小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

誤報を訂正しないNHKは公共メディアと言えるか?

2021-05-27 00:53:08 | Weblog
メディアにとって「誤報」はつきものである。なぜ「つきもの」か。
まず「誤報」と「ねつ造記事」とは天と地ほどの違いがあることをご理解いただきたい。「誤報」は意図せざるケアレス・ミスによって生じる。人間のやることだから、ある程度は仕方がない。
が、「ねつ造」は、明らかに何らかの意図(多くは政治的意図)によってつくられる。「ねつ造」かどうかを見極めることは難しい。明らかなでっち上げは最も悪質な「ねつ造」であり、まず大手メディアが手を染めることはない。
たとえば、いま東京オリ・パラ開催を巡って世論が大きく分かれている。が、開催派は少数であり、中止・延期派があらゆるメディアの世論調査でも明らかに多数である。そういう場合、例えば政府筋が開催すべきか否かの公聴会を開いたとしよう。当然両論が飛び交う。その公聴会についてメディアが報道する場合、政府側の主張だけを取り上げ、最後に「反対の意見もありました」と報道した場合、私は「ねつ造報道」と解釈する。NHKの報道姿勢を検証する。

●私は何度も「誤報訂正」を要求したが…。
まず単純なケアレス・ミスによる「誤報」についてのNHKの対応である。ケアレス・ミスと私は考えているから、何らかの政治的意図が働いたとは考えていない。誤報は5月24日のNHK『ニュース7』の冒頭報道で生じた。
いまコロナワクチン接種は高齢者レベルに入っている。が、優先接種に対象である「医療従事者等」の接種もまだ終了していない。このワクチン接種の遅れを報じたのが24日のNHKだ。当日の『ニュース7』の冒頭で、NHKはこう報じた。
「約480万人の医療従事者のうち1回目の接種を受けた割合は82.6%、2回目の接種を受けた人は51.5%にとどまっている」
これが実は誤報なのだ。まず優先接種の対象は「医療従事者」ではなく「医療従事者等」である。厚労省が名で「医療従事者」ではなく「医療従事者等」としたのか。私は4月19日付ブログ『コロナワクチン問題で厚労省にコケにされたメディアの無能を追及する』で、厚労省が優先接種の対象者に「等」を付け加えたのかを明らかにし、NHK、朝日、読売には伝えた。その後、NHKだけが報道番組で「医療従事者など」と報道するようになったが、なぜ「など」を付け加えることにしたかの説明は一切ない。そこには、明らかに政治的意図が働いていると考えられる。
ただ24日の『ニュース7』で「など」を付け加えなかった理由は分からない。とくに政治的意図を働かせなければならないようなニュースではないから、アナウンサーの思い込みによるケアレス・ミスだったと私は思っている。
問題は接種率が誤報だったことである。私は翌25日の午後3時半ごろNHKふれあいセンターのコミュニケーター(窓口担当者)にそのことを伝え、直ちに誤報の訂正をしてほしいと頼んだ。が、その日の『ニュース7』では誤報の訂正は行われなかった。そのためスーパーバイザーに「なぜ誤報の訂正をしなかったのか」と電話した。スーパーバイザーは「現場には伝えています。訂正の必要なしと現場が判断したのではないでしょうか」と答えた。
NHKの報道現場にはそんな権限はない。現に、森友学園問題を事実上最初にキャッチしたのはNHKの相澤冬樹記者だった。が、相澤記者のスクープ報道は上層部の指示によって握りつぶされ、相澤氏は閑職に左遷された。氏はNHKを退職し、いまは大阪日日新聞の記者兼編集局長として自死した赤木俊夫・元財務省近畿財務局職員の妻が、国と公文書改ざんを命じたとされる佐川宣寿・理財局長を相手取って起こしている訴訟の相談相手にもなっているという。
相澤氏がつかんだ特ダネを政治的配慮によって潰した件を考えても、現場の判断で誤報を握りつぶすようなことができるわけがない。おそらく報道局長の判断だと私は思っている。
さらに26日にも再度、誤報訂正を要求したが、無視された。
さてどこが誤報だったのか。
じつは最新の「医療従事者等」の接種数は厚労省ではなく首相官邸のホームページに記載されている。24日の時点では21日までの接種者数しか公表されていず。その日の公表データはこうだ。
1回目の接種者数:3,965,411人
2回目の接種者数:2,472,976人
これらの接種者数が分子で、優先接種対象者数が分母にして百分率(接種率)が計算できる。分母の優先接種対象者数をNHKは480万人として計算した。そうすると接種率は1回目が82.6%、2回目が51.5%となる。この計算自体は間違っていない。
が、実際の優先接種対象者数は480万人ではなく470万人なのだ。で、分母を470万人にして接種率を計算すると、1回目は84.37$、2回目は52.61%となる。明らかにNHKの誤報である。私がウソをついていると思われたら、厚労省でも厚労省ワクチンコールセンターにでも確認してもらいたい。私が間違えていたら、首をつって自死する。

●なぜNHKは横浜IR誘致の応援団になったのか?
いま横浜市民はカジノを含むIR誘致を巡って意見が二分している。東京オリンピックの開催を巡って国民の意見が二分しているのと同じ状況だ。
いま元日弁連会長の宇都宮健児氏がオリンピック中止のオンライン署名活動を行っていて、25日現在、38万7000票を超えたという。が、この署名活動で何票集めようと、はっきり言って何の意味もない。法的拘束力がまったくないからだ。
一方、横浜市では住民投票を求める署名活動を行った。この署名活動は選管に届け出て、署名集めも受任者としての資格を与えられた人しか行えない。そのうえ受任者は自分が住んでいる区内でしか署名集めはできず、また署名自体も自分の住民票がある区の署名以外は無効になる。そのくらい法的拘束力のある署名は厳格なのだ。
その署名は最終的に193,193票に達し、法定数の3倍を超えた。が、実際に住民投票に持ち込むには横浜市議会での議決が必要で、林市長は「住民投票が行われた場合、市民の意思に従う」と公言していた。が、実際に法定数をはるかに上回る票が集まったことから、市議会に上程するに際して「住民投票を実施することには意義を見出しがたい」との意見を付し、市議会で住民投票の実施を否決した、
この横浜市民を二分するカジノを含み誘致問題を2月6日、NHKが、当日横浜市が行ったオンライン説明会を報道した。その中でNHKは一方的に市の説明を代理報道し、最後に「一方、カジノ誘致に反対する意見も寄せられました」とアリバイつくりのひと言をアナウンスしただけだった。
なお、このNHKの報道姿勢については翌2月7日のブログ『とうとうNHKは横浜カジノの応援団に堕した』で告発し、公正さに欠ける報道としてBPO (放送倫理・番組向上機構)に告発した。
このケースは明らかに政治的意図を持った悪質な報道であり、私は「ねつ造報道」と位置付けている。
なぜなら、例えば東京都が主催して「オリンピック開催についてのオンライン説明会」を行ったとして、推進側の主張にほぼ報道内容のすべてを割き、最後に一言「一方、オリンピック開催に反対する意見も寄せられました」と報道するのと同じだからだ。あたかもカジノに賛成する人、オリンピックに賛成する人の方が圧倒的多数を占めているかのような報道姿勢だからだ。


【追記】NHKふれあいセンターに何度も通告しているにもかかわらず、今日27日の『ニュース7』でもNHKは誤報の訂正をしなかった。ふれあいセンターは私の主張をフェアに理解してくれている。ふれあいセンターは私の「誤報の指摘」を理解し、報道局に伝えているという。
NHKの報道局が腐りきっていることは、森友学園問題をスクープした相澤冬樹記者の記事を握りつぶし、あまつさえ記者職を外したことは今回のブログでも書いた。だから、NHKに記者は必要ない、通信社が配信する記事をアナウンサーが読み上げるだけで十分、とブログで書いたことさえある。
が、せめてケアレス・ミスの報道を私から指摘され、すでに報道局は厚労省に事実を確認しているはずだ。私は「私が間違っていたら首をくくる」とまで書いた絶対自信のある事実だ。厚労省に何回も確認しているからだ。
NHKの記者がケアレス・ミスを犯した事情は理解できないでもない。政府は最初、優先接種の対象「医療従事者等」の人数について480万人と公表していたからだ。だから私も前に書いたブログ記事では480万人としていた。が、その後、その人数が470万人に減った。減った理由についても私は何度も厚労省に問い合わせたが、教えてもらえなかった。
これは私の推測だが、メディアとくに民放がワクチンの副作用について国民の不安感を煽るような報道をしていたため、いったん接種を申し込んでいた「権利者」のうち10万人が辞退したからではないか。
実は前にも書いたが、厚労省が優先接種の対象とした「医療従事者等」は医療従事者196万2000人に加え、医療機関で仕事をしている人すべてを含む数字である。つまり医療行為には従事していないが、医療機関で仕事をしている人(医療機関の従業員だけではない)すべてを含んでいるのだ。具体的には受付や案内、会計、雑用係、食堂の調理人からコンビニの店員まで含まれている。
かなりの国民(当初はメディアも)480万人はコロナ患者の治療に当たっている医療従事者と勘違いしていたようだが、私がブログで厚労省のホームページを完全コピーしたように、コロナ患者の治療に当たっている方たちだけでなく、全国あらゆる医療機関(およそコロナ患者とは縁がありそうもない美容整形外科クリニックまで含む)で仕事をしている人たちがすべて含まれる。医師や歯科医師(なぜ医師と歯科医師が資格として区別されているのかは不明)、看護師、薬剤師などの資格者は厚労省も把握しているはずだが、病院などの医療機関で仕事をしている窓口や会計、ましてや調理師や清掃人、コンビニの店員までは把握できるわけがない。
だから、「医療従事者等」に優先接種することを政府が明らかにした時、すでに全国のあらゆる医療機関に対してワクチンの優先接種を希望する人の名簿の提出を求めていたはずだ。もちろん、名簿に記載された人全員が本当にその医療機関で仕事をしているかどうかのチェックなどできるわけがない。たとえば小さなクリニックの医師や看護師、受付が自分たちだけでなく、親族なども医療機関の従業員と偽って名簿に載せることも100%可能である。実際、そういう証言もある。
ただし、いちおう厚労省は「えこひいき」ではないためのアリバイ作りもちゃんとしている。優先接種対象の医療機関は「コロナ患者・疑い患者に頻繁に接触する」という条件を付けたが、もちろん医療機関の申告内容を調査したりはしていない。補助金詐欺は調べても、医療機関が虚偽申告などしっこないことにしたようだ。
なぜ、これほど厚労省は医療機関で仕事をする人たちを上級国民として優遇したのか。旧厚生省が日本医師会の下請け機関にさせられる、きっかけとなった事件がある。今から半世紀ほど前になるが、武見太郎率いる日本医師会が旧厚生省と真っ向からぶつかったことがある。日本の医療行政は1961年の国民皆保険制導入とともに、保険医療を基本制度としてきた。が、国民所得に比べて開業医の収入が多すぎるとして、旧厚生省が医療収入の72%を非課税にしてきた税制を改め確定申告納税に変えようとしたとき、日本医師会が「保険医一斉脱退」という「スト」を実行しようとして世論の猛反発を食い、武見が「こんなとき病気になる方が悪い」と暴言まで吐き、さすがに開業医たちも「武見会長にはついていけない」と「スト」は実現しなかった。こうしたすったもんだの挙句、当時の厚生大臣のミッチー(渡辺美智雄)が開業医に対して「みなし必要経費72%継続」を認めて騒動を収拾したいきさつがある。つまり旧厚生省が日本医師会に完全屈服したのである。以来、厚労省に衣替えした今日に至るまで、医療行政は日本医師会の言うがままになってきた。
今回のワクチン優先接種にも、厚労省が絶対に言い訳ができない差別が現に含まれている。高齢者施設の職員に対する差別だ。医療機関の敷地内に設置された高齢者施設の職員は優先接種の対象だが、それ以外は対象外なのだ。その結果、とんでもないクラスター事件が高齢者施設で生じた。医療法人の清春会が経営する高齢者施設「サニーヒル神戸」で入所者・職員133人が集団感染し、入所者25人が死亡するという悲惨なクラスターが生じたのだ(5月8日発表)。
高齢者施設は言うなら密閉空間である。いくらコロナと言えども密閉空間では自然発生はしない。高齢者施設の入所者は病院の入院患者ほどではないが、こういう時期だから入所者にはかなり厳しい外出制限がかかっていたはずである。ということは、「サニーヒル神戸」で発生したクラスターは職員が感染源と考えられる。医療機関が運営している高齢者施設なのに、なぜ職員はワクチンを優先接種してもらえなかったのか。施設が医療機関の敷地内に設置されていなかったからである。
さすがに厚労省も、医療機関が運営する施設と、医療機関ではない民間業者が運営する施設を、あからさまに差別するのは気が引けたのであろう。医療機関の敷地内に設置された高齢者施設に限るというせこいやり方で、優先接種の差別待遇を隠蔽せざるをえなかったというわけだ。
実は私はNHKのふれあいセンターには、厚労省のワクチン優先接種対象とした「医療従事者等」の「等」の意味は伝えてある。それまではNHKも他のメディアと同様、優先接種対象者については「医療従事者」と「等」を外して報道していた。
私が情報提供して以降、NHKは「医療従事者など」と報道することが多くなった。が、NHKの職員すべてが理解しているわけではなく、『日曜討論』では伊藤アナが「など」を外して発言したり、内部での統一もとれていない。そうした報道姿勢が、ワクチン優先接種対象者の数を確認せず、思い込みの480万人を分母に計算してしまったことによるミスだったと思う。だから私は本稿で、このミスは格別の意図をもっての「ねつ造報道」とは区別して単純なケレス・ミスとした。が、ケアレス・ミスであろうと誤報は誤報だ。誤報であったことがわかったはずなのに、隠ぺいを図ろうとしたのであれば、これはもはやケアレス・ミスでは済まされない。こうしたケースは間違いなく報道局長の決済を受けているはずだから(もし報道局長が知らなかったとすればNHKのガバナンスが問われる)、報道局長の責任は重大である。
こうしたケースの責任の取り方はどうあるべきか、NHKのガバナンスが問われている。(27日)