代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

水道再公営化を切望するイングランド市民

2018年12月29日 | 政治経済(国際)
 世界で235の水道事業がいちど民営化されたのちに再公営化されているという事実が大きく報道されてきた。しかし、一部のマスコミで流されていた報道で、「再公営化された事例は235あるといっても、全体の10%くらいだ。失敗したのはわずかで、成功している事例もまた多いということだ。パリでは再公営化されたが、イングランドは民営のままだ。イングランドは成功しているのではないか・・・・」などというものがあった。
 
 当たり前のことであるが、民営化されていない水道事業が「成功」と言えるかといえば、必ずしもそうではない。みんなが失敗と思っていても、簡単に元には戻らないからだ。
 参考までに、イギリスの『ガーディアン』の今年の1月9日の記事を以下にリンクしておく。

The Guardian
https://www.theguardian.com/commentisfree/2018/jan/09/nationalise-rail-gas-water-privately-owned


 最近のイギリスの世論調査では水道は公営であるべきと答える人がじつに83%にのぼるという。サッチャリズムの新自由主義の嵐が吹き荒れてから四半世紀が経過し、いまやイギリス国民は新自由主義に辟易している様子が浮かび上がってくる。それがEU離脱を望んだ世論の背後にある。
 大半のイングランド市民は、水道民営化を失敗と捉えており、再公営化を望んでいる。イギリスは、再公営化されていないから成功事例などという報道は大間違いである。
 
 記事中で、ロンドンの水道を経営しているテムズウォーター社は、株主に過度な配当を行い、利益を海外に逃がし、帳簿上の負債を膨らまして、納税義務を怠り、水道管の更新を怠ってきて言語道断と非難されている。日本の公営水道だったら10年でできる水道管の更新を、テムズウォーターにやらせると357年かかる、と断罪されてもいる。

Thames Water, under private equity ownership, has been the most egregious example, building up sky-high debts as it distributed excessive dividends to its private-equity owners via a holding company in Luxembourg, a move designed to minimise UK tax obligations. As the Cuttill report highlighted, at current rates of investment it will take Thames 357 years to renew the London’s water mains: it takes 10 years in Japan.

 イギリスの人々の目から見ると、日本の水道は公営でなおかつ効率的にマネジメントされている理想的な事例に映るらしい。
 ところが日本にくると、イングランドは民営化の成功事例であり、日本も見習うべきという報道になるのだ。隣の家の芝生は青く見えるというが、この場合はイギリスの報道が正しくて、日本の報道が間違っている。



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