先日、いきつけのお店で恒例の句会が行われました。珍しく都々逸の投句がいくつかありました。私も一部読み上げを担当したのですが、つい俳句の調子で読んでしまい、作者の方からご叱声をいただく一幕があったりしました。
そんなこともありましたが、「言葉遊び」の第2弾です。
前回、俳句の五・七・五のアタマに、指定の3文字を当てる「折句」を紹介しましたが、「先ほど話題の」都々逸でも応用できる趣向です。七・七・七・五ですから、4文字を当てるわけで、難易度が少し高くなります。
<あまざけ あなたに着せようと 真心こめて 雑誌たよりに 毛糸編む>
<ネクタイ 寝ずに働き 食わずに残し 貯めてあの世へ 行っちゃった>
<うたたね 売れないスイカを 叩いてホメて 叩き売るヤツ 値切るヤツ>
<みつばち みみちく家計簿 つけさすくせに バーでは派手に チップ切る>
いずれも、戦後の厳しい生活ぶりがうかがわれますね。
指定の言い回しを、途中に入れ込む「嵌込(はめこみ)都々逸」というバリエーションもあります。和歌でお馴染みの「ちぢにものこそ悲しけれ」をはめ込んで、
<総入れ歯「ちぢにものこそ悲しけれ」酢蛸(すだこ)は噛めず飴はひっつく>
<子だくさん「ちぢにものこそ悲しけれ」我が身ひとつの罪にはあらねど>
和歌のアタマに織り込むという手もあります。言葉遊びですので、「折り込み狂歌」という事になります。5文字の当てはめですから、難易度は高そう。
<おみなえし お米ない 味噌ない塩ない ナサケない 栄養失調で シャンと立てない>
<はえたたき 半分は 遠慮しようと 立ちあがり 立ってはみたが 気になる菓子>
<はなことば 肺がんに なったらだめよ これからは 父さん煙草に バイバイしてね>
<たすけあい 煙草はもう 喫わぬと壁に 掲示して ああよく書けたと 一服つける>
いずれ劣らぬ生活感漂う名作(迷作?)揃いです。3句目、4句目は、煙草のみの方々に、捧げたいですね。
とまあ、他人の作品ばかり紹介していても仕方がありませんので、私もひとつ作ってみました。
お題は、「しゃ・れ・こ・う・べ」
<シャイな女(ひと) 冷酒(れいしゅ)で酔っても 心地よく うたた寝できる 便利なお店>
お店の宣伝文句にどうでしょうか?
さて、「冠(かんむり)付け」をご紹介しましょう。五.七.五の上の五を指定して、あとの、七・五を付ける遊びです。
「いうまいと思えど今日の暑さかな」の「いうまいと」がお題になった時の教室です。
石黒敬七さんが手をあげます。この人は、答えが出来てないのに、手をあげる、というクセが、時々出ます。こんな方でした。
青木センセイとのやりとりです。
「さあ、石黒サン。”いうまいと”どうしました」
「えー、いうまいとですねぇ」
「そう、いうまいとは問題なんですから、七・五とつけてください」
「えー、いうまいとですね・・・・」
「それはわかっています。さあさあ、どうします」
「いうまいと、いおうと俺の勝手なり!」
会場は、大爆笑に包まれた、とあります。教室の雰囲気を伝える楽しいエピソードです。
言葉遊びとは言っても、「言葉」だけにこだわらず、機智とユーモアで、ゆったり楽しむのも手ですね。好評でしたら、第3弾もお届けしたいですねぇ。
それでは、次回をお楽しみに。
<追記>前回(第270回)と、第3弾(第312回)も合わせてお楽しみください。