代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

退耕還林の様子

2006年03月22日 | 中国山村報告
 中国政府が1999年から始めた「退耕還林」という植林事業の様子です。土壌が流出して岩盤が完全に露出するという石漠化した山の斜面に4年前に植樹した木が根付いてきています。もうほとんど土がない状態ですから、植林するのは本当に大変です。さらに驚くべきことは、これだけ土のない斜面で4年前まではトウモロコシを作付けしていたという事実です。1958年の大躍進以前は土層の厚さは50cmほどあったそうですが、その後、土はほとんど流れてこのような姿になったわけです。

 土壌が雨水をまった貯留しないので、当然のことながら大雨が降るとすぐに洪水になります。1998年の長江大洪水災害の主原因は森林破壊と石漠化にあるというのが中国政府の結論でした。朱鎔基首相(当時)は決意を固め、洪水の翌99年から石漠化地域における農耕を停止し、それを森林に戻すという「退耕還林」の実施に踏みきったのでした。中国政府は退耕還林政策を通して、2010年までに3200万ヘクタールを植林しようとしています。ちなみに3200万ヘクタールというのは日本の国土の総面積の85%に上る面積です。「退耕還林」が人類史上最大の植林事業と言われる所以です。まさに長江上流に広大な「緑のダム」を整備して、洪水を防止しようというわけです。

 こうした石漠化地域で木が成長し、落葉が腐食し、土壌を形成し・・・・・山が大躍進以前の緑を回復するまでにはまだまだ長い年月が必要です。しかし100年かかっても元に戻そうというのが中国政府の決意なのです。

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4 コメント

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想像不可 (oozora通信)
2006-03-23 19:41:26
万里の長城を築き上げた歴史を持つ大陸人は私たちの想像の外にある、と言う感じがしますねえ!。

国家百年の大計といいますが、近視眼の私たちには見習うも何も想像さえつきませんね。
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oozora通信様 ()
2006-03-23 23:07:39
 コメントありがとうございました。けっこう写真がご好評みたいですので、またブログ上で写真展のようなものをやってみようと思います。今回は長江上流でしたので、次回は「黄河上流編」で行きたいと思います。
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壮大ですね (Chic Stone)
2006-03-27 22:03:12
社会主義が機能すればそれだけ壮大な

プロジェクトも可能になる、といいのですが…



特に稲作を中心とした農耕は、背後に相当な規模

森に覆われた山地を水、栄養塩類の供給に必要と

することを、指導者が理解してくれたのなら

いいのですが。

たとえ栄養塩類は化学肥料を使うにしても、

水の確保だけでも背後の森林は必要でしょう。
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Chic Stone様 ()
2006-03-28 16:49:48
 社会主義的トップダウンというのは弊害も多いのですが、とりあえず「いざ植林」となると、中国は他の途上国に比べてはるかに良いパフォーマンスで、実際に植林が進んでいることも事実です。何せ、この5年間で1500万ヘクタール(日本の総面積の40%)も森林が増えたというのですから。

 

 この写真の村の場合、森林破壊の結果として、水田面積の減少は著しいです。以前は水田だったところでもトウモロコシ畑に転換せざるを得なくなりました。水田面積は、40年前と比べれば3分の1くらいにまで縮小していると思います。



 おおせの通り、アジアの灌漑稲作農業の持続性の鍵は、水田面積の数倍の面積の良好な森林が上流部に存在することだと思います。アジアの稲作地帯の森林被覆率が、ヨーロッパや米大陸に比べて高くなければいけない理由はそこにありますね。



 アメリカみたいに、地下水くみ上げて稲作やるなんてのは持続不可能もいいとこで、コメ作りの邪道中の邪道ですね。「コメ作りのグローバル・スタンダード」で禁止しちゃうのが良策?

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