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第168回 大阪弁講座-19

2016-06-03 | エッセイ

 ここ2回ほど、堅い話題が続きましたので、久しぶりの大阪弁講座で肩をほぐしてもらおうと思います。それではさっそく・・・・

<しょーもない>
 大阪人は、安うて、エエもんが好き。食べ物だと、安い、うまい、早い、三拍子が揃わなければならない。
 一方で、「しょーもない」ものを愛するのが大阪人。この言葉も大阪独特の短縮形と言える。「どうしようもない」の「どう」が抜けて、「しよう」「しょー」となる。つまらない、価値がないことを一刀両断に判定する力強さがあって、使用頻度が実に高い言葉のひとつ。ケチのくせに、「しょーもない」ものを、変に自慢したがるのも大阪人の特質で、屈折してる。

「どや、このパンツ、たったの200円や」
「また、そんな「しょーもない」もん買(こ)うて」
「「しょーもない」ことないがな。裏表で穿(は)ける「お気軽パンツ」やで」
「えっ、そら、汚いんとちゃうか?」

<うっとこ>
 「ウチ」(自分)の「ところ」を縮めて「うっとこ」。
 「ウチ」単独だと、もっぱら女性専用の一人称だが、「うっとこ」となると、男女の別なく、自分が所属する共同体や組織を指すことになる。
 まあ、私の家では、とか、私の職場、会社では、といった比較的身近なモノに使うことが多いようだ。

 「あんさんとこみたいな(あなたのところのような)立派な会社と違うて、「うっとこ」なんか、ホンマ小さな会社でっから(ですから)」
 謙遜しつつも、自分の会社の独自性というか、存在感をそれとなく主張するクセ玉みたいな使い方の例になる。

 「うっとこ」を使うってことは、「あんたとこ」を強く意識することでもある。
 「あんたとこは、あんたとこで、勝手にやったらよろしいがな。「うっとこ」は、「うっとこ」でええようにやらせてもらいまっさ」こうなれば、喧嘩ごしですけど・・・・

<地名の短縮>
 首都圏なんかでも、二子玉川(ふたこたまがわ)を短縮して、「ニコタマ」、下北沢を「シモキタ」、秋葉原を「アキバ」などと、地名を略することはあって、若い人が割と好んで使ってる。

 だけど、本場はやっぱり大阪かな、と大阪ナショナリズムが出たりする。もともと、「いらち」(短気)な大阪人は、言葉を短縮化する傾向があることを、以前、紹介しましたけど、地名も例外ではなく、老若男女を問わず、使いまくっている。

 市営地下鉄の駅名で、「天神橋筋六丁目」というのがあるが、フルネームで呼ぶのは、車内放送くらい。みんな「てんろく」と称している。話題作りのための長い駅名ならいろいろありますが、ごく当たり前の駅名で、感じ7文字というのは、珍しいんじゃないでしょうか。駅の表示板です。


 なかでも傑作は、「日本一(にっぽんいち)」ではなかろうか。「日本橋(にっぽんばし)一丁目」の略だから「日本一」。大阪ミナミの電気街で、二丁目、三丁目なんかもあるんだが、「日本二」などは聞いたことがない。景気のいい略称である。
 
 かつて、近鉄のターミナル駅だったことから、大阪的にはメジャーな地名の「上本町(うえほんまち)六丁目」は「うえろく」、谷町の四、六、九丁目は、「たによん」、「たにろく」、「たにきゅう」という具合。天下茶屋(てんがちゃや)というミナミにある由緒ありげな地名も「てんちゃ」。

 いずれもごちゃごちゃした庶民的なエリアで、愛称で呼ばれるほど、生活に密着し、親しまれていることの証しかも。個人的にも懐かしい地名ばっかです。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。