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第318回 年中無休という「ブランド」

2019-05-10 | エッセイ

 人手不足で、やむを得ず「時短」営業をしていたコンビニのオーナーさんと、本部とのトラブルが一時、マスコミを賑わしました。廃業するなら違約金1700万円を払え、いや払えないの騒動は、(たぶん、マスコミを意識したんでしょう)違約金は払わなくてよい、という「日本的」解決に落ち着いたようです。

 そんなニュース見ながら、いつもの店で時々一緒になるM君とのやり取りを思い出しました。彼は、靴の小売チェーンに勤めています。そのチェーンは、「年中無休」がひとつの売りもので、若手の彼は、年末年始などは格好の応援要員としてアテにされています。で、数年前の正月明けにこんなグチを聞かされました。

「聞いてくださいよ。今年の1月1日も店番してたんですけど、売れたのは、500円の靴べら1個だけですよっ!」
「あはは、正月早々買う方も買う方だね。お疲れさま」

 その場は笑い話で済ませてましたけど、私自身が、今年の1月1日に、靴ひもだけを「買う方も買う方」になるとは思ってもいませんでした。いきなり、愛用の靴のひもが切れたのです。別に正月明けでもよかったんですが、近くにM君のとは別の靴チェーンがあるのを思い出して(M君ごめん)、ダメ元で行ってみたら、なんと営業してました。
 たかが300円ほどの靴ひもでしたけど、店員さんの応対もよく、靴屋さんの「年中無休」も悪くはないかな、と思いつつ、苦笑いの一幕でした。

 さて、私にとって、コンビニはもっぱら公共料金とか通販代金の支払い場所です。リタイヤして、時間は十分ありますから、普通の買い物は、いろんな店を、お店の都合(営業日、営業時間など)に合わせて使い分けています。
 そういえば、過去を振り返って、「開(あ)いててよかった」(コンビニの古いキャッチコピーですけど)体験が、だいぶ前に1度だけありました。遅くまで飲んで、電車は途中までしかありません。タクシーを拾ったものの、途中で手持ちの現金が不足しそうになったので、運転手さんにコンビニに寄ってもらい、ATMでカネをおろして、無事帰りつきました。

 多くの人にとってコンビニはホントに便利です。でも、冒頭で取り上げたようなニュースを見聞きし、また、先ほどのごとく私自身はあまりお世話になっていないこともあって、そこで働く人たちの方へ、つい目を向けたくなります。
 
 お店のオーナーさん、従業員さんにとって、生活の糧を稼ぐ大切な「職場」である一方、深夜帯の勤務などは過酷でしょうし、体調管理も大変だろうなと想像します。

 で、外国はどうだったかな(というほどの経験はないんですけど)と思い出してみると、総じてヨーロッパでの商売というのは、あまりガツガツしていないように感じます。イギリスでは、日曜日には、美術館、博物館はほとんどが閉館ですし、商店も休みのところが多いです。ドイツに至っては、日本のコンビニにあたるものがありませんでした(今もそのはず)。
 またまたオランダの話題で心苦しいのですが、そこでの買い物を思い出します。夕食前、みやげモノでも探そうかと5時半頃、ホテルの近くのショッピング街にある雑貨店に入りました。こんなエリアでした。


 品物を選んでいると、そのうち、店員さんが並んでいる商品をちょっと並べ直したり、点検したり、カーテンを閉めたりと、店閉まいの雰囲気になってきました。
 「あの~、そろそろ閉店ですか?」と訊くと、「ええ、6時までです」との返事。「お~、なんと働く人にやさしいことか」と心の中でつぶやいて、手早く買い物を済ませました。表へ出てみると、ほかの店も続々と閉店準備に入っていましたから、これが普通なんですね。お店も、利用客の方もユトリを持ってるオトナの社会ってこういうものかな、と感じたことでした。

 通勤時間も30分くらいが普通だといいますから、6時にお店が終われば、自宅で家族と食事を共にする人が多そうです。お酒とかデートなども含めて家族や友人とのプライベートな時間を大切にしている様子が目に浮かびます。

 だから日本でも、というわけにはいきそうもありません。とりわけ、コンビニの場合、365日24時間というのが「ブランド」(冒頭のニュースのなかで、本部の社長の発言として報道されていました)になってる現状も、ある程度理解しているつもりです。

 「でも」とも考えます。この業界でも、営業時間などは、もう少しバラエティというか、オーナーさん側に選択肢があってもいい気がします。いろんな知恵出しが得意で、先取りも好きな業界ですから、いっそ無人店舗なんてアイディアはどうですかね。「お客様は神様」で「365日24時間営業」もいいんですけど、「働く人を大切にする」というのも「ブランド」にしてほしいです。利用客の好感度がぐっと上がって、深夜帯の売り上げくらいはカバーして、十分お釣りが来ると思うんですけど・・・

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。

<追記>
 折しも、東京新聞朝刊に「コンビニ24hの裏で」との特集記事が連載されていました(5月12〜14日の3回)。北海道で圧倒的なシェアを誇るコンビニチェーンのセイコーマート(約1900店舗)では、24時間営業店舗は、全体の23%で、営業時間もオーナーの裁量範囲が大きいことなど、これからのコンビニ業界を考える上で示唆に富む内容です。一読をお奨めします。



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