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代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

松岡大臣のご冥福をお祈りします

2007年06月14日 | 時事問題
 長い間、まったく更新をサボって申し訳ございませんでした。
 私も、長かった「フリーター研究者」生活から脱し、ようやく今年の4月から大学の専任の教員の職を得ることができました(ただし任期付き)。

 最初の1年目なので、週6コマの授業を回すのがかなり大変。教科書を一から作るという感じで、年間の授業プランを作成せねばなりません。それで、ここ2ヶ月間、授業やゼミ運営準備のみに追われて毎日が過ぎ去っていきました。慣れるのに時間がかかりそうで、しばらくブログの更新は停滞しそうです。でも月に2~3回は何か書けるように努力したいと思います。
 
 ブログをサボっているあいだに、いろいろな事がありました。

 松岡利勝大臣のこと、非常に残念でした。謹んでご冥福をお祈りします。私は彼が自死を決断せざるを得なかった背景事情は何も分かりません。世間で騒がれているスキャンダルの真相も全く何も知りません。直接、松岡氏と会ったこともありません。しかし、死者にムチ打つようなマスコミ報道があまりにひどいと思うので、松岡氏のある側面を擁護する記事を書きます。

 私の知る松岡大臣といえば、日本が輸入する木材の中から違法に伐採されたものを取り除こうという、違法伐採対策問題に日本で一番熱心な政治家であったという点のみです。私の知り合いのNGO関係者たちは、松岡氏とともに違法伐採対策を進めておりました。
 私は、東南アジアの違法伐採対策問題に若干関与しております。違法伐採を防ぐために必要な措置を、現場レベルであれこれ考えてきました。

 松岡氏は、世界最大の熱帯材輸入国である日本が、欧州に比べて全く違法伐採対策で遅れをとっていることに深く心を痛め、日本が諸外国の森林破壊に貢献しているという批判を受けることがないよう、違法伐採対策を進めて、国産材を振興しようと、それこそ骨身を削って尽力されていました。

 違法伐採問題に関する関係省庁の取り組みが全く不十分だということで、松岡氏は官僚に依存せず、NGOに依頼して必要な政策に関する助言を求め、NGOの意見を最大限に採用しながら、ヨーロッパに負けない違法伐採対策を講じようと努力してきていました。
 松岡氏は、NGOと官僚を同列の次元で参加させて、違法伐採対策の戦略会議を行っておりました。「NGOの諸君がこんなに頑張って政策立案をしているのに、(税金でメシを食っている)お前らは一体何をやっているんだ」と官僚を怒鳴りつけることもあったそうです。

 官僚任せではなく、市民参画で政策を前に進めていた松岡氏。「守旧派」という彼のイメージとは全く違うでしょう。
 もちろん日本の林野行政は緑資源公団を見れば分かるように、とてつもなく固陋で、守旧で、仲良しクラブの馴れ合い体質を持っています。日本の森林を保全するどころか、森林破壊にしかならないアホな林道に税金を湯水のごとく注ぐという愚行を繰り返してきました。林野行政は、「土建国家の植民地」といえたかも知れません。松岡氏がその林野のボスであったという側面は確かにあったのでしょう。

 しかし松岡氏は、「林野一族」の仲良しクラブの馴れ合い体質を打開しようと努力していたことも事実でしょう。近年の彼が、NGOと交流を持ちながら新しい施策を模索していたということもその表れでしょう。自民党議員の中で、環境NGOをあれだけ信頼していた方は珍しいと思います。

 日本のマスコミが、松岡氏の残したポジティブな政策に全くスポットを当てることなく、ひたすら死者にムチ打つようなバッシングを繰り返していることに関して、私は本当に心を痛めます。
 松岡氏のご冥福を心からお祈りいたします。 
  


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17 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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中年管理職左派さま ()
2007-08-19 12:11:03
 大変にご丁寧なコメントを下さり、まことにありがとうございました。
 私は天木氏とも松岡氏とも直接に面識はありませんので、直接彼らと面識のある中年管理職左派さまからすると「甘い」判断をしているかも知れません。不明はお詫び申し上げます。
 ただ私は、元来がアマノジャクな体質なので、マスコミがどちらか一方を向いてバッシングしているいと、バランスを取る意味でも逆のことを主張したくなってしまいます。松岡氏の業績の功罪を多面的に見ようとしないバッシングに異常なものを感じたので、あえて書いてしまいました。
 
>国有林の環境省への移行と地域管理、林野庁の解体
>が必要と考えます。 

 これに関しては基本的に賛成です。解体というか、環境省に吸収させるべきだと思います。
 国交省の河川局と林野庁は、河川の流域管理という観点から統合し、それぞれ国交省と農水省から切り離して環境省に組み込むべきだと思います。もっとも国は調整機能の役割のみで、基本的には流域ごとの地域管理をベースにすべきだと思います。
 河川局と林野庁は、これ以上抵抗すると最後の瓦解がより惨めになり、後世の歴史家の笑いものになるだけだと思います。彼らは、早いうちに白旗をあげて降参すべきでしょう。そちらの方が彼らの身のためではないかと思います。
 
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松岡利勝議員について (中年管理職左派)
2007-08-17 16:29:04
数日前に関さんのブログを発見。考え方も似ており、共鳴できます。ただ、今回の参院選に出馬した元外務官僚の天木氏、故松岡議員のことについては、私は仕事を通して知っているだけに、過大評価で「甘い」といえます。まあ、天木氏については、外務国家公務員としては最低のモラルの人物だったということぐらいにしておきますが、松岡氏については関さんのご専門にも関わり、私の仕事にも関わるので、功罪はハッキリしておいた方がいいですね。

関さんが語るように林野庁(キャリア林業技官)と関係団体、業界は特殊な利益集団をかたち作ってきました。あるときは国内林業者の保護者、あるときは国有林野(特別会計)を基礎に環境保護論者、あるときは建築業界・パルプ業界と一緒に輸入材の安定供給者、それに関係して東南アジアでの植林ODAの推進者とうとうです。その場その場で、見せる顔が違い、時流に乗りながら新しい法律を作り、予算要求項目を増やしてきました。しかし、根底にあるのは組織温存とそのための大規模業界保護です。行政の力が業界よりも強いのは、帝室林野以来の国有林という財政基盤(大赤字ですが・・)と輸入権限を仕切っているからです(食肉と同じ)。このまとめ役の政治担当者が松岡氏でした。

バックには多くの山地主がいましたが、時代と共に力はなくなり、彼の力もなくなったといえます。山地主が、今は階層分解して一体ではあり得ませんから、中小の山地主のために彼が政治的に味方して動くことは、あると思います。しかし、ITTOの成立過程を見ても、NGO「支援」を見ても、それは林野庁の後輩を恫喝する材料として使うだけで、基本においては自分の衰退する権限確保に使ってきたのが実情と思います。

松岡氏が私の勤務する国に2回ほど来て、仕事を一緒にしましたが、尊敬できる話は聞きませんでした。むしろ、自民党の新自由主義政策の中で、WTOやFTAつぶしの露骨な役割が政治的に浮き上がっているので、あせっている印象を受けました。

いずれにしろ、松岡氏の問題というより、国有林を林野庁に任せておいて良いのか、中小林業者をマーケットと環境との両面から、どうするのかということだと思います。私は緑公団(実際には、この団体の中心は
農業土木集団です)の解体と共に、国有林の環境省への移行と地域管理、林野庁の解体が必要と考えます。
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山澤さま ()
2007-07-06 22:21:01
 ご無沙汰しております。コメントありがとうございました。お互いに忙しくて、なかなかブログを更新できませんね。大変ですががんばりましょう。
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ブログ再開うれしい限りです (山澤)
2007-07-01 21:59:42
就職おめでとうございます。関さんのような方が増えていけば象牙の塔も変わるでしょうね。学問に限らず、万人に開かれていなければ権威は堕落するものですから、どのような専門家もある専門家意識に胡坐をかくことなく、本業とは別にインターネットを通じて開かれた世論形成に励むべきだと自分に言い聞かせながらブログを続ける努力をしております。(といいつつ季節労働なもので、年度末はいつも休眠してしまいますが・・)

関さんのような方がブログを続けられるとオレごときが泣き言を言ってはいかん、という気になりますので、今後とも、無理なさらずにしかし、長ーく続けていただきたいと思っています。

今回のような、松岡さんの多面性を明らかにすることはブログならではの世論形成の可能性だと思います。非常に参考になりました。トラックバックした「マスコミを掴んだ政治家、世論を掴み損ねたマスコミ」ともつながる論点だと思います。これからもよろしくお願いします。
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aioさま、msxさま ()
2007-06-28 14:39:59
 コメントありがとうございました。
 
>対中国輸出で好景気?の彼の出身地の九州では伐採
>後の放棄が多いとも聞きますが?

 頭の痛い問題ですね。

>公団解体でどうなるんでしょうか

 さてどうなることでしょう? 関係者でない私に質問されても分かりません。
 公団関係者には一から出直してもらって、よい事業は継承していってほしいものです。
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Unknown (msx)
2007-06-24 22:23:23
ああ、そういう面もあったのか

とも、思いますが、対中国輸出で好景気?の彼の出身地の九州では伐採後の放棄が多いとも聞きますが?

あと、緑資源公団はサイトへ行ってみればわかると思いますが、海外での土壌保全や植林への協力もやっていましたが、公団解体でどうなるんでしょうか

>4月から大学の専任の教員の職を得ることができました(ただし任期付き)。

おめでとうございます。学生には海外を歩いた経験を伝えてください。
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Unknown (aio)
2007-06-23 20:07:00
松岡氏のご冥福をお祈りいたします。
そして、せめて故人の努力が形になる未来を
信じて願いたいと思います。
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みーぽん様 ()
2007-06-23 12:48:54
 この間、サボっていて申し訳ございませんでした。みーぽん様のブログをひさしぶりに覗いてみて、読書量の多さに圧倒されました。
 スティグリッツの Making Globalization Workは代替案提示型の本で、このブログと重なる部分もあり、異なる部分もありで、私もいろいろと批評したいのですが時間がなくてサボっています・・・。
 
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カラテカ様 ()
2007-06-23 12:44:48
 投票で意思表示をいたしましょう。
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楊過さま ()
2007-06-23 12:43:20
>税金を払う方を明らかにさせて、使う方はいい加減
>というのは・・・我々はもっと怒らなきゃいけない
>のでは・・・

 おおせのとおりと存じます。税金を払う側と使う側の非対称性の問題は、日本のシステムの最大の欠陥といっても過言でないかも知れません。政府予算に納税者の意見を反映させるシステムを構築せねばならないと思います。
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違法伐採 (みーぽん)
2007-06-21 15:20:26
お久しぶりです。学生さん相手は大変でもあり、楽しくもあのではないでしょうか?

松岡大臣の知られざる一面をお知らせくださってありがとうございます。違法伐採に対する問題意識(もちろん国産材の振興が念頭にあってでしょうけど)NGOに対する信頼は、ほんとうに評価に値しますね。

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どなたか教えて下さい! (カラテカ)
2007-06-20 22:44:25
お久し振りです。

若輩ですが、年金問題は腹が立ちますね!

60年代は熱い学生運動もあったのですよね?この国にも?!

なのに、このシレ~ッ、と、した我々国民はなんなんでしょうか?!
骨抜き教育でもされたのですか?!
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とっても不思議に思う事・・・ (楊過)
2007-06-15 18:02:02
はじめまして・・リチャード・クーさんの事を具具ってここに来ました。
さて、政治資金規正法ですが又もや強行採決でした。
事務所経費を明らかにできない理由が自民党さん公明党さんにはあるのでしょうか?私は小さな会社をやってますが、決算期には計理士さんとにらめっこです。税金を払う方を明らかにさせて、使う方はいい加減というのは・・・我々はもっと怒らなきゃいけないのでは・・・年金もそうですね・・・ではまた
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神田川様 ()
2007-06-15 14:38:23
 本当に、安倍首相は早く辞任させてあげるべきでしたね。今度、神田川でフィールドワークしましょう。
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厘斗さま ()
2007-06-15 14:36:16
 もちろん「巨大な闇」に関しては追求せねばならないと思います。巨大な「構造」が、松岡氏ら諸個人を飲み込んでしまったわけであって、彼も土建国家の闇の犠牲者だったと思います。
 個人攻撃でガス抜きしてもまったく問題の解決にはならない。あくまで構造的問題を代替案の提示によって解決していかねばならないというのが私の立場です。松岡氏個人のパーソナリティーは、土建国家の利権構造に決してどっぷりつかっていたわけではなく、とくに近年はそこからの脱却も指向していた、個人の業績を公平にちゃんと評価してあげよう、というのが私が言いたかったことです。

 巨大な闇に関しては、道路の闇、ダムの闇、農政の闇、林野の闇などいろいろとあります。今回、検察が林野の闇に踏み込んだのは、他に比べて比較的規模が小さい「闇」であり、比較的メスを入れやすかったという側面もあるかも知れません。
 
 また談合批判に関しても注意が必要だと思います。談合がなくなれば、結局、中小の建設会社は片端からつぶれ、最終的に競争のない独占価格になって、納税者は損をするという結末になる可能性が高いからです。
 談合ではない別の公正なワークシェアリングのあり方を考えていかねばならないと思います。
 
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先生、そんなことを言わず早く教授に…笑 (窓の下には神田川)
2007-06-15 01:46:21
僕も松岡農相の自殺は不測の事態だったと思います。僕は思うには何とか還元水や緑資源機構の談合、それに対する野党の猛追及で追いやられてしまったのかなぁとも考えたりしました。でも闇に潜む真実は....どうなんですかね?死まで追いやられるとはかわいそうです。
あと、安倍さんが松岡農相を辞任させていればこのような惨事になっていなかったのかなとも思ったりしました。

そして、先生の書いた末尾の文、僕も同感です。本当に最近のマスコミといったら、過剰な粗探しが激しいと思うのです。これじゃプライバシーの欠片もない、ましては人をそんなに人を罵倒した文章をよくも書けるなと腹立たしい気持ちになります。非常に迷惑極まりない!
いくらマスコミ業界も利益一辺倒とは言えども....と続く言葉が見つかりません。悲しいものがありますね。




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Unknown (厘斗)
2007-06-15 00:45:20
農林水産業に多少なりとも関わる者として、お気持ちはよく解ります。しかし、松岡氏を含め、3人もの人間が次々と自殺したこと、にも関わらず、そのような連続自殺事件として報道されることが少ないことが、今回の件の裏にある巨大な闇を示唆していると思います。ただしTVは見ていないので、もしTVでそのような報道が多くあるようでしたら、不明を詫びるしかありません。しかし、いずれにせよ、それは、大臣ですら使い捨てるような、なにものかです。 バッシングに与する気はありませんが、松岡氏が結局はそのなにものかに負けたことこそを記憶すべきではないでしょうか。
松岡氏の死を本当に悼むのなら、なぜ彼が、死ななければならなかったのかを、追及しなければ嘘でしょう。
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