林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

大澤舎新井家

2007-11-01 | 高麗便り

  通用門

通勤電車から見える屋敷林の中の大きな瓦屋根が気になっていた。
3箇所もある門は固く閉されていて、板塀に囲まれた屋敷は覗くことすら出来なかった。

その屋敷が控えめだけれど公開されたのである。
名前は「大澤舎新井家」。
高麗郷の名主の家柄で400年前にこの地に居を構えたそうである。

三方は地形を生かした空濠状になっている。

正門を入ると視野からはみ出す大きな総二階の母屋に驚かされる。
家族用玄関とは別に客人用の式台がある。
デイの間、居間、奥の間は瀟洒な造りで欄間や書院窓の建具は繊細華麗。
長押の釘隠しや襖の取っ手は凝った造りである。

日常の玄関は以前は土間だったそうだが今風に改装されている。
但し天井に目をやるとまさしく名主風の堅牢な木組みであり柱も太い。
同じ屋根の下に全く雰囲気が異なる部屋があるのだ。

家は現役の住居だからあちこち改装してあるし、公開していない場所が多い。
茅葺屋根は戦後瓦屋根にし、数年前に銅板葺きになった。

式台で挨拶をしたら、ご当主がじきじきのお出迎え。
書画骨董、家屋の構造、一族の歴史などを、丁寧に説明して下さった。
季節によりしつらいを替えるそうだから、何度も訪れた方が良さそうである。

代々の主は教養豊かな人たちだった。
狩野探幽、与謝蕪村、谷文晁、円山応挙、英一蝶他...........。
どこかで名前だけは聞いたことがある、作家や名筆達の作品を蒐集した。

これらの書画骨董は室内にさりげなく、しかるべき位置に置いてある。
真贋の程は定かでないがそれぞれ上等上質な作品だと思う。
だから絶対に触らないこと。

一緒に行った端正さんは美術を本式に勉強した人で、名山さんは中部小京都の出身。
濃い会話になった。

庭園は三ヶ所もあり、野趣に富んでいながら手入れもいい。
周囲は深い森に囲まれているので、夏、2mの青大将がお出ましになるそうである。
森男は落葉掃きが趣味である。
寒い季節なら奉仕作業をしたいけれど、春夏はねぇ......。

瓦屋根時代の巨大な鬼瓦が庭先に置いてある。
まだ新しいが、ご当主はその価値を十分にご存知で、安心した。
このまま苔むしたら、庭の立派な飾りになる。

  旧道から右手奥に正門

場所は国道299号線下の狭い下り坂にある。
手前から裏門、通用門、正門と、不自然な順序に配置してある。
理由は、この狭い坂道が飯能から秩父へ行く街道だったからの由。

市に旧道を復旧してもらいたい。
滝不動、高麗峠に通じれば、国道299号線を避けたハイキングコースになる。
巾着田一辺倒の行政では到底思いつかないことだろうが。

大澤舎新井家は西武高麗駅から徒歩約7分だ。
巾着田に近いが川と森に隔てられ、彼岸花の喧騒もここは届かない。

素敵な場所だけれど、物見遊山気分で押しかけないで欲しい。
また、日本家屋なので大勢での訪問は無理。

森男たちは裏門から入り、勝手口前車寄せに車を停めてしまった。
屋敷の手前に数台分の駐車場所があるが、旧街道の入口が分かりにくい。
近くの東急ショッピングセンターに内緒で停めて、歩いて行った方が楽しめる。
その代わり、帰る時にどっさりお買物して下さい。

             大澤舎新井家見学は有料。予約が必要。
                      詳しくはHPをご覧下さい。→「大澤舎新井家」です。

  
雪の日の正門

▲上下の画像は新井家HPと栞から拝借しました。



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