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第242回 連続殺人事件ーその周辺の気になること

2017-11-10 | エッセイ

 座間市で起きた連続殺人事件(現在判明している被害者は9人)の凄惨さ、異様さには言葉を失います。事件そのものは、とても私なんかの手に負えませんので、その周辺で見えて来た「気になる」2つの事を話題にしようと思います。ちょっと重たいテーマで、私の苦手な分野ですが、よろしくお付き合いください。
 
 ひとつは、先日も、お店のマスターと話したのですが、監視社会化が想像以上に進んでいるなぁ、ということです。

 最初に被害者と判明した女性の兄が、ネットを駆使して、不審な交際相手に関する画像を含めた情報を警察に提供し、それが、犯人逮捕につながったのは、いろいろ報道されている通りです。

 被害者女性と犯人の二人が一緒にいる映像は、駅構内だけでも、何カ所ものカメラで捉えられ、駅を出てから、犯人のアパートまでの足取りが、道々の施設に設置されたカメラ記録されていたため、犯人逮捕につながったと伝えられています。

 コンビニのように抑止力として、わざと目立つように設置しているところもありますが、施設側の「協力」も得て、それと分からないように設置されているカメラの数って、相当なものになりそうです。しかも、今どきのことですので、小型、高性能で、映像はオンラインで刻々送信、というのが多いのでしょうから、見えざる「インフラ」となった観があります。こんなタイプが、今は主流のようですね。



 さて、もっと驚くべきことは、そのようにして撮影された映像の分析・解析技術です。

 私が見たニュースでは、お兄さんから画像の提供を受けてから、二人の足取りが判明するまで、「わずか2日」と報道されていました。

 八王子を中心としたエリアの駅を中心に絞り込んだとしても、何十という駅の、何百台ものカメラにもなるはずです。その他の施設からのものも含めて、何日分もの映像データですから、それだけで、気が遠くなるような膨大な「量」です。

 その中から、二人が映り込んでいる映像を探すのですから、まさに大海の中の一滴を求めるような作業です。「顔認証(認識)」という技術と、スーパーコンピュータ級の機器を大量に投入しているのでしょうが、当然の事ながら、被写体は動いています。うつむいたり、横を向いたり、いろんな動きをするはずです。しかも、正面から撮ってるカメラなんてないでしょうから、補正など、膨大な処理をする必要があります。

 更に言えば、何カ所でも撮った映像を、時系列に整理して、足取りを再現する必要もあります。 

 それを「2日」でやってのける日本の警察。スマホ、タブレットであんなことができる、こんなことができると浮かれている世の中を尻目に、今や、防犯カメラを通じた情報収集と処理、そして、その分析で、ものスゴいパワーとスキルを手にしていることになります。今回は、犯人の逮捕につながりましたが、ひとつ間違えば、総監視社会へ踏み出しかねない危険性を孕(はら)んでいることを垣間見せました。

 さて、もうひとつ、気になるというか、今回の事件でもうんざりさせられているのは、プライバシーの報道です。

 一般市民である被害者のプライバシーを「報道」の名のもとに、天下に曝(さら)す権利や必要性がどこにあるのか、というのが私が、ず~っと抱いている疑問です。警察が発表した(ちゃんと捜査してる、というアリバイ作りが主な目的ですけど)からといって、全国の読者、視聴者が、被害者のプライバシーを、根掘り葉掘り知る事にどんな社会的意義があるのか、まったく理解できません。ただでさえ打ちのめされている家族、関係者に対する「報道」の名を借りた「暴力」でしかないと思います。

 過日、新聞を見ていると、二人目の女性被害者の身元が判明した、との記事がありました。例によって、名前、年齢(23歳)などのプライバシーを曝(さら)しているのですが、被害者の写真が載っていて、「小学校の卒業アルバムから」とあるのに、愕然としました。

 新聞社に限らず、マスコミって、なんであんなに、事件の関係者、とりわけ被害者の「写真」を欲しがるんですしょうか。昔は、被害者の自宅へ、各社が争うように押し掛けて、アルバムなどの写真の奪い合いを演じるのが当たり前だった、などという話を聞いたことがあります。

 社風、体質は今も変わってないようで、家族、関係者のガードが堅くて、困り果てた記者が、「え~い、この際、小学校の卒業写真でも、ないよりましだ」とでも考えて、同窓生の間を走り回っている図が目に浮かびます。

 事件の社会性とか、公正な捜査、裁判が行われているか、などには、目を向けるべきです。
 でも、被害者のプライバシーなど、下世話な話題を追っかけ、視聴者、読者の覗き見趣味に迎合するようなロクでもないマスコミは、相手にすべきでないと思います。

 重たい話題に、最後までお付き合いいただきありがとうございました。引き続きご愛読ください。