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第352回 関西商法の秘密ーえべっさん編

2020-01-10 | エッセイ

 この記事をアップしている1月10日は、なんの日かと関西人に訊いたら、「えべっさん」との答えが返ってくるはず。
 「今宮(いまみや)戎神社(大阪市)」や、「西宮(にしのみや)戎神社(兵庫県西宮市)」に代表される神社と、そこで、例年の1月10日を中心に、その前後を含めた3日間行われる「十日戎」という祭事のことです。お正月らしく、このおめでたい話題をお届けします。

 七福神のひとりで、農業の神とも漁業の神ともされる「戎(恵比寿とも)さん」ですが、関西では、もっぱら「商売繁盛」にご利益がある神様として絶大な人気です。そんな「えべっさん商法」の秘密を、バチが当たらないよう気をつけながら解明してみます。

 いろんな形で仕事、商売にかかわっている人で「商売繁盛」を願わない人はいませんから、「商売繁盛」というコンセプトは魅力的で、ターゲットも大きいです。
 大阪で仕事をしていた時は、職場をあげて、今宮戎にお参りするのが恒例でした。商売繁盛の祈願ですから(サボりも兼ねて)結構早い時間から、堂々と出かけられます。ご祈祷料もしっかり払って、念入りに祝詞もあげてもらいました。なんのかんので時間をつぶして、最後は、近くの飲み屋の「商売繁盛」に貢献する、というのも恒例でしたが・・・
 そう広くもない今宮神社境内の喧騒ぶりです。

 考えてみると、3日間という設定がなかなか戦略的です。9日を「宵宮」、10日を「本宮」、そして11日を「残り福」と称します。「残り福」なんてなかなかニクい命名です。「3日のうちの最後の日でもご利益ありまっせ」と言わんばかり。
 これが仮に、1週間とか、1月とか続く祭事だと、間延びします。「まあ、そのうち、出かけよか」と思ったまま、結局行かなかったりということも起こりがち。
 たった3日間というのが緊張感ありますし、仕事が忙しい人でも、3日のうちなら、なんとかやり繰りできそうです。
 初詣で、しっかり「集客」してるはずなんですけど、すぐの十日戎で更なる集客に努めるーさすが「商売上手」です。

 さて、「十日戎」に参詣する人の一番のお目当てであり、神社にとっても「大切」なのが、「福笹」の販売です。

 まず、売り手は、若い女性限定で「福娘」と呼ばれます。「神子(みこ)さん」というタテマエですが、毎年、年末の時期になると、神社主催で、採用オーディションが行われます。格好の年末ニュースネタで、十分に前景気とオッちゃん達のスケベ心を煽ろうという作戦です。

 十日戎の本番では、境内に設けられた臨時の販売所に、神子さんの装束をした福娘さんが、そう20人くらいが並んで、「商売繁盛で笹持って来い」「商売繁盛で笹もって来い」の掛け声とともに、「販売」に精を出します。

 大阪のオッちゃんは、可愛い娘(こ)から買うのがご利益があると信じるんですね。
 「わいは、右から2人目がエエと思うけど、あんたはどや?」「わしは5人目のポチャッとしたのがタイプかな」などとケシカラヌ品定めをしながら、お目当ての福娘の前へ進んで、いよいよ福笹の購入です。

 その福笹ですけど、竹の笹(長さ70~80cmほどで、これ自体は無料)に、「吉兆」と呼ばれる縁起物を付けてもらいます。ユニークなのは、自分の好みの「吉兆」を選んで、いわばオーダーメイドするシステムであること。
 紙とかプラ製の小ぶりなものですが、商売繁盛のお札のほか、鯛、千両箱、米俵などおめでたいグッズが10数種くらい揃っています。だいぶ前の記憶ですが、ひとつ200~300円程度で、7~8個くらい付ける人が多かったようです。
 その販売風景です。

 「この「百億円札」なんかどうですかぁ?」
 「でへへ、ほなら、それも付けといてもらおか」そんなやりとりを想像します。

 自分で選ぶ楽しみ、(オッちゃんの場合は)若い女の子とやりとり出来る楽しみ、そして、商売繁盛のご利益もある・・・・単なる売り買いを超えたパフォーマンスとして、なかなかよくできた仕組みじゃないでしょうか。
 参詣に訪れた善男善女の商売繁盛を請け負いつつ、自分もしっかり商売する・・・関西では、神社も「商魂」たくましいです。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。

<追記>以前お届けした「関西商法の秘密へのリンクです。「広告宣伝編(第235回)」「立ち飲み編」(第257回)「鉄道編」(第280回)

 合わせてご覧いただければ幸いです。

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