これから超高齢化社会に突入する日本。高齢者向けのサービスの充実が求められるが、“包括ケア”をしてくれる有料老人ホームは入居する際に高額な一時金が必要。一方で費用が安い特別養護老人ホームはなかなか入れないのが現状。そこで最近注目を浴びているのが「サービス付き高齢者向け住宅」(以下・サ付き住宅)。
昨年10月より、高齢者住まい法の改正により高齢者住宅が一本化され、現在、登録数が6万戸。毎月5000~6000棟増えている。安くて自由に暮らせ、安否確認などのサービスも付いた、サ付き住宅と他の老人ホームの違いとは?
「誰かを煩わせることなく、自立した生活が送れることがメリットのひとつですね」といち早く入居を決めた利用者は話す。またサービス付き高齢者向け住宅協会事務局長の奥村孝行さんは、
「サ付き住宅は、国が定めた『高齢者住まい法』により、居住者の同意なく、事業者からは一方的に契約を切れないことになっています。そのため、安心して住み続けることができるのです」
入居時に必要なのが、敷金、家賃、サービスの対価のみで、初期費用が安いのも特徴だ。
しかし、一方でデメリットもあるというのは、『後悔しない老人ホームの選び方がわかる本』(講談社)の著者で、介護コンサルタントの中村寿美子さん。
「ケアといっても介護をしてくれるわけでもなく、ほとんどの住宅は医師や看護師など医療関係者はいません。また介護計画に入っていなければ、病気になったときは自分で病院を探さねばならず、契約に入っていなければ通院も自分で行くことになります」
先にも述べたように安否確認もあくまで日中のこと。夜間に職員が常駐しているところは少なく、その場合、緊急呼び出しボタンなどで外部の警備会社に連絡する。
「住宅によって食事やサービス内容にばらつきがあるので、自分にとって何が必要かを見極めて選ぶことが必要でしょう」(中村さん)
サービス付きとひとくちにいってもその内容はさまざま。
「24時間緊急対応があるとはいっても、職員が常駐しているところは少数。夜間は外部の警備会社と契約しているだけのところも多くあります。ひとりで動けなくなった場合を考えて検討する必要があります」(中村さん)
1日3回の食事付きでも、利用できるのは週6日のみというところもある。費用のわりには食事が簡素で満足がいかないというケースもあるようだ。
「サ付き住宅は有料老人ホームと違って体験入居ができませんが、どんな場所にあって、近くに病院やスーパーはあるのかなど、自分のニーズに合うかを確かめることが大切です」(中村さん)
※まとめ:サービス付き高齢者向け住宅のメリット・デメリット
【メリット】
・賃貸契約なので入りやすく、出やすい
・『高齢者住まい法』により契約を切られることはなく、住まいの移動がない
・入居時の費用が安い
・バリアフリー構造で安心
・安否確認のほか生活相談などのサービスが受けられる
【デメリット】
・介護が重度になったとき、住み続けられない場合も
・夜間に職員が常駐していない住宅が多い
・医療機関との連携が少ない
・介護や生活援助サービスはオプション。通院も自分で行うこと
・看護師などの医療系専門職員の常駐は少ない
・住宅ごとに食事などサービスのばらつきが大きい