昨年11月から県下全体で展開してきました『生活底上げ・共助拡大キャンペーン』ももう残り1週間となりました。このキャンペーンは、現状の勤労者および家庭そして地域住民を取り巻く環境から、「①格差社会への警鐘」と「②可処分所得の向上に資する運動の展開」の2つを主要テーマに掲げ、様々な取り組みを展開してきました。
取組みテーマとしては、①格差の実態・問題点を広く多くの人に伝えます、②労金・全労済の機能活用により可処分所得の向上につなげます、③フードバンクの取組みにより生活困窮者支援につなげます、④奨学金問題の改善や啓発活動に引き続き取り組みます、を掲げてきました。
キャンペーンを単なるアドバルーンを揚げるのではなく、具体的な活動と結果を求めて進めてきましたが、学習会の開催や街宣活動そして労金・全労済の利用拡大策など、各地域地区労福協や各事業団体において積極的に運動を展開していただいたことに感謝しています。
その多くの方に知ってもらう活動の一環として、1月12日に開催しましたトップセミナーについて、今日のブログにて報告させていただきます。
今年は、福祉基金協会のトップセミナーをキャンペーンの特別編として実施しました。講師として、首都大学東京の阿部彩教授(子ども・若者貧困研究センター長)をお招きし、「豊かさの中の貧困~各世代に広がる格差とどう闘うか~」というテーマで講演をお願いしました。多くの皆さんに格差の実態を正確に系統立てて理解してもらいたい、そういう思いを込めて講演をお願いしましたが、具体的なデータを含めて実態の紹介と問題点、そして我々として何をしなければならないかを語っていただきました。講演の様子をこの場ですべて語ることはできませんが、参加していただいた各労組の役員や議員の皆様には感じていただけたことも多かったと思います。
自分なりに印象に残ったフレーズのみ紹介させていただきます。
・日本の子どもの貧困率は、2015年結果で13.9%となり2012年の16.3%から下がったことは評価したいが、貧困状況にある子どもはまだ300万人を超える。子どもが貧困の状況におかれている事自体が問題だ。
・晩婚化に伴い親の高年齢化が進んでいるが、そのような状態が継続すると、現役世代は子育てに追われ定年までに老後資金を蓄える時期が短くなり、かつ親の介護も担うダブルケアの問題が深刻化する。TVの「サザエさん」家族の波平さんは54才で、マスオさんと正社員が家族に2人おり、サザエさんもお母さん(フネさん)に子供を預ければ働くこともできる。こうした家族形態は今日では一般的なものではなくなってきている。
・東京都の子どもの貧困の実態調査では、小学校5年の母親の平日日中以外の就労では早朝、夜勤、土曜、日曜、祝日に働いている層が1~3割存在することが分かった。また、貧困による親のストレス・抑うつ状態の親が6割を超える。こうした環境が子どもに与える影響が心配される。
・トリクルダウンセオリー(経済成長の恩恵が自然と貧困層に及ぶ)は経済学で最初に習うが、先進国ではそれが当たり前に起きるわけではないことは、過去の先進各国のデータからわかる。
・貧困の「川上」対策として、貧困問題の根幹は労働問題であって、労働条件の改善や、雇用政策、労働政策が必要である。日本は「再配分政策」が不十分であり機能していない。
・労働組合には、貧困問題の本丸である、労働問題、公的給付の確保、政策提言などの分野で力を発揮していただきたい。
労福協として、この格差の問題を直視して取り組む必要性を改めて考えさせられたと共に、公的な制度改善への対応(政策提言)の重要性も痛感させられました。我々の活動を通じて、様々な形で政策反映への影響力が高まっていくことも期待しながら、引き続き取り組みを進めていきたいと思います。(大)
『フードバンクふじのくに』からのお願い
田方地区労福協から食品をいただきました。たくさんのご支援、誠にありがとうございます。
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