代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

チベット問題:造反有理

2008年03月24日 | 政治経済(国際)
 すいません。仕事に追われている間に、またまた更新を怠っておりました。
 チベット問題に関しては、中国政府にダライ・ラマとの直接交渉を行って欲しいと切望します。

 中国政府は今こそ毛沢東の金言を厳粛な気持ちで思い出すべきでしょう。「造反有理」と。
 中国政府からしてみれば、「あれだけ他の地方に比べてチベットを優遇して、中央からの補助金・公共事業予算を潤沢に流しまくっているのに恩知らずだ」などと思うのかもしれません。しかし、その考えこそ傲慢というものです。
 精神世界の住人であるチベット仏教の僧侶たちからしてみれば、金や公共事業などのバラマキは、かえって漢族による経済侵略・文化侵略と映るでしょう。「チベットにまで腐敗した拝金主義思想を持ち込むな」と思っているかも知れません。もう一度、なぜ僧侶たちがこれだけ大規模な造反行動に出たのか、その理由を厳粛に調査すべきです。亡命政府に遠隔コントロールされたくらいで、あれだけ命がけの行動に出るわけがないでしょう。中国政府が一刻も早く、ダライ・ラマ14世との直接対話に入ることを切に望む次第です。

 3月20日にはいったん、温家宝首相とイギリスのブラウン首相が電話会談をした際には、温家宝が「チベットの完全な独立は求めず、暴力を否定するのであれば、対話に入る用意がある」と述べたと報道されました。「よし、いいぞ」と思っていたのに、その直後には、中国外交部はいかなる対話にも応じないと態度を硬化させてしまいました。
 おそらく中南海の奥深くでは、対話派と強硬派の激しい綱引きが展開されているのでしょう。温家宝が対話を望んでいるのに、強硬派に押しつぶされたのかもしれません。温家宝がブラウン首相に柔軟な姿勢を示したのを非難され、彼が自己保身から対話路線を引っ込め、再び強硬発言に戻ったとするならば、これはかなりヤバイ。胡錦濤と温家宝は、ダライ・ラマ14世の要求する「高度な自治」を認める方向で、ダライ・ラマとの直接対話を行い具体的な折衝を行うべきでしょう。もし軍の突き上げで、彼らがその選択をできないのだとしたら、相当にヤバイ状況だと思います。

 そんな中で若干明るいニュースはといえば、中国の作家の劉暁波氏ら約30人が、チベット騒乱について「中国政府は暴力的な鎮圧を即停止すべきだ」と対話による事態の解決を中国政府に求める声明を発表したというニュースでした。
 
 私の感触で言っても、一般の中国人のあいだでも、ダライ・ラマの主張するチベットの高度の自治という要求を支持している人は結構多いです。台湾独立を支持している中国人は私の知り合いには一人もいないですが、チベットに関しては多くの中国人がチベット仏教に畏敬と尊敬の感情を抱いていて、「独立を認めてもいい」という人も少なくありません。
 
 中国の大学で日本語を教えている友人(日本人)に聞いたら、「情報があれだけ統制されているにも関わらず、報道の裏を読んで、今回の鎮圧をひどいと考えている学生は多い。教え子の中でも印象としては3割~4割はダライ・ラマの主張する高度の自治を認めるべきだ、と考えているのではないだろうか」と言っていました。

 いま中国は静かな仏教ブームと言ってもよい状況です。私が通っている貴州省でも、文革中に破壊された寺院の復興ブームで、あちこちで再建しています。資本主義的拝金主義が中国社会に蔓延する中で、それへの反発からくるアンチテーゼとしても仏教は注目されるようです。そうした中では、チベット文化を尊敬している中国人はますます増えているようです。
 
 一般の中国人は、台湾に関しては「明らかに漢民族の文化圏で自分たちのテリトリーだ」と思うみたいですが、チベットに関しては「明らかに自分たちとは異質な別文化圏で、彼らの自治を尊重せねばならない」と考える人は多いみたいです
 中国政府は、これ以上ダライ・ラマとの対話を拒絶する姿勢が、チベットのみならず漢民族社会内部にも動揺をもたらすだろうと思い知るべきでしょう。
 
 もっとも台湾に関しても、中国国内で暮らしていると入ってくる情報も少ないのでアレですが、日本に来て台湾人留学生と交流した中国人学生は相当に考え方も変わります。私の知っている留学生の例だと、「同じ中国人なんだから仲良くしましょ」と台湾人留学生に言ったところ、「私は台湾人」と反発され、それでショックを受けて台湾の歴史に興味をもって勉強するようになったそうです。それで、台湾が大陸とは違う独自のアイデンティティーを持つに至った背景を正しく理解するようになっていました。
 
 とにかく胡錦濤首席と温家宝首相には、ダライ・ラマ14世との直接対話に入ることを切に希求します。
 

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
安心しました。 (カラテカ)
2008-03-28 23:38:59
関様がニュートラルな考えをお持ちで安心しました。
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チベット及び聖火リレー (key-bee)
2008-05-03 23:01:12
中国という国の異常性が世界的に知れ渡った事件だと思います。
チベットへの武力侵攻及び支配、中国国内での情報統制……天安門事件の頃から何も進歩していない。

とはいえ、聖火リレーで赤い旗を振っていた人たちは極一部の過激な活動家と思いたいです。

中国共産党の一党独裁はアジアにとって脅威でしか無い。中国の民主化に向けて全世界が圧力をかけなくてはいけないと切に思います。

ダライ・ラマ14世との対話で平和的な解決ができる事を祈るしか無いですね……。
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key-beeさま ()
2008-05-09 11:09:48
>中国という国の異常性が世界的に知れ渡った事件だと思います。

 少数民族に対する苛烈な弾圧というのは、世界中の国がやっているので特に中国ばかりが異常だとは思えません。中国を批判するイギリスだって北アイルランドの独立運動にどれだけ弾圧を加えたか。アメリカに至っては、先住民族をほぼ殺し尽くしてしまいましたし。

 また少数民族の弾圧に関しては、独裁政権と民主政権でとくに差異があるとも思えません。多数派民族の民主主義は少数派を苛烈に弾圧することもあります。フィリピンなんか民主主義でも、どれだけ少数派イスラム教徒の独立運動を弾圧してきたことか。
 その政権が賢明であるか否かだと思います。中国政府が賢明であることに期待します。
 
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Unknown (厘斗)
2008-05-09 12:31:40
少数民族については日本も決してほめられたものではありません。しかし、少しだけ明るいニュースがありました。ほとんど報じられていない現状に愕然としつつも。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008050502008975.html

別のエントリで関さんも触れられていましたが、アメリカや中国への対応なども含めて、福田首相は最近の首相の中ではやはりましなほうなのでしょうね。大連立の話に小沢代表が乗ろうとしたのだって、国連中心主義に基づく自衛隊の運用を確約したのが大きかったんでしょうし。まぁ、これは霧散してしまいましたが。
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厘斗さま ()
2008-05-12 17:52:33
 興味深いニュースありがとうございました。私も全く知りませんでした。確かにチベットの問題をあれだけ叫ぶ方々に対しては、「もう少し自分の足下も見つめて」と言いたくなってきます。
 
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一応 (key-bee)
2008-05-13 22:01:03
虐殺が異常じゃなく、海外のマスコミをシャットアウトした情報統制の方を異常と感じました。
報道の自由がまるで無いところが。
インターネットの検索にもフィルターを掛けてますし。

それが悪い方に作用したのが、今回の四川省の地震です。
メンツにこだわらずに、迅速に海外の救助隊を受け入れて欲しかったです。
日本からのレスキュー隊員&災害救助犬の支援も断られました。
阪神大震災の時の村山政権の失策を他山の石として欲しかったところです。
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