小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

東京オリンピックーー開催か、中止か? いや、そもそも開催できるのか

2021-05-03 01:50:52 | Weblog
東京オリンピック・パラリンピック中止論が、オリンピック開会日の7月23日まで3か月を切って勢いを増してきた。
きっかけは4月21日、オンライン開催されたIOC理事会後の記者会見で、IOCバッハ会長が東京都などの3度目の緊急事態宣言発令について「オリンピック開催とは関係ない」と答え、オリンピック・パラリンピック開催に否定的な日本世論を逆なでしたことにある。
翌22日には野党もこの発言に猛反発。共産党の志位委員長は「憤りを感じた。責任ある立場の発言とは思えない」と批判。国民民主党の玉木代表も「公衆衛生の在り方はわが国が考えることで、バッハ氏からとやかく言われる筋合いはない」と拒絶反応を示した。新立憲はなぜか枝野代表ではなく泉政調会長が「緊急事態宣言に関与するような発言はいかがなものか」とやんわり批判した。

●日本世論は「中止」「再延期」に二分されていたが…。
 さらにバッハ氏は4月28日に行われたIOC、国際パラリンピック委員会、日本政府、東京都、大会組織委員会によるリモート5者協議の冒頭でこうあいさつした。「日本人の粘り強さや不屈の精神は世界の歴史が証明している。これまで逆境を乗り越えてきたように、いかなる状況下でもオリンピックを開催できる」と述べたのだ。
 この発言に対してネットでは「ふざけるな。戦時中の特攻隊精神でやれというのか」「日本人を舐めているのか」「IOCは『安心・安全』なオリンピック開催のために何をしてくれるというのか。何もせずに自分の懐勘定だけしか考えていない」と痛烈な批判が飛び交った。
 国内世論は、「中止すべき」「再延期すべき」にほぼ二分されているが、再延期は事実上不可能なようだ。報道によれば、日本オリンピック委員会(JOC)も再延期はありえないと考えているようだ。来年は北京冬季オリンピックが予定されており、同じ年に夏季と冬季の二つのオリンピック開催は現実的ではないし、さらにその翌年まで延期となると、次の年にはパリ夏季オリンピックが開催される。唯一現実的可能性があるのはドミノ倒し式に夏季オリンピックを4年ずつずらすか、28年のロス大会の次がまだ決まっていないので、その次の32年という選択肢が残っていたが、IOCはその先手を打って32年オリンピックの最優先候補地として豪ブリスベンを選定した(決定ではない)。
 そうなると日本側の選択肢は、この1,2か月のうちにコロナ禍を終息させるか、さもなければ無観客開催にするか、中止という英断を下すかに絞られたといっても過言ではない。日本の世論を二分していた「中止」「再延期」のうち、「再延期」という選択肢が消えた以上、残るのは「中止」しかない。
 
●バッハ会長にとってオリンピックは「アスリート・ファースト」ではない。
 じつは主催都市の東京都も組織委も本音は「安心・安全」なオリンピックの開催が困難なことはわかっている。オリンピック開催についての決定権はIOCにあり、IOCが「やめよう」と言い出さない限り、日本側が自己判断で「中止決定」をすることは規約上簡単ではない。
 東京都がオリンピック招致運動を始めたのは石原都知事で、東京開催が決まったのは石原氏の後継都知事の猪瀬氏の時。56年ぶりの東京オリンピック招致成功に世論はいったん沸いたが、小池都知事の時になって初めて東京オリンピックの開催時期が酷暑の梅雨明け直後ということが分かり、世論はこの時すでに「死のオリンピック」と猛反発した。
 小池都知事体制は発足直後から築地市場の豊洲への移転問題で揺れに揺れた。新設の豊洲市場の建屋の地下で汚染された地下水が漏れ出すという事件が生じ、東京都は対策に大わらわになった。
 豊洲市場は、元は東京ガスの施設があった場所で、建屋地下室で地下水が漏れ出したことで土壌汚染が発覚した。鉛・ヒ素・六価クロム・シアン・水銀・ベンゼンの6種類の有害物質が国の環境基準を超えていることが判明、築地の仲卸業者の間で移転反対運動が生じていた。そうした時期に東京オリンピックの開催時期が梅雨明けの酷暑ということが判明したのである。
 多くの国民は酷暑のピークは8月中旬の「お盆」の時期と思っているようだが、東京の場合は梅雨明けの7月20日ころから8月中旬にかけてである。最高気温もほぼ7月下旬に記録されている。そのため東京都には「なぜ、こんな時期にオリンピックをやるのか、死者が出るぞ」という抗議が殺到した。
とくにオリンピックの華であるマラソンが危険視されるなか、小池氏は走路の遮熱材塗装やミストシャワーなどの対策を講じ、マラソン競技のスタートも午前6時という早朝に設定したり、沿道の商店街には観客の熱中症対策をお願いするなど、リスク回避の対策を講じていた。が、2019年10月、ドーハで行われた世界陸上のマラソンで猛暑のため途中棄権する選手が続出したため、アホなバッハ氏が突然マラソン会場を東京より気温が5~6℃低い札幌に移すことを要求、てんやわんやの騒動を経てマラソンは札幌で行うことになった。
このとき突如、バッハ会長がオリンピックの基本理念として打ち出したのが「アスリート・ファースト」である。「ウソつくな」と、私は言いたい。
そもそも真夏にオリンピックを開催することを、オリンピック招致の手を挙げた都市に要求したのはIOCではないか。世界的な規模で温暖化が進む地球で、東京は毎年最高気温を更新しているなか、なぜ真夏の東京開催をIOC総会は決定したのか。東京は、それでもまだましだ。24年開催のパリの最高気温は40℃を超える。野外競技で死者が出なかったら、奇跡だ。
いみじくも、マラソン会場の札幌移転が決定したとき、小池氏は「今後のオリンピックは北半球ではできなくなる」と嘆いた。オリンピック開催時期を7月後半から8月中旬を決定したのはIOCである。理由はオリンピックの放映権を獲得している米テレビ局NBCの都合による。
アメリカはプロスポーツ大国で、バスケット、アメフト、野球、アイスホッケーの4大リーグのほかに、サッカー人気も急増しており、そのほかに個人競技のゴルフ、テニス、自動車競技も盛んである。これらのスポーツ放送の視聴率も高いが、夏季は野外スポーツはほとんどがオフ・シーズンに入るためにNBCにとって目玉放送となるのがオリンピックというわけだ。
そのオリンピック放映権を持つNBCの放映権料ファーストでオリンピック開催時期を決めてきたIOCが、いまさら「アスリート・ファースト」と声高に言い出しても、説得力などゼロに等しい。
正直、私個人としては池江選手や内村選手、松山選手たちのオリンピックにかけてきた思いを感じると、彼らをひのき舞台に立たせてあげたいという気持ちはある。が、オリンピックという4年に1度のスポーツの祭典は、日本人が考えているほど、スポーツで最高の舞台ではないのだ。日本人特有の国民感情として重要視している「名誉」は、欧米とくにアメリカ人にとってはほとんど意味を持っていない。
私が3月22日付でアップしたブログ『緊急事態宣言解除の目的は東京オリンピックのためか?』の中で書いたように「すべてのカギはアメリカが握っている」のだ。

●東京都・政府・組織委・JOCは直ちに「中止宣言」を発せよ
前回のブログ『緊急事態宣言より集団免疫状況をつくるワクチン接種を!!』で書いたように、菅総理が訪米してバイデン大統領に謁見した際、バイデン大統領から「東京オリンピックを支持する」と言っていただいたと大喜びしたが、それはアメリカが東京オリンピックに全面的に協力するという意味では毛頭ない。「敢えて反対はしませんよ」という程度の外交辞令に過ぎないのだ。
実際アメリカでプロ試合が盛んな競技には一流選手はまず参加しないと考えたほうがいい。オリンピックで優勝してもカネにはならないうえ、コロナ・リスクを覚悟、ということになると二の足どころか三の足を踏んでも参加しようという気にはならないだろう。だから、野球の場合だったらせいぜい3Aクラスの選手、ゴルフも一流プロは絶対と言っていいほど参加してもらえない。その分、日本は空前のメダル・ラッシュが期待できるが…。
菅総理は本当にお人好しだ。訪米中にファイザー社のCEOに電話でワクチンの入手について懇願し、「出来るだけ、ご期待に沿えるよう努力しましょう」くらいのリップサービスをもらったのだろう。それで有頂天になり、帰国後、「9月末までに16歳以上の国民全員にワクチン接種できるだけの量を確保した」と口走ってしまった。が、肝心のファイザー社の今後の生産及び海外への供給計画の中に日本は含まれていないことが判明、国会で「ちゃんと契約したのか」「口約束に過ぎないのでは」と野党から追及され、おたおたしたことは読者もご承知の通り。
さらに国民が激怒したのは組織委員会が大会期間中に原則5日以上コロナ対策に従事できるボランティアの看護師500人を看護協会に依頼したことである。
組織委員会の会長は、森前会長がジェンダー差別発言で辞任した後を引き継いだ橋本前五輪相である。橋本氏は五輪相時代、記者会見でオリンピックのコロナ対策について「延べ1万人の医療従事者を確保する」と大見得を切って、「コロナ禍が収まっていなければ、そんなこと不可能だろう」と記者たちの反発を食ったことがある。
 いまは東京・大阪・兵庫・京都の1都2府1県で3度目の緊急事態宣言が発出されている。が、緊急事態宣言が発出されている地域でも感染者は増え続けている。東京オリンピック中止の決断を、いつ、だれが下すのか、にメディアや国民の関心は集まっている。政府の分科会の尾身会長は4月28日、衆院厚労委に出席してオリンピック開催問題について「感染状況と医療のひっ迫状況が一番大事な要素だということを踏まえて開催に関する議論をしっかりすべき時期に来ている」と、開催ありきの姿勢を崩さない政府にくぎを刺した。
 さらに、「開催途中に感染爆発が生じても、政治的配慮で緊急事態宣言を出さない恐れがある」との質問に対しては「そのときになって判断するのでは遅い。組織委員会など関係者が、そういう事態にどう対処すべきかを感染レベルや医療のひっ迫状況を想定して、いまから議論をしっかりやるべきだ。やろうと思ったらできる」と強い調子で述べた。
 そういう状況の中で、何をトチ狂ったのか、組織委の橋本会長は5日間以上ボランティアで協力してくれる看護師500人の募集を看護協会に依頼したのだから、看護師たちから猛反発が出るのは当然すぎるほど当然である。
 報道によれば、愛知県医労連は28日、「#看護師の五輪派遣は困ります」のタグ付きツイートを発信、数時間で10万ツイートを突破、トレンド入りしたという。ネットでも「患者を守ることに必死で、オリンピックどころではない」「いまも医療現場は看護師不足が続いている。オリンピックに派遣できる余裕があったら、こっちに回してほしい」「オリンピックより大事なことを忘れていませんか」といった声が続々と上がっているという。
 海外でも、コロナ禍の真っ最中のオリンピック開催に疑問の超えた噴出しだした。
 女子アイスホッケーで4大会連続金メダルを獲得したIOC委員の元カナダ代表のウィッケンハイザー氏はカナダの公共放送CBCの取材に応じ、「開催の可否は医療や保険の責任者が決めるべき」「開催するなら明確でオープンな説明が必要」と指摘。またカナダの感染専門医のボゴシェ氏も「選手や関係者の隔離やワクチン接種を強制しなければクラスターが起きても不思議ではない」と苦言を呈している。
 海外メディアも、日本の感染状況とワクチン接種状況から、オリンピック開催に疑問を呈しだしている。実際、海外と比べると日本のワクチン接種率(完了者)は、イスラエル58.86%、アメリカ30.92%、イギリス22.01%、イタリア10.12%、フランス9.55%、ドイツ7.62%、ブラジル6.44%、ロシア5.18%に比べ日本はたったの0.79%だ。こういう状態で、果たして「安心・安全」な大会を開催できるというのだろうか。いま東京都、政府、組織委、JOCが下すべき最善の方策は、直ちに「中止宣言」を発することだ。
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