林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

長崎の仇

2013-04-09 | 林住期

昼飯を食いに、贔屓にしている三ツ星れすとらんへ行った。
日替わり定食は「長崎ちゃんぽん風うどん」だった。見た目にもあまり美味そうじゃない。

でも森生ははっきり注文した。630円で昼飯にありつけるところはそれほどないもんね。
そして兄ちゃんは注文をしっかり承知したはずだ。

だが、いくら待ってもちゃんぽん風うどんを持ってこない。
後から来たほかの客には次々と運んでくるのに、すっかり無視されて、どんどんヘソが曲がってきた。

さっさと兄ちゃんに催促すればいいのは分かってた。兄ちゃんに以心伝心や気配りを期待する方が無理というもの。
しかし、いつになったら気付くのか、息を潜めて待っているうちに、森生は透明人間になってしまったようだ。

ちゃらんぽらんな兄ちゃんに、だんだん腹が立ってきた。
透明マントはかなぐり捨て、スックと立ち上がり、
兄ちゃんに近寄り、耳元で凄ささやいた。、

  おい、注文は取り消しだぁ、もう来てやんねぇからな。こんな店、潰れちまえっ。

家に帰る道で、石垣の庭の垣根の下から小型犬に吼えられた。耳に噛み付かれるかと思った。
吃驚して立ち止まり、キッと睨みつけるともう一匹の小型犬がすっ跳んできて、更に激しく吼えかかる。
そのうち若奥さんが出てきて、二匹を嗜める。

  まぁまぁ、ダメじゃない、二人とも。

  よく吼えますな。

  立ち止まると余計吼えるんですよ。

  ほぅ! 公道で立ち止まっっちゃぁいけないんですか。お宅じゃ犬より通行人を躾けるってわけですかぃ。

  ぐっ。

森生はバカ奥さんに、入歯も忘れ、猛然と噛み付いてやった。
溜飲は下がったけれど、また世間が狭くなったようだ。

もうこの道は歩けまい。

130409



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