林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

ご仏前で

2011-08-19 | 林住期

浮気な旦那を追い出し、二人の子を育て上げた肝っ玉母さんから電話があった。
親方が突然やってきて、「うちのかみさんが3月に死んじゃったよ」、と涙を流したそうである。
「可哀相だからお線香を上げに行こうよ」、との誘いだった。

親方とは村の建具工場で知り合い、既に10年余りの付き合いになる。
敬語丁寧語は一切使わず、一見乱暴だが分かり易く、意外に繊細な心の持ち主でもある。
工場の片隅に花壇を作り「花の命は短くて......」なんていうキザな看板を立てた親方だ。

息子さん二人と親方の男所帯になったのに、お宅は新しい仏壇を中心に、きれいに整理整頓されていた。
奥さんが家の周りに遺した花壇の手入れが忙しいそうだ。
「俺の百花宴にゃ手がまわらねぇよ」、と自分の花畑は小さくしてしまった。

以前訪ねたとき、奥さんは「主人は行儀が悪いから一緒に外出したくない」と言っていた。
親方への遺言は「女ともだちのひとりやふたり、いてもいいよ」だったそうだ。
長押には、見違えるほど立派な奥さんの遺影が、2枚も飾られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息子さんが作った肉じゃがはうまかったが、親方が準備していたうどんは団子に。
親方が明るく振舞っていたのは、森生がいたからかもしれない。

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