勢力を後方支援してはいたが、直接的軍事介入をするには米軍もソ連軍も疲弊しきっていた。もし、日本がミッドウェー海戦の敗北(42年6月)かサイパン島守備隊3万人全滅(44年6月)の時点でアメリカに降伏していれば、米軍は沖縄上陸作戦で大きな犠牲を払わずに済み、人民解放軍による中国支配を軍事的に防げていたかもしれない。
実際、第2次世界大戦が終結したのち生じた朝鮮半島での共産勢力の攻勢やベトナムでの共産勢力の拡大に対してアメリカは直接軍事介入している。ある意味では日本があのバカげた戦争を原爆を落とされるまで続けた結果、共産勢力の拡大を招いたと言えなくもない。
ちなみに戦争とは国と国の戦いを指す名称である。本来なら内戦である朝鮮戦争やベトナム戦争に「戦争」という名称が冠せられることになったのは、両方ともアメリカが戦争当事国として軍事介入したからである。だから中国での政府軍と人民解放軍との間に行われた内戦には「中国戦争」という名称がついていない。なぜ、そんな単純なことに誰も疑問を呈さないのか。
その単純な疑問を抱くだけで、アメリカが北京オリンピックを外交的ボイコットに踏み切った理由が分かるはずなのだが……。

●アメリカが北京オリンピックを外交的ボイコットした本当の理由
さて中国の内戦は先に書いたような事情で毛沢東率いる人民解放軍が蒋介石の中華民国政府軍を圧倒的に破り、49年1月には北京を制圧、10月1日には中華人民共和国の成立を宣言した。一方、中華民国政府軍は12月7日、台湾に逃れ、台湾で中華民国政府を樹立した。
実は台湾の歴史は極めて複雑である。古代中国の属国的立場だった時代もあれば、1624年からオランダの東インド会社が支配していた時期もあり、中国本土で明朝滅亡後、清朝(満州族の王朝)が中国を支配した時期には台湾は「化外(けがい)の地」(皇帝が支配する領地ではないという意味)という扱いだった時期もあり、台湾が歴史的に見て中国の一部と言えるかどうか疑問は残る。
日本も日清戦争の勝利によって台湾を清から割譲され統治していた時期もあり、台湾と中国の関係は琉球(沖縄)と日本の関係に近いかもしれない。いずれにせよ、台湾を独立国とみなすか、中国の領土とみなすかはそれぞれの国の台湾との関係、中国との関係によって異なっている。
実は戦後、アメリカも日本も基本的に台湾を独立国として扱ってきた時代があった。が、1970年代初頭に世界にアメリカ発の激震が走った。いわゆる「ニクソン・ショック」である。ニクソン・ショックには二つあり、一つ目は71年8月15日、アメリカが金とドルの交換を停止して固定相場制が崩壊、一時的な固定相場制を経て現在の変動相場制に移行したこと。もう一つは翌72年2月21日、ニクソンが電撃訪中を行い、中国との国交正常化を実現したことである。
この米中国交正常化は、ハーバード大教授であり、大統領補佐官だったキッシンジャーが極秘に中国を訪問(71年7月)、周恩来首相と会談して米中国交正常化への道を切り開いたとされている。そのとき、キッシンジャーが周恩来の要求に応じて、台湾は中国の一部であるとする「一つの中国」を受け入れたとされている。もちろんキッシンジャーが独断でそんな重要な外交案件を決められるわけはなく、水面下で双方の受け入れ条件に付いての合意があったはずだ。
この米中国交正常化は日本の頭越しに行われ、日本は蚊帳の外だった。慌てて日本は田中角栄総理が72年9月29日に訪中して周恩来と会談、「一つの中国」を受け入れて日中国交正常化を実現した。今年は日中国交正常化50年に当たる。
問題は「一つの中国」が何を意味するかである。この問題はややこしすぎるので、この稿では深入りしないが、アメリカも日本もそれまであった台湾の外交機関(大使館・領事館など)を廃止し、正式な外交機関の代わりにアメリカは「米国在台協会(ATT)」を、日本は「日本台湾交流協会」を設置した。
問題は米中国交正常化の後、アメリカは中華民国との間での「米華相互防衛条約」の後継法と言える「台湾関係法」を議会で成立させ、台湾との軍事同盟関係を維持してきていることだ。つまりアメリカは中国に対しては「一つの中国」を容認し、台湾に対しては同盟関係を維持するというダブル・スタンダードを中台政策の基本にしたのである。
すでに述べたように、習近平は「毛沢東二世」を目指してアジアでの覇権を確立しようと躍起になっており、新疆ウイグル族の「中国人化」や香港の「中国化」、さらに南沙諸島の軍事拠点化などの海洋進出を含む一連の強大化路線を進めており、台湾の「中国化」を最後の総仕上げ目標にしている。
一方、アメリカにとっては東シナ海・南シナ海における覇権だけは守り抜かなければならないという立場を維持しており、そのためにも「台湾の中国化」だけは絶対に阻止したいというわけだ。そのため、いま台湾を巡って米中のにらみ合いが続いており、中国が台湾に対して挑発的な軍事演習を行う一方、アメリカは台湾の防衛力強化に必死だ。
が、国交正常化に際してアメリカも日本も「一つの中国」を容認しており、そのため習近平政権はアメリカに対して「内政干渉だ」と強く非難している。そのため台湾問題をめぐって北京オリンピックを外交的ボイコットするのは、アメリカとしても国際的理解が得られにくいと考え、いまさらと言えなくもない新疆ウイグルの人権問題を外交的ボイコットの口実にせざるを得なかったというわけだ。人権問題を口実にすれば、北京オリンピックの外交的ボイコットも国際的理解が得られやすいと考えたのだろう。

●「台湾有事は日本有事」か?
以上述べたことでアメリカの北京オリンピック外交的ボイコットの目的が習近平政権の「一つの中国」作戦を未然に防ぎ、東シナ海・南シナ海におけるアメリカの覇権を維持するための手段であることが明確になったと思う。いわゆる「民主主義サミット」も、アメリカに同調する国と中国に同調する国を二分するための「踏み絵」なのだ。
だから必ずしも民主的な国家だけが招待されたわけではなく、アメリカに同調する国は独裁政治を行っている国も招待されている。北京オリンピックの外交的ボイコットの呼びかけも、いざ有事になったとき、政治的にも軍事的にもアメリカが主導する多国籍軍に参加しろとの「踏み絵」だ。
中国でも今、さすがに習近平の強硬路線に対する批判勢力が生まれつつあるという情報もちらほら出てきた。中国では言論の自由がないのは自明だが、習近平批判の論調を書く政府系新聞も出てきている。それどころか、習近平暗殺計画があったことも政府系新聞が明らかにした。習近平の権力も絶対ではない。
習近平もバカではないから、国際的非難が殺到する「一つの中国」作戦を強行するようなことはないと思うが、それはあくまで習近平が理性的であることを前提にした楽観的見方に過ぎないかもしれない。習近平があくまで権力の維持に固執した場合、「台湾有事」はありえないことではない。
そして最悪のケース、つまり習近平がアメリカとの軍事衝突も辞さずと「一つの中国」作戦に踏み切ったケースも一応想定しておく必要がある。そして実際に「台湾有事」が生じたとき、「日本有事」の可能性も。
安倍元総理は昨年12月1日、台湾の民間シンクタンクが主催したシンポジウムに日本からオンラインで参加し「新時代の日台関係」と題する基調報告を行った。その中で安倍氏は「日本と台湾がこれから直面する環境は緊張をはらんだものとなる」「尖閣諸島や与那国島は台湾から離れていない。台湾への(中国の)武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こす。台湾有事は日本有事であり、日米同盟への有事でもある。このことの認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない」と語った。
私も実は安倍氏とは違う理由で間違いなく「台湾有事は日本有事になる」と考えている。
もし、習近平・中国が力で「一つの中国」を実現しようとした場合、ダブル・スタンダードの中台政策をとってきたアメリカがかなりの確率で台湾防衛のために軍事介入するからだ。その場合、軍事介入する米軍の主力は沖縄の米軍基地に属する兵力になる。
これまでも私は沖縄の米軍基地が、日本にとって最大の安全保障上のリスクになると主張してきた。普天間基地の辺野古移設について、日本政府は「日本の安全保障上、辺野古移設以外の選択肢はない」と繰り返し主張してきた。
本当にそうか。
沖縄県の総面積は日本全体のわずか0.6%を占めるに過ぎないが、その沖縄県に在日米軍基地の70.6%(総面積比)が集中し、基地数も31を数える。日本防衛のために沖縄にそこまで米軍基地を集中させる必要性があるか否かは、中学生でもわかる話だ。
今年5月に沖縄返還50年を迎えるが、アメリカが日本に沖縄を返還する際、本土の米軍基地のかなりを沖縄に移設している。そもそもアメリカは朝鮮戦争時、在日米軍を朝鮮戦争に総動員して日本を丸裸にしたことが、日本独立を速めたといういきさつもある。そうした経緯から見ても、米軍基地を沖縄に集中させることにアメリカがこだわる理由は、日本防衛のためではなく、東シナ海・南シナ海での覇権を維持するための戦力重点配備が目的であることは明らかだ。
だから台湾有事にアメリカが軍事介入する場合、その戦力は沖縄の在日米軍になる。当然、中国は沖縄の米軍基地へ総攻撃をかける。まさに「日本有事」である。安倍氏の論理ではなく、沖縄の米軍が中国と軍事衝突した場合、間違いなく「日本有事」になる。だから私は、沖縄の在日米軍が日本にとって安全保障上の最大のリスクだと主張してきた。
改めて明確にする。沖縄の在日米軍の目的は日本を守ることではない。

【追記】NHKの偏向報道がひどくなる一方だ
1月22日のNHK『ニュース7』が核禁条約について報道した。事実についての報道は別に問題があるわけではないが、NHKはこのニュースの最後を一橋大学教授のコメントで締めた。
そのコメントは「日本は中国の核の脅威にさらされている」という核禁条約反対のコメントだった。NHKによる印象操作が明確になった瞬間である。
日本が中国の核の脅威にさらされている事実があってのことならいいが、そんな事実はまったくない。実際、中国が日本に対して敵視政策を行使したこともないし、核で脅した事実もない。ウルトラ右翼政治家の安倍元総理や高市氏でも、中国の核を脅威に思ったりはしてはいないと思う。現に、安倍氏は習近平を国賓として招待する予定だったくらいだ(コロナ禍で延期にはなっているが)。一橋大教授がどういう思想を持とうが、それは自由だが、あまりにも偏見に満ちたコメントを、なぜNHKが意図的に報道したのか。
同盟国であり友好国でもある中国やロシアの核の傘に守られていない(と思っている)北朝鮮が、アメリカの敵視政策に対して「やるならやってみろ。ただでは済まないぞ。もしアメリカが我々を攻撃するなら、日本が真っ先に火の海になる」と脅したのは事実だが、中国はそんな脅しもしていない。だいいち、NHKは「日本などアメリカの同盟国・友好国はアメリカの核の傘で守られている(と思っているだけだが)」と報道するが、それは大多数の日本人の共通認識だからやむを得ないとしても、実際に日本を敵視している国がどこにある?
日本が領土問題を抱えている国は韓国(竹島)、中国(尖閣諸島)、ロシア(北方領土)だが、自国領土と主張していながら竹島は韓国に実効支配されており、北方領土はロシアに占領されたままだ。オバマ以降歴代アメリカ大統領が「安保条約5条の範疇だ」とリップサービスしてくれている尖閣諸島ですら、日本は実効支配すらできない
(アメリカが反対しているから)。そんな国を、どういう口実で核攻撃する国があるというのか…。
日本政府は「核保有国と非保有国の橋渡しをする」と口先では言うが、具体策は何もない。せめて、日本自身は核を保有しなくても、非核保有国が核保有国の脅威にさらされた場合、その非保有国に対して核開発のための技術的・物質的(プルトニュームの無償提供など)援助をして核保有国からの脅威を軽減するというなら、「橋渡し」の意味も分からないわけではない。
しかし日本政府は核保有国のアメリカの敵視政策に悪乗りして、アメリカの核の脅威に屈しろと主張しているに過ぎない。しいて言えば、アメリカの核政策の「露払い」役に徹しているようにしか見えない。
日本が、本当に北朝鮮の核の脅威を排除したいのなら、アメリカに対して「北朝鮮への経済制裁などの敵視政策をやめてくれ。アメリカのおかげで日本は北朝鮮の核・ミサイルの脅威にさらされている。アメリカが北朝鮮に対する敵視政策をやめてくれたら、日本が責任をもって北朝鮮を平和国家として発展できるよう努力する」と主張すべきではないか。
実際問題として、アメリカが核の傘で守ってくれているというのは、独りよがりの思い込みに過ぎない。実際、そんな約束は、アメリカは日本に対しても、また他の同盟国・友好国に対しても、してくれていない。だいいち、沖縄返還のとき、日本政府はアメリカに対して核の持ち込みをさせないと約束したではないか。在日米軍基地から核攻撃できるならいざ知らず、米本国から報復核ミサイルを発射しても、多分敵国に撃墜されるだけだ。
それに、アメリカは北朝鮮の核保有には制裁を加えるが、イスラエルやインド、パキスタンの核保有は事実上容認している。アメリカが敵視している国ではないからだ。むしろイスラエルの核はイスラム過激派にとって脅威になり、インドの核は中国に対するけん制になるからだ。そんなご都合主義のアメリカ核政策に本気で頼っているお人好し国家が日本であり、公共放送と称しているNHKなのだ。