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第513回 悪口とノロケのはざま

2023-03-03 | エッセイ
 本文の冒頭でもご紹介している「愛するあなたへの悪口コンテスト」(主催:静岡県島田市)の話題を<旧サイトから>お届けします。自治体らしからぬ粋な企画で、調べたら、現在も続いていて、もう19年にもなります。昨年(2022年)の募集ウェブサイトです。

 なにはともあれ、名作(迷作?)を、私なりのコメント付きでお楽しみください。なお、ネタ本を再読し、作品のみを少しばかり文末に追加しました。合わせてお楽しみいただければ幸いです。

★ ★ 以下、本文です ★ ★
 あまり知られていませんが、2005年から、静岡県島田市が、町おこしの一環として、「愛するあなたへの悪口コンテスト」というのを毎年開催しています。その第1回から8回までの審査委員長を勤めたのが、作家の村松友視です。氏が「悪口のすゝめ」(日本経済新聞出版社)の中で、大賞作、受賞作などを俎上に乗せて、紹介しているのが、軽妙な文章とあいまって、無類の愉快な読み物となっています。
 悪口、というけど、ノロケの裏返しじゃないの?みたいなのがあったり、そうそう、と思わず膝を打つようなものまで、いろいろです。でも、悪口を言い合える間が花。ユーモアと(表に出さない)愛情に溢れた「悪口」の数々にアテられっぱなしでした。
 さっそく、個人的に気に入った作品のいくつかを私の(ヤボな)コメント付きでご紹介します。

<<おまえまでじいじと呼ぶな さもなくば 元は小町もばあばと呼ぶぞ>>
 日本では、子供とか孫の目線での呼称が、そのまま、自分とか家族間の呼称になります。だから、孫ができると、パパとかママは、「おじいちゃん」、「おばあちゃん」です。「ルール」ではそうなんですけど、年寄り扱いは嫌なもの。で、ぎりぎりの折衷案として普及しているのが、「じいじ」「ばあば」のようです。いっそ「グランパ」「グランマ」と称したらどうでしょう。モダンな感じで、こんな悪口もなくなると思うのですが・・・

<<妻曰く、「あなた、昨夜はムンクの夢を見たんでしょう?」>>
 ムンクの夢、って一体どんな夢なんでしょう。楽しい夢ではなさそう。血の色に染まった夕焼けの空から、何かの「叫び」が聞こえたのでしょうか。聞こえただけなら、妻に悟られることはないわけで、きっと夢の中で、「叫び声」でもあげたんでしょうね。その前後で、過去の女性問題を推測させるようなウワ言を聞かれて、痛くもない腹を探られたんでしょうか。いろいろ想像をたくましくさせるシュールで怖い作品です。

<<夫とテレビはデキている>>
 私自身は、すっかりテレビ離れしています。騒々しいだけの番組が多く、残りの人生のムダ使いに思えてなりません。実は、想像以上にテレビ離れは進んでいるのではないか、とみています。若い世代はネットで忙しそうです。団塊の世代は世代で、知らないタレントさんだらけで、時代とのギャップを感じることも多いはず。それでも、ダラダラとテレビを見てながら侘しく日を過ごすしかないご亭主族。テレビと「デキている」は言い得て妙。皆さんが気づかぬうちに、奥方は、ご近所さん、サークル仲間、古い友人などと大いに「デキて」ますよ。

<<ウィッグが必要で俺のカツラが必要ない訳を言え>>
 カツラを英語で言うと「ウィッグ」なんですが、「女性用」というイメージをしっかり日本に定着させたメーカーの戦略に感心します。おしゃれっぽくボリュームを出す、手軽にヘアスタイルを変える、薄い部分だけを補う、など買うにしろ、身につける(でいいのかな)にしろ、抵抗感をなくす事に見事に成功しています。ファッションアイテムのひとつという位置づけです。それに対して・・・・というのは言わぬが花。作品に込められた思いを黙って味わいましょう。

<<あなたって 便座みたいに あったかい>>
 あたたかい、のはいいのです。だけど、その喩えに「便座」? 想像するに、ヒーター付き便座のほどほどの温かさが、負担でもなく、ちょうどいい、ということなのでしょうか。尻に敷くにも具合がいいし・・・・便座を持ってきた着想が秀逸で、参りました。

★以下、追加分です★
<<おい息子 嫁さんまだか あれこれお前が使ってる あれは俺の恋女房>>
<<無駄だとは 言わぬ美容師 言う鏡>>
<<カミサンを上司と思えば 割りきれる>>
<<買うときは サイフに聞くな オレに聞け>>
<<姿見に 体はみだし 2歩さがる>>
<<カレーねぇ・・・ だったら聞くな 何食べたい?>>
<<年につれ あなたの動きは カブキ調>>
<<なぜ海へ行くかって そこに女房がいないからさ>>
<<お前の沈黙は多くを語りすぎる>>

「思い当たる」作品なども含めてお楽しみいただけましたか?それでは次回をお楽しみに。
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