東日本大震災で津波により全壊や水没など甚大な被害を受け使用不能となった老人福祉施設(入所型)が、岩手、宮城両県で52施設に上ることが30日、両県への取材で分かった。52施設では入所者のうち438人が死亡・行方不明。
いずれも沿岸部にあった施設で、今後、復興計画の中で老人福祉施設を高台に造るなど立地条件の検討を迫られそうだ。
福島第1原発事故も重なった福島県は詳細な被害状況を調査中だが、南相馬市の2施設が倒壊、死者も出ている。
宮城県の調べでは、全壊など使用不能の施設数は気仙沼市、石巻市などの38施設。これらの施設の入所者の死亡・行方不明は296人だった。3月11日時点の入所者数は不明だが、2月時点では1171人が入所しており、ほぼ4分の1の人が亡くなったり、行方不明になったとみられる。
岩手県では大船渡市や山田町などで14施設が全壊などの被害を受け、死亡・行方不明は142人。福島県の南相馬市で倒壊した2施設では少なくとも4人の入所者が死亡。同県の担当者は「死者や不明者はさらに多い可能性が高い」としている。
宮城県気仙沼市の介護老人保健施設「リバーサイド春圃」は津波で水没。入所者55人と通所者2人が死亡した。
助かった入所者は避難所やほかの施設でケアを受けているが、避難所では十分な介護が受けられず、別の施設に移った場合でも定員オーバーになるなど介護条件は次第に悪くなっているという。
介護問題に詳しく、最近、宮城県沿岸部を訪問した淑徳大の結城康博准教授は「施設は高台に再建するのがベストだろうが、沿岸部には十分な土地もない。堤防の強化や施設の多層化なども併せて検討すべきだろう」と指摘している。